第49回 目標は「最高のお食事」/学園長ブログ - 自由学園 リビングアカデミー(45歳以上の方々の学校)

第49回 目標は「最高のお食事」/学園長ブログ - 45歳以上の方々の学校【自由学園 リビングアカデミー】

学園長ブログ

第49回 目標は「最高のお食事」

女子部では元ホテルオークラ東京のシェフ・吉野博昭先生のご指導のもと、高等科3年生によるフランス料理の昼食作りが行われました。フランス料理の調理は1学期に次いで2回目。30人の生徒で280人分を作りました。メニューは
・鶏もも肉のロースト オレガノとローズマリー風味 浅葱ソースを添えて
・カリフラワーと胡瓜のサラダ サフランドレッシング蜂蜜風味
・クリームスープクレーシー
・マンゴーのババロアとカリッとしたビスキュイ クロゼイユソース ナッツ添え
・プチフランス

7時半に事前準備の様子を見に行くと、すでに台所では野菜や肉の下ごしらえなどが、食堂ではテーブルセットが行われていました。生徒たちはそれぞれの分担に従っててきぱきと手際よく働いていました。

働く生徒たちの姿と共にこの台所風景を見て私がいつも注目しているのは、壁際に掲げられている2枚の模造紙の表です。1枚にはその日のお料理のリーダーの名前、目標、献立、材料と分量、各自が担当する組み分けが、もう1枚には各分担者がいつまでに何をするかといったタイムテーブルが書き出されています。

リーダーになった生徒たちは事前に先生方と相談してこの2枚の進行表を書き、当日は昼食開始時間に間に合うように作業全体に目を配ります。各生徒が昼食作りを担当するのは月2回。誰もが順番でリーダーになり、主菜、副菜からテーブルセットまで、様々な役割を経験します。

当然のことですが皆で気持ちよく協力できる日もあれば、そうではない日もあります。クラスの状態や忙しさなどによって、調理中に皆の不満がもれ、リーダーが涙を流すこともあるようです。

通常のお食事作りは授業の2コマ分、1時間半で行われますが、特別料理である今回は9時から12時すぎまでと時間が長く、タイムテーブルをよく見ると、自分の分担を終え、手が空いたらどこを助けるかということまで書き入れられていました。

このような経験がどのような力を育てているのか。
昨年3月、女子部卒業生の有志のグループの皆さんにより、女子部の昼食レシピ82品目を紹介する『自由学園最高の「お食事」』が出版されました。学校で提供される昼食は通常「給食」と呼ばれますが、生徒が作り皆で食卓を囲む女子部では、家庭のように「食事」と呼んでおり、本のタイトルにもこの言葉が使われました。レシピと共に紹介されている数々の卒業生のエピソードの中には次のような言葉がありました。

「私たちはどんなところでも、どんな状況でも、生き抜ける力はつけていただいたと自負しております」
「女子部のお料理は、授業としての時間や料理の作り方の勉強だけではなく、1つの事業がどのような細部と準備と協力で成り立っているかを体験します。日常として繰り返し会得していく勉強だったことを思い出します」
「卒業して社会に出てからも、自分の頭で考え、段取りを立てて、周りの人たちと協力してものごとを進めていくときに、この授業での経験がとても役立ちました」。

生徒たちは食事作りを通じて、料理について学ぶだけではなく、生きていく上での自信や底力、協力してものごとを成し遂げるプロジェクトの実現方法をも身につけているのです。

昼食が始まり、お料理の様子を報告したリーダーは、「今日のお料理は私たち98回生が作り、皆さんに食べていただく最後のお食事です。私たちの3年間、6年間の成長も味わっていただけるとうれしいです」と思いを語りました。

模造紙に書き込まれたこの日の目標は「最高のお食事」。この目標にふさわしい美しさと美味しさでした。皆さんご馳走様でした。

ご指導いただきました吉野先生に、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 

2018年3月8日 高橋和也(自由学園学園長)

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