第44回 「おさなご発見U6ひろば」未来をつくる子どもたちのために/学園長ブログ - 自由学園 リビングアカデミー(45歳以上の方々の学校)

第44回 「おさなご発見U6ひろば」未来をつくる子どもたちのために/学園長ブログ - 45歳以上の方々の学校【自由学園 リビングアカデミー】

学園長ブログ

第44回 「おさなご発見U6ひろば」未来をつくる子どもたちのために

「子供からおとなまで、われわれの心の中にある願い、それほど大切なものはありません。」自由学園創立者羽仁もと子先生の「欲望の教育(1915年)」と題する文章の一節です。100年以上前の言葉ですが、今なお力を持った言葉です。

もと子先生は、欲望は制限すればよいという考えは間違いであり、子どものときから心の中にある願いや欲望を大切に扱い、丁寧に育てていくことこそが必要であると述べています。「欲望の教育」とは、禁欲や自己抑制を求める教育ではなく、願いや欲望を積極的に大切に育ててゆこうという教育です。

今を生き未来をつくる子どもたちのために、私たち大人ができること、心を注ぐべきことは一体どのようなことか。今回「おさなご発見U6ひろば」の開催に当たり、私たちはこの問いに向き合い、話し合いを重ねてきました。そしてその中で、子どもたちを真ん中に置き、子ども自身の自主性や「願い」を大切にする自由学園の教育の原点を再確認しました。

社会の様々な枠組みがこれまでにないスピードで変化を続け、先の見えない漠然とした不安を私たち大人が抱えています。その不安に対する一種の保険のように、大人が願う将来像に備える準備期間として子ども時代や子どもたちの教育を捉えてしまう傾向が強くなっているように感じられます。しかし子どもたちが生きることが出来る子ども時代は目の前にある「今」しかありません。

さらにそのように準備して目指すゴールイメージが画一化されていることも気になるところです。たとえば最近教育目標として掲げられることの多い「グローバル人材」もその一つです。そもそも「人材」という言葉には、社会の求める交換可能な利用価値として人間をとらえる響きがあり、主体性と希望を持った人間を育てる人間教育の立場からは違和感を覚えてしまいます。

子どもの願いを真摯に受け取ることをせず、子どもの思いに先立って大人の願いや社会の求めるものを優先し続けていると、子どもたちは一体どうなるのでしょう。

もと子先生は、自分自身の願いをはぐらかされ続けた子どもは、自分を知る機会を失い、自信をなくし、自分自身にさえほんとうの自分の願いがわからない人間になってしまうと述べています。あるいは親に隠れて欲望を満たそうとし、常に代用のつまらない欲望に振り回される人になると指摘しています。

これとは反対に、親が子どもたちの願いに真摯に向き合い、可能な限りはそれを叶え、叶えられない場合にも共にその願いを丁寧に吟味する習慣を重ねてゆくならば、その経験を通じて子どもは自信や力を身につけてゆくことができ、成長してからも、希望と忍耐をもって自分の本当の望みの実現に向けて努力の出来る人になると記しています。

自由学園は、一人ひとりの子どもの心の中にあるこの「願い」を大切にし、その人がその人にしか歩めない人生を歩む自主独立の精神をもった人として、切磋琢磨しつつ成長していくことを願っています。そのような人であって始めて、真に社会に貢献できる人になるからです。

創立100周年を間近にひかえ様々な伝統を重ねてきた私たちですが、「おさなご発見U6ひろば」を機に、子どもたち自身の「やってみよう」「やってみたい」という「願い」に真摯に謙虚に向き合うというもっとも大切な原点に立ち、この教育を前進させていきたいと思っています。

そして私たち大人も、私たち自身の生活を本当に見つめ、本当に抱きしめ、自分自身の願いを大切に生きていきたいと思います。

「おさなご発見U6ひろば」初日の11月22日(水)には2,208人の皆さんにお出でいただきました。ありがとうございました。子どもたちの駆け回る姿、元気な声、生き生きとした表情が印象的な一日でした。友の会の皆様のご協力に心より感謝申し上げます。

 

2017年11月23日 高橋和也(自由学園学園長)

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