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一般記事
 電子学園新聞は、最高学部の学生が記事を書き編集の責任を持つ電子媒体で、学園内外に起きる身近なニュースを掲載しています。一般記事のほかに、論文を扱う「視点」欄と「特集」欄とがあります。ときに、教職員や男子部・女子部の生徒が取材や執筆にあたることもあります。
2011年 2月8日

最高学部2年 高山 大樹

霜柱がついたシモバシラグサ

 毎年、自由学園に冬の訪れを告げるものに、シモバシラグサ(シソ科)という植物がある。別名「雪寄せ草」とも呼ばれ、秋には白い花を咲かせる。が、シモバシラグサは冬にも「氷の花」を咲かせるのだ。

 冬の朝方、気温が低下した時に一見枯れたように見える枯れた茎(花茎)の根元から、吸い上げられた水分が氷の結晶となって裂け出る。今年、最高学部自然誌・環境グループは12月26日に135本にこの現象を確認した。昨年は最高で高さが48㎝であったのに対し、今年は地上から77cmにもなる、とても見事な氷の結晶ができた。

シモバシラグサ

 これ程までに見事な氷の結晶ができたのは、2010年12月3日の朝方に1時間約80㎜の大雨が降ったこと、またこの時期としては学園内を流れる立野川の流量が例年よりも多かった。これらのことから、地中に含まれる水分が例年よりも多かったのが一因ではないかと考えられている。

 1月1日に観察したところ、氷の結晶の高さは約50㎝となり、1月18日には約10㎝と、徐々に結晶のでき方にも変化が見られた。この氷の結晶とは霜柱である。つまり、この植物「シモバシラグサ」という名は「霜柱」が根元にできることに由来している。

 かつて自由学園では、女子部13回生自然科学グループが卒業勉強として南沢の霜柱を取り上げ、研究した。現在、学園に生息しているシモバシラは実験の一環で植えられたものである。

シモバシラグサ

 霜柱に関する卒業勉強は昭和9年12月開始された。女子部が目白から南沢に移転してきた当時は「大芝生一面を覆うきらめく氷柱の群れ」と評されるほど見事な霜柱が見られ、移転当時は気温も環境も現在の南沢とはだいぶ異なっていた。「校舎が新たに郊外南沢に移った冬、新しい広い芝生の一面に、驚くほど見事な霜柱が立ちました。・・・(中略)冷たい黒い土なのに毎朝この美しさ、霜柱はどうして生えるのだろう?と皆不思議に思いました。私どもはこの単純な疑問から、この研究を始めたのでございます」と、「復刻版 霜柱の研究・布の保温の研究」に記されている。

 このグループは霜柱と学園の環境を詳しく観察を続け、地中の水分の多少は霜柱にどう影響するかなどの発生条件について深く研究した。後にこの研究は、満州北部や北海道での家屋、線路の凍上被害―土壌中の水分が凍結、膨張し地表が持ち上がる―の研究にも一部応用された。

 霜柱は日本独特の現象であり、まだ当時は世界的には研究されていなかった。「ところがその後野思いがけぬところから、画期的といってよいくらいの霜柱の大研究が現れてきた。それは自由学園の自然科学グループの霜柱の研究である。その研究はいろいろな意味で大変面白いものであって、そしてまたなかなか立派な研究であった。第一研究者が皆若いお嬢さんであって・・(中略)いわば素人が霜柱という自然現象を純粋な興味から始めた研究なのである」と中谷宇吉郎(凍上や着氷防止の研究で低温科学に大きな業績を残す)は当時の女子部のこの研究への取り組みを著書「續冬の華」に書いている。

 「この研究の推進力となったのは、自然現象に対する純粋な興味と、直観的な推理とであったのがよく分かるのでる。そしてそういうものこそ、本当の研究には大切なのである」とも語っている。さらに自由学園の取り組みは、霜柱の研究を本筋の軌道に乗せた重要なものであったと評価している。

 現在は最高学部自然誌・環境グループがシモバシラグサを保全し、観察している。先輩が霜柱を研究し、シモバシラグサも研究してみよう興味をもって取り組んだ結果、氷の花が毎年のように見られるようになった。この現象は植物と、土壌水分、気温、地温などさまざまな要因が関係している。毎年のデータをあわせて、この現象がみられるには、どのような条件が必要なのかを解き明かすため自然に対する純粋な興味と好奇心を持って活動が続けられている。

 羽仁吉一先生はおっしゃった。「自由学園は勉強する態度を学ぶところだ」と。それは問題を発見し、解決へのプロセスを主体的に、また創造的に探究し取り組む態度である。自由学園には生徒が研究や勉学主体となって取り組める環境がある。これからも生徒、学生がこの教育理念を本当の意味で理解し、体現し続けられるとよい。




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