液体窒素で冷やされる金属の断末魔の悲鳴?
  update 2002/01/31  男子部

図1
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図2
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図3
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図4
図4

吉良 公宏 (教諭)
鈴木 康平 (教諭)
矢野 賢太郎 (高等科2年生)

 昨年の今ごろ偶然の機会から、室温の金属塊を液体窒素に浸して、待つこと数分、もう冷え切って液体窒素の沸騰もおさまるかなというころ、突然液体窒素が突沸状態になり、数秒泡だってからシーンと静かになる現象を発見した。まるで金属が冷え切るのをいやがって、抵抗し、断末魔の悲鳴を上げているようである。これまで試した金属は、銅、アルミニューム、鉛、金、銀、分銅(合金?)、真鍮などであるが、どれでもこの現象がおきる。この現象を解明する一歩として、銅球および銅立方体の中心部の温度変化を記録し、ペンレコーダーの描くグラフに予想したとおりの奇妙な折れ曲がりを記録できたので速報する。

はじめに
 金属の断末魔の悲鳴を最初に発見したのは、高温超伝導の資料を保冷するために作った、銅の厚い円盤(直径60mm、厚さ15mm)を液体窒素で冷却していたときである。何度やっても確実におきる現象であった。ただし冷え切った金属を室温まで戻さず、ある程度冷えた状態(霜もついている)から、液体窒素に浸したときはこの現象は起こらない。
 また、ある程度の塊になっていることも必要で、薄い板状のものではこの現象は起こらない。表面積と質量の関係が問題になってくるのであろう。金属以外では、ゴム、アクリルなどを冷やしてみたが何も起こらなかった。
 金属の中では、熱伝導のよいものほど最後の悲鳴が激しいようで、特に銀塊100グラムでやったときは、この現象が顕著で、一鳴きした後はみごとに静かな液体窒素の液面になる。
 なにか液体窒素温度のちょっと上のあたりで、金属の熱伝導率が突然大きくなり、中心部に取り残された熱がいっきょに噴出してくるかのようである。超熱伝導という現象が電気の超伝導のように存在するのだろうか。それも液体窒素のあたりで。
 100℃の水の中に2〜300℃に熱した金属を浸したら、金属が冷えるまで水は沸騰しつつけるが、冷える直前に液体窒素に浸したときと同じような、沸き立ちが起こるであろうか。これはまだやっていない。

実験方法
 130グラムの銅球と同質量の銅の立方体を用意した。これらに直径3mmの穴を中心部まであけ、熱電対を差し込めるようにした。
 熱電対はありあわせの銅―コンスタンと思われるものを使用。金属パイプ封入型で直径1.5mmほど。冷接点は用いず、ペンレコーダーの入力端子に直接接続した。
 熱電対を試料の穴に差し込んだ後、銅粉と細い銅線を小さくきったものをまぜて油で練り、熱電対と穴の隙間につめこんだ。さらに穴の上部はありあわせの万能接着剤で蓋をし、液体窒素が穴の中に入って、熱電対の先端に接触しないようにした。
 この状態で、発泡スチロール容器の中に、液体窒素をいれ、試料をひたして温度変化を観測した。

実験結果
1)銅球(130グラム)
ペンレコーダーは2cm/min. 10mVフルスケールとした。 室温から銅中心部の温度はどんどん下がり始め、2分45秒までは次第に温度降下速度を緩めるカーブを描いていた。 -6mV(校正曲線はまだ作っていない)に達したそのとき、断末魔が起こった。その直後ペンは一気に0.5mV下がり、-6.5mVで一定値を示し続けた(図1)。-6.5mVで-196℃と思われるので、15℃ほどいっきょに中心部の温度が下がったといえる。 この銅球を液体窒素から取り出し、室温中に放置すると何の変哲もなく、温度があがり始める。-1.2mVまで回復し、この時点で、再び液体窒素にひたすと、今度はどんどん温度が下がり続け、わずか1分で-196℃に達した。まるで1分間、断末魔の悲鳴を上げ続けたようであった(図2)。銅球には霜がついたまま液体窒素にひたした。
2)銅の立方体(130グラム)
ペンレコーダーの設定は1)と同じ。球と同様に室温から冷やし始めた。2分20秒で激しい断末魔がきた。温度は球の場合と同じとみなせる。25秒早くきたわけは表面積の違いであろう(図3)。
3)この立方体を液体窒素から取り出し、-1.8mVまで回復した時点で霜がついたまま再び液体窒素にひたすと、こんどは何と、はじめから激しい断末魔状態を示し、わずか20秒で-196℃ までさがった(図4)。

考 察
 室温の金属は液体窒素に浸されてから、銅の内部の自由電子や,格子の振動が次第にそのエネルギーを放出していくはずである。表面から次第に中心に向かって振動が小さくなっていくとき、何らかの機構で熱伝導率が(-180℃付近で)急激に上昇するのであろうか。そして中心に残っていた振動が一気に表面まで伝達されるようなイメージを抱かされる。
 霜がついた状態からはじめたのでは、温度グラフの急激な折れ曲がりがないのは、表面に付着したものが影響するのであろうか。-180℃付近は酸素の沸点なので、表面に付着していた酸素が影響するだろうか。
 私の直感的なイメージとしては、何か熱伝導を妨げるものがあって、熱が次第に中心部にとじこめられ、ある時点でいっきょに吐き出される、という感触である。

謝 辞
 昨年の今ごろ、この現象を発見し、多くの仲間や、生徒たちの意見を聞き、思いを凝らし、実験方法を考え、サンプルの製作所を探し、中心部の温度測定に成功した。久しぶりに未知な現象を探求する実験をして心が震え、鳥肌が立つ一夜であった。 このような機会を与えてくれた職場の暖かい雰囲気に感謝いたします。