第27回 「〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる」教育/学園長ブログ - 自由学園 リビングアカデミー(45歳以上の方々の学校)

第27回 「〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる」教育/学園長ブログ - 45歳以上の方々の学校【自由学園 リビングアカデミー】

学園長ブログ

第27回 「〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる」教育

「自由学園の学生や卒業生が語る〈みんな〉という言葉は、私が知っている『みんな一緒』というときの『みんな』とはどこか違います。みんなの中にいながら、みんなの中に自分が埋没せず、一人ひとりがきちんと際立っている印象です。つまり、〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる教育です。この違いはどこから来るのでしょう。また、学園の特徴である自労自治を学園生が説明するとき、『自分のことは自分でする』『自分たちのことは自分たちでする』という言い方をします。学園で生活しているうちに、いつか『自分たちのこと』を『自分のこと』として考えるようになるようです。では学園生はいつ頃から『自分たち』を強く意識するようになるのでしょうか。このような成長のしかた、自分と社会のつながり方は、未来の社会を創る子どもたちの教育を考える上で大きなヒントになるように思います。」

昨年12月の暮れ、「持続可能な社会形成のための教育:ESD(Education for Sustainable Development)」を研究する名古屋市立大学准教授、曽我幸代さんの訪問を受け、このような質問をいただきました。曽我さんの質問をめぐっての「対話」は様々な方向への広がり、7時間に及ぶものとなりました。

曽我さんは、2008年に自由学園で行われた「食の学びの報告会」の際に始めて自由学園を訪れ、その発表内容に「圧倒された」とのこと。以降、自由学園に関心をもたれ、機会を見つけては「学業報告会や最高学部4年課程卒業研究報告会などに参加」されました。その後、博士論文を「自己と社会の変容のための学び “Learning to Transform Oneself and Society” 」というテーマで執筆する当たって、多くの学園生や卒業生へのインタビューをなさっています。冒頭の2つの質問はその取り組みの中で生まれたものでした。
研究者として自由学園の教育を捉えた曽我さんの観点は私にとってとても新鮮で、対話の中で気付かされることがたくさんありました。
まずなによりも曽我さんが自由学園の教育を、「〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる教育」と捉えてくださったことに、なるほどと感心し、またうれしく思いました。

以前、自由の森学園の鬼沢先生(現理事長)と「個の自由と集団の自由」についてお話した際に、鬼沢先生が「自由学園は共同体の中での個が大切にされるよね」とおっしゃっていたことも思い出しました。確かに私たちはこのような学校・社会を目指しています。また、私は国語の教員ですが、生徒のこの体験を別の観点から捉え言語化するための補助線的な文章として、龍村仁の「私から我々へ」、宮沢賢治の「農民芸術概論綱要 序論」を読んでいることも思い出しました。

対話の中で、「〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる」教育の空間がどのように形作られるかを考えましたが、答えは、「自治によって生成される」といういたってシンプルなものでした。生徒たちが自分たちの属する団体を自分たちの責任において自治的に運営することによって、〈みんな〉という意識はつくられるということです。

この対話が曽我さんの手でまとめられ、6月20日発行の創成社新書『対話がつむぐホリスティックな教育』(日本ホリスティック教育協会)の中に「自由学園の実践」(P149~215)として収録されました。

「ホリスティック教育」とは、人間を部分に分断するのではなく、丸ごとの全体として捉えようとする教育の総称ということができます。本書の中では「真の人間を育てる教育」とも表現されています。自由学園に共通する考え方であると思います。
曽我さんが、自由学園の概要を的確な言葉でまとめてくださっていますが、学校紹介を目的した対話ではなく、1つの問いへの答えを探るために行われた対話であるため、本書を通じて学校の全体像をつかむことは難しいかもしれません。しかし「〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる教育」という本質的な観点から自由学園の教育を探る機会をいただき、また、教師生活の中で私に大切なことを教え、私を導いてくれた幾人もの生徒たちとのエピソードや生徒の言葉を、このような形に残していただけたことは本当にうれしいことでした。
お世話になった曽我さんとホリスティック教育協会の皆様に、心より感謝を申し上げます。

2017年6月30日 高橋和也(自由学園学園長)

 

創成社新書『対話がつむぐホリスティックな教育』(日本ホリスティック教育協会)
第3章 自由学園の実践 ~〈みんな〉の中で一人ひとりが大切にされる教育とは~
自由学園とは
インタビューの目的
インタビュー 高橋和也(自由学園学園長)×曽我幸代
1.ホリスティック教育と自由学園
2.生活共同体としての学校
3.問い直す教師観と人間観
4.自治によって生成される〈みんな〉という意識
インタビューをふりかえって

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