第43回 生徒が植えた木で校舎建築が実現/学園長ブログ - 自由学園 リビングアカデミー(45歳以上の方々の学校)

第43回 生徒が植えた木で校舎建築が実現/学園長ブログ - 45歳以上の方々の学校【自由学園 リビングアカデミー】

学園長ブログ

第43回 生徒が植えた木で校舎建築が実現

「君たちが48歳になった時この杉の木を使って新しい校舎を作るのだ。これが自由学園の教育だ。心を込めて行って来なさい。」
1950年、第1回植林に出発する生徒たちへの創立者羽仁吉一先生の励ましの言葉です。(『自由学人羽仁吉一』P163)

生徒が植えた木で校舎を建てるというこのスケールの大きな夢が、半世紀以上の時を経て、今、子どもたちのための新施設「自由学園みらいかん」として実現しました。建物本体で使われた檜材の約8割、家具はすべての材が、生徒・学生が植え、育ててきた木です。

学校の校舎を生徒自身が植えた木で建てたというケースは、日本国内でも、世界でも前例がないのではないかと思います。

「みらいかん」という名前には、杉や檜のように、未来に向かって伸びていく子どもたちの成長を支え育んでゆく場所でありたいという願いをこめました。

ロゴマークは、この植林に携わったすべての方々の思いの上に、未来を担う子どもたちの成長を支える家をイメージ化し、檜材を輪切りにしたシルエットの上に「みらいかん」の建物を正面から見た姿を重ねました。全体として成長する子どもたちを象徴する1本の木の姿も表しています。

 

埼玉県名栗村で男子部高等科3年生(男子部11回生)の手により杉苗2万本、檜苗4千本の最初の植林が行われたのは1950年5月のことです。生徒18人が教員(宮島真一郎先生)の指導のもとに2週間かけて8ヘクタールの土地への植え付けを行いました。作業のために寝泊りした山小屋も同年4月に教師と生徒(男子部10回生6人)の手によって建てられたものでした。木の成長にかかる年数は30年。18歳の生徒たちが「48歳になった時」という構想でした。

1966年には三重県海山町に地元の林業家速水勉氏のご尽力により最高学部生のための第2の植林地が拓かれ、卒業生、学部生の手で2年がかりで山小屋が建てられ、檜を中心とする植林が開始されます。

その後2つの山では連綿と生徒・学生たちの手により補植、下草刈、枝打ち、間伐、除伐、道つくり、運材、小屋整備といった作業が続けられ、森づくりが行われてきました。そこにはその時々の生徒・学生が流した汗と共に、労働の喜びがあり、仲間との協力や語らいがあり、大自然の中での思索の時間がありました。

私が学生として海山での植林に携わった1980年代には木はすでに大きく育ち、作業の中心は「枝打ち」でした。「一本梯子」と呼ばれる3mの梯子を木に立てかけて登り、ある高さまでの枝を鉈とのこぎりで切り落とす作業です。節の少ないよい材になるかどうかは枝打ち次第ということでした。

朝5時起床。朝食を済ませ、重くて長い梯子を肩に乗せて山道を登ります。目的地に着いたときには汗だらけ、すでに一仕事終えた気分でした。息を整え一休みすると、あとは山の中で4、5時間、ひたすら木と向き合う一人の時間です。安全を考えて隣の人との間隔をあけていたため、必然的に作業中は一人になりました。

 

よい木に育って欲しいと願いつつ丁寧に作業をすることもあれば、何度も時計を見ては終わりを待っていることもありました。3mの梯子では届かない枝を、木に登って切ることもありました。また、鉈で幹に傷をつけてしまい、目の前の木に「お詫び」の言葉をかけることもありました。

「植林の醍醐味は自分の働きの結果を自分自身で目にすることができないところにある」という言葉があります。ボタンを押せば瞬時に結果が返ってくるこの時代にあって、とても考えさせられる言葉です。

植林を体験したすべての卒業生が、そのときどきの働きの中で、成果や評価とは無関係に汗を流すその「醍醐味」と格闘しつつ、木々との対話、自分自身との対話を重ねていたことと思います。
この「みらいかん」の柱や梁、壁板や床板の一枚一枚が、まぎれもなくその対話の相手であった木々なのです。

日に日に建築が進み、その姿が明らかになってゆく「みらいかん」を眺めつつ、常に私の心にあったのは、創立者の大きな夢が目の前で実現しゆくこの光景を、これまで自由学園の植林に携わったすべての人と共有したいという思いでした。またこの植林活動の成果が、「みらいかん」という次の世代の子どもたちの育ちを支える拠点として形となったことへの喜びと感謝でした。

木の美しさとあたたかみにあふれたこの「みらいかん」の中で、「生活即教育」という教育理念を土台とし、子どもたちが第2の家庭のように、落ち着いて楽しく過ごせるようにと願いつつ活動を開始します。また将来的には、地域や社会に開かれた「みんなが育つ学びのコミュニティ」として成長し発展していくことを目指していきます。

 

このたびの建設にあたり近隣の方々を始め多くの皆様のご支援とご協力により実現できましたことを心より感謝申し上げます。また在学中、植林活動に汗を流した男子部卒業生の皆様、活動をお支え下さったすべての皆様に心より感謝を申し上げます。どうぞご来校の際には「みらいかん」に足をお運びください。

 

2017年11月21日 高橋和也(自由学園学園長)

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