第42回 自由に生きるための学び、自由な社会を創るための学び/学園長ブログ - 自由学園 リビングアカデミー(45歳以上の方々の学校)

第42回 自由に生きるための学び、自由な社会を創るための学び/学園長ブログ - 45歳以上の方々の学校【自由学園 リビングアカデミー】

学園長ブログ

第42回 自由に生きるための学び、自由な社会を創るための学び

先日、東京都市区町村教育委員会の方々による、自由学園見学の研修会が行われました。当初20名程度と伺っていた参加人数は2倍以上に増え、4市の教育長を始め、13市の教育部長、校長、教育委員の方々をお迎えしました。

私はこのお話をいただき、自由学園を知っていただくには直接生徒たちに接していただくのが一番よいと考えました。そこで女子部高等科3年生の生徒たちに声をかけると、9人が学校案内を引き受けてくれました。

前日に9人に集まってもらい私からひとこと、「君たちへの僕からの注文は一切ないので、自分が伝えたいと思うことを伝えてください。学校案内に書いてあるようなことではなく、自分自身の思いを語ってくれるのが一番です」と伝えました。

当日はまず学校見学していただきました。5人1グループで各生徒が校内の思い思いの場所をご案内しましたが、説明に熱がこもったようで、予定していた30分の時間を過ぎても誰も集合場所である女子部体操館に戻ってきませんでした。そのため時間を15分延長しました。その後、私が自由学園の教育についてお話し、最後の10分を質問をお受けする時間にしました。

ところが生徒による学校案内の際にすでに十分にお話いただいたこともあってか、質問はありませんでした。そこで私は、案内を担当した9人の生徒に向かい、「ではみんなから教育委員会の皆さんへの質問、あるいは今日の感想などを話してください」と列の端にいたM.Sさんに突然マイクを渡しました。マイクを受け取ったM.Sさんはさぞ驚いたことと思います。しかしすぐに次のような話をしてくれました。

「自由学園は何でも自由な学校じゃないんです。普通の学校では先生や大人がするようなことも生徒がしています。入学したばかりの頃は自由学園というのに学校や寮生活になぜいろいろなルールがあるのか、そこにも不自由さを感じていました。しかし学年があがり高等科3年生になった今、自分たちは、将来自由に生きるための学びをしているということがわかりました。道路はどこを車が走るかというルールがあって、私たちは安心して道を歩くことができます。そのように私たちはルールに守られて自由に生活しています。しかしルールは完全ではないので、この社会にどんなルールがあれば、もっとみんなで気持ちよく自由に生活できるかということを常に考えることが必要です。そんな力をつけるために、私たちは今この学校で、私たちの社会のルールを自分たちで作りながら生活しています。このことの大切さがわかっただけでも、自分は少し自由な人になれたのではないかと思っています。」

どちらかと言えば口数が少なく控えめなM.Sさんが、突然渡されたマイクを手に、自分たちは自由に生きるために学んでいる、自由な社会を創る主体となるために学んでいると、自分自身の言葉で淡々と語ってくれたことに私は本当に驚きました。またうれしく思いました。

 

幼稚園から自由学園で学び、15年目になるR.Kさんは、信頼する友だちからの推薦を受けて、苦手な行事だった登山のリーダーの責任を引き受けることにしたという体験を交え、「自由学園には『同志同学同行の友』という言葉があります。私にとって友だちは仲良しというだけではなく、辛いことも一緒に乗り越えてきた同志といえます。自分はその信頼の中で育てられてきました。そんな一生の友が与えられたことに心から感謝しています」と友人との絆について語りました。

 

何人かの生徒は教育委員会の皆さんに質問を投げかけ、それぞれお答えを頂きました。いくつかをご紹介します。

■質問「皆さん今日何か驚いたことがありますか。」(Y.Kさん)
■答え「私は大学教育に関わっていますが、大学を出て社会に出ても、学ぶべきことを学べていない人がたくさんいます。自分で考え、語れない人がたくさんいます。私は皆さんが高校生でありながら、すでに社会人としての立派な考えを持っていることに本当に驚きました。上辺の言葉ではなく生活の中でそれを本当に身に付けていることがわかりました。日本の教育のあり方を考える上でも、皆さんの実を伴った生活は素晴らしいものであると感じました。」

■質問「私たちは薪でご飯を炊いたり、自分の洋服を自分で作ったりしています。このような経験は社会で役立ちますか。」(Y.Nさん)
■答え「最近自由学園を卒業した2人の女性と出会いました。共に自主的で、良識があり、自分の言葉で自分の思いが語れる素晴らしい方々でした。なぜそういう人が育つのか知りたくて、今日ここに見学に行きました。皆さんの生きる力の素晴らしさに触れ感心し納得しました。」

■質問「今日の見学を通じて1番印象に残ったのはどのような生徒の姿ですか。」(M.Sさん)
■答え「すれ違うすべての生徒さんの表情です。みなさんがこの学校を愛しこの学校に誇りを持っていることが、みなさんの笑顔から伝わってきました。」

 

最後にマイクを手にしたM.Sさんは次のような言葉でこの会を結びました。

「私たちは昨日学園長から自由学園を熱く語ってくれと言われたんです。でもまだまだ時間がなくて熱く語りきることができませんでした。今日はありがとうございました。」
会場は温かい笑いに包まれました。

私は生徒たちの言葉にあらためてそれぞれの成長を感じると共に、自分たちの学校生活に対する誇りや愛情を感じ、嬉しく温かい気持ちになりました。
東久留米市の教育委員会の皆様を始め、研修会に参加し生徒たちに励ましの言葉をかけてくださった皆様に心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 

2017年11月19日 高橋和也(自由学園学園長)

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