10月の日曜日、来年3月に卒業を迎える学生たちとその保護者の皆さんの企画による校内整美と交流の会が行われました。私も保護者として参加しました。
開会のミーティングは賛美歌で始まり、子どもたちによる親子紹介という和やかなひとときがありました。新潟からご夫婦で参加してくださるご家庭もありました。
この日の作業は「山藍撲滅作戦」と名付けられ、校内の数カ所で繁茂している山藍を徹底的に抜くというもの。皆さんの熱心な働きにより午前中の2時間ほどでほとんど抜いたのではないかと思われました。
昼食後、再度仕上げの一仕事を終えたところに、ちょうど今回の作戦のアドバイザーの大塚ちか子先生がやってきました。大塚先生は自由学園で長く自由学園の「自然誌」グループの指導を担当してこられた学園内や地域の植物のエキスパートです。
なお「自然誌」の語源は Natural History。 History には物事を記録し記述するという意味があり、自由学園の自然誌グループの学生たちは、年間を通じて校内を定期的に観察して周り、その時々の個々の植物の様子を詳しく記録しています。
私は意気揚々と大塚先生に「この辺りのものは取り尽くして皆さん移動しました」とお伝えすると、先生は地面にしゃがみ、落ち葉を掻き分け、埋もれていた山藍の小さな芽を抜き始めました。そしてさらに、手際よく地中に伸びている長い根を掘り出して、「これをとっていただけると来年は広がらず助かる」とひとこと。
ここから約2時間、地中に網の目のように広がっている根の掘り出しを中心とした作業が続きました。その量の多さに、文字通り、何事も表面だけを見ていてはいけないということを実感しました。
その作業中のこと。
女子学生のSさんは、はじめは落ち葉の中から出てくるゴキブリの仲間に悲鳴をあげていましたが、そのうち黙々と作業に集中し声は聞こえなくなりました。そしてさらにうれしそうにひとこと、「山藍が見えるようになったら、ゴキブリが見えなくなった」という声が聞こえてきました。面白く、なかなか深い言葉でした。
また幼稚園から入園し自由学園で誰よりも長く学んできたM君は、地面の下で広がる根に感心した様子で、「こいつらこんなに頑張って春に備えているのかー。俺も頑張るぞー!」と誰にともなくひとこと。ぜひ皆さんにはそうあってほしいものです。
作業中、学生たちが「自由学園の保護者たちは本当にすごいよね。こんなに熱心に学校のために力を出して」と語り合っていましたが、保護者の皆さんからも「子どもたちが本当によく働く!」という感心の声が聞こてきました。
2018年11月6日 高橋和也(自由学園学園長)