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実験直後の考察と謝辞
室温の金属は液体窒素に浸されてから、銅の内部の自由電子や,格子の振動が次第にそのエネルギーを放出していくはずである。表面から次第に中心に向かって振動が小さくなっていくとき、何らかの機構で熱伝導率が(−180度付近で)急激に上昇するのであろうか。そして中心に残っていた振動が一気に表面まで伝達されるようなイメージを抱かされる。
霜がついた状態からはじめたのでは、温度グラフの急激な折れ曲がりがないのは、表面に付着したものが影響するのであろうか。−180度付近は酸素の沸点なので、表面に付着していた酸素が影響するだろうか。
私の直感的なイメージとしては、何か熱伝導を妨げるものがあって、熱が次第に中心部にとじこめられ、ある時点でいっきょに吐き出される、という感触である。
昨年の今ごろ、この現象を発見し、多くの仲間や、生徒たちの意見を聞き、思いを凝らし、実験方法を考え、サンプルの製作所を探し、中心部の温度測定に成功した。久しぶりに未知な現象を探求する実験をして心が振るえ、鳥肌が立つ一夜であった。
このような機会を与えてくれた職場の暖かい雰囲気に感謝いたします。
現在の知識と考え
その後教えられたことであるが、液体が伝熱面に触れて沸騰するとき、液体と伝熱面との温度差によって、核沸騰と膜沸騰の違いがあるということである。室温の金属を液体窒素に浸したときは、温度差が大きい膜沸騰領域ということになる。金属表面は盛んに気化する窒素の蒸気膜で完全に覆われてしまっているのである。この蒸気膜が伝熱面を液体窒素から熱絶縁することになり、熱流束は小さい状態にある。そこで金属は液体窒素を沸騰させながらもゆっくり冷えていくという現象になるのである。
金属がゆっくり冷えて、液体窒素との温度差が10〜20度しかない状況では、蒸気膜が破れて液体が直接金属に触れ熱絶縁も破れ、多くの気泡が次々と伝熱面を離れて上昇する事態になる。これを核沸騰というそうである。これが金属の断末魔の悲鳴に見えるというわけである。
核沸騰領域になると、気泡の発生と運動による攪拌のため熱伝達は非常に促進され、熱伝達量は多くなる。まさに沸き立つのである。
実はこの膜沸騰を利用して、私は長年、液体窒素に指を浸しても3秒までなら大丈夫と言って、生徒にやらせてきたのである。蒸気膜が指を守ってくれるからという説明までして。それなのに金属の断末魔の悲鳴を見たときはそこに思い至らなかったのが不思議である。現象があまりにも鮮やかなのである。
液体窒素を使う面白い実験はたくさん紹介されているが、この金属の悲鳴もぜひそこに付け加えるとよい楽しさがあるので投稿したしだいである。
実験結果2・4についての解釈は霜が原因と思っている。温度的には膜沸騰の起きる条件だが、霜が沸騰石の役割をして気泡をスムースに伝熱面から離脱させ、蒸気膜の形成を妨げるからであろう。
参考文献
低温工学基礎技術 P22、低温工学協会関西支部
(男子部 吉良公宏)
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