第73回 問題解決の一部に/学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

第73回 問題解決の一部に/学園長ブログ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

学園長ブログ

第73回 問題解決の一部に

2019年10月3日

9月28日(土)に行われた第13回となる「地球市民教育フォーラム」には、アウトドアウェアのメーカー、パタゴニアの日本支社長・辻井隆行さんを講師にお迎えし、「会社を社会を変えるツールに。〜持続可能な社会のビジョンのために企業ができること〜」というテーマでお話いただきました。

辻井さんとは「ファッション・スポーツウェアと人権課題」をテーマとする勉強会でお会いしました。勉強会では、アパレル産業が大きな環境負荷を生み出す業界であること。綿の生産現場で使用されている大量の農薬のことや大量に生産され廃棄されている衣料製品のこと。日本で消費される服の多くが海外の生産現場でつくられ、製造拠点では今も児童労働や環境破壊等の出来事が発生し問題になっていること。また日本国内では、海外からの技能実習生が過酷な労働を強いられていること。このような状況の中、エシカル(倫理的)な生産と消費の推進に取り組む企業の責任について議論が行われました。

自由学園のフォーラムでのお話の中心テーマは、気候変動という危機に対して何ができるか、そして「環境と経済」という、人間が生きるために共に不可欠でありながら複雑な対立や矛盾を生んでいる大きな課題にどのように向き合うことができるか、というものでした。

「環境にやさしい服はありません。ビジネスは必ず環境負荷を与えます」という前提でお話は始まり、様々な事例をもとにした密度の濃い内容に引き込まれ、90分はあっという間でした。お話を受けて、生徒たちから次のような質問が出ました。

「環境によい自然エネルギーを支援したほうがよいというお話でしたが、太陽光パネルに使うレアメタルの採掘が環境負荷を与えているという問題があるという意見もあります。どうお考えですか。」

「値段は高くても環境に配慮して作られたものを買った方が良いことはわかるけれど、一方で貧困の問題もあり、そんな余裕はないという現実もあります。また安いものを買うニーズがあるからこそ、企業も環境負荷をかけつつ安いものを作り続けています。どう考えればよいですか。」

辻井さんは「いい質問ですね。私も正解は持っていません。白か黒かでは割り切れない正解の出せない問題に対して何ができるのか。できることは事実に学び、自分の頭で考えること。そして矛盾の中にとどまりつつ、今できる最善を選んでいくことではないでしょうか。パタゴニア創業者イヴァンさんには『問題に気づきながら何もしなければ、君は問題の一部だ。何か行動をすれば、解決の一部になる』と言われています」と誠実にお答えくださいました。講演の後も多くの生徒たちが辻井さんを囲み質問をしていました。

自由学園は「教育が新しい社会をつくる」と考え、この実現に向けた学校づくりに取り組んでいます。昨年度は、環境の側面でこれを推進するために環境文化創造センターを立ち上げました。そして環境にかかわる取り組みを強化すべく、私たちの暮らしを支える「自然、社会、生活」の3領域で行われている教育活動に、それぞれ「エコロジカル=いのちと環境の調和が保たれるために水と緑と生きものを守り育てる(自然)、サステナブル=環境を守り有限な資源が循環し続けるための生産と消費の関係をつくる(社会)、エシカル=生産から廃棄までの過程で環境負荷が少ないものを選んで使って暮らす(生活)」という行動指針を設定しました。

辻井さんのお話を伺い、あらためて、生徒と共に高い志を持ちつつ、日々の学校生活における小さな実践を丁寧に積み重ねていきたいと思いました。「問題解決の一部になる」学校を目指しつつ。

尚、この翌週にプレリリースがありましたが、10月1日をもって辻井さんは10年続けてこられたパタゴニア日本支社長を退任されました。「今日は記念となる講演です」とおっしゃり、ステージに立たれました。そのような意味でも、深い思いの込められたお話でした。

2019年10月3日 高橋和也(自由学園学園長)

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