第76回 大きな問いに向き合って/学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

第76回 大きな問いに向き合って/学園長ブログ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

学園長ブログ

第76回 大きな問いに向き合って

2020年4月9日

49日(木)、自由学園男子部・女子部(中等科・高等科)の2020年度新学期の始業式は、新型コロナウィルスの感染予防のため、インターネットを介してのライブ配信という形式で行いました。日々刻々変化する状況の中、どのように新年度を迎えることができるか検討を重ね、いくつもの選択肢を用意しましたが、安全を最優先しての判断でした。  

新型コロナウィルスの感染拡大という大きな困難の中にあって、私たちの生き方や社会の在り方が変わりつつあります。「私たちが本当に大切にしたいものは何か」、「私たちが作りたい社会はどんな社会か」、「人は何によって生きるか」、このような本質的な問いに、今、私たちは直面しています。  

自由学園が創立100年目を歩み出す2020年、生徒と共にこの本質的な問いに向き合っていきたいと思います。 

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「大きな問いに向き合って」

自由学園の生徒の皆さん、おはようございます。
家で過ごす時間が長くなりましたが、皆さん、体調はいかがでしょうか。
皆さんが、心も体も健康に過ごしていることを願っています。
初めに聖書を読みます。

マタイによる福音書4章1節から11節
1さて、イエスは悪魔から誘惑を受けるため、“霊”に導かれて荒れ野に行かれた。 2そして四十日間、昼も夜も断食した後、空腹を覚えられた。 3すると、誘惑する者が来て、イエスに言った。「神の子なら、これらの石がパンになるように命じたらどうだ。」 4イエスはお答えになった。
「『人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』と書いてある。」 5次に、悪魔はイエスを聖なる都に連れて行き、神殿の屋根の端に立たせて、 6言った。「神の子なら、飛び降りたらどうだ。『神があなたのために天使たちに命じると、
あなたの足が石に打ち当たることのないように、天使たちは手であなたを支える』と書いてある。」 7イエスは、「『あなたの神である主を試してはならない』とも書いてある」と言われた。 8更に、悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せて、 9「もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これをみんな与えよう」と言った。 10すると、イエスは言われた。「退け、サタン。『あなたの神である主を拝み、ただ主に仕えよ』と書いてある。」 11そこで、悪魔は離れ去った。すると、天使たちが来てイエスに仕えた。

新型コロナウィルスの感染拡大の状況を踏まえ、2月26日、自由学園では皆さんの安全のためにも、感染拡大を防ぐためにも早急に登校による学校活動を中止するべきであると判断をしました。そして29日を最後に、自宅学習に移行し、寮も閉じることにしました。皆さんもあまりに急なことでびっくりされたことと思います。修業式もなく4月を迎え、気持ちの整理がつかない方もいるのではないかと思います。

2月26日から4月9日までは、ちょうどイエス様が十字架に向かって進まれた苦難の40日に重なります。
この40日は全世界にとって、前例のない苦難の40日でした。世界中で140万人の人が感染し、8万人の方が亡くなっています。日本では7日に緊急事態宣言が出され、緊張状態が続いています。事態の終息にはまだまだ時間がかかると予想されます。

不安なことが多く希望を感じることが難しい状況ですが、今日は初めに皆さんに、この困難の中にあって私が感じた3つの希望についてお話します。

・「登校日はあと3日」となって急遽行われた高等科3年生を送る会
・十三浜のわかめ漁師さんから届いたメカブ
・「平和で持続可能な社会づくりのための学び」
この3つです。

まず1つ目。私は「登校日はあと3日」と伝えてからの皆さんの行動に胸を打たれました。
学期末の勉強や自分の身の回りの整理に加え、学校や寮の掃除など、短い時間に淡々と対応している姿には日ごろ積み重ねが感じられました。

その中でも私がもっともうれしく、またありがたく感じたことは、不安と慌ただしさの中にありながら、男子部でも女子部でも、高等科2年生以下の在校生の皆さんが、心を込めて高等科3年生を送る会を準備してくださったことでした。
2月末というこのタイミングでの判断の際、私たち教員が心を痛めていたのは卒業する高等科3年生を例年のように温かく送り出すことができないということでした。しかし限られた時間の中にありながら皆さんがとった行動は、女子部が、そして男子部が、何よりもまず人と人の温かいつながりを大切にする団体であることを示していました。

私は2月29日の解散前に男子部で行われた「6年生を送る会」に参加することができました。高等科2年生が考えたその会は、1つ年上の兄であり友であり先輩である3年生の一人ひとりに、高等科2年生が感謝の思いをストレートに伝えるという内容でした。
感謝、尊敬、愛情、ユーモアをもって語られる言葉はどれも温かいものでした。幾人かは涙をこらえきれず、泣きじゃくりながら、心からの敬愛と惜別の思いを伝え、受け止める3年生も号泣する場面もありました。
「先を歩いていた君たちがいなくなることは寂しいけれど、君たちからもらった大切なものを、今度は僕たちが下級生に贈ります。ありがとうございました。お疲れ様でした。」
何人もがこのような思いを口にしました。
女子部でも高等科2年生の皆さんが中心になり温かい壮行会を行ってくださったと伺っています。自由学園は愛を学ぶ愛の学校であることを、目の当たりにする本当に嬉しい出来事でした。

2つ目もこの3日間のことです。9年前の東日本大震災を機に繋がりをいただいた石巻市十三浜のわかめ漁師さんが、新型コロナウイルスの混乱の中にある生徒たちに温かい応援のメッセージとしてメカブをお送りくださったのです。
男子部の高等科3年生は、3月に十三浜にわかめ収穫のお手伝いに出かける予定でしたが、残念ながら活動を中止せざるを得ませんでした。そのお知らせを漁師さんにしたところ、予定になかった船を海に出し、メカブを収穫し、学校に送ってくださったのでした。
「いつも浜で食べているように今年もわかめの初ものをみんなに食べさせたい。卒業する高3の生徒たちのため、休校前に届けたい」との思いからでした。まだまだ震災後の困難の中にある十三浜の漁師さんの温かい思いにとても励まされました。このメカブは震災以来9年間の十三浜と自由学園との交流の中で築かれた信頼と、共に生きる社会を作る希望の象徴のように感じられました。

3つ目は自由学園ホームページでご覧になった方もあると思います。「平和で持続可能な社会づくりのための学び」をテーマにした動画サイトです。自宅学習に入ってすぐに3人の男子部生が、「自分たちの周りで起きていることを知り、休校中の生徒が学ぶきっかけになるものをつくろう」と動き出しました。そしてこれまで平和週間に講師にお迎えした先生方を中心に6人の先生をお訪ねし、メッセージをビデオに収め、編集したものです。
「共生か支配か 本当の民主主義のために」「日本の若者を取り巻く社会構造とは」「共生社会に向けて」など、これからの社会の姿を考えるうえでの議論の題材になる内容でした。私たちが作りたい社会はどのような社会でしょう。ご家族で見ていただき、感想を交換をしていただくのもよいと思います。
これらはどれも、新型コロナウィルスの感染拡大による予期せぬ40日の中での出来事です。 

先ほどお読みした聖書は、イエス様が荒れ野で40日間断食し、悪魔の誘惑を受け、これを退ける出来事が書かれた場面です。

40日の断食を荒れ野で行ったということですから極限的な空腹と疲労の中にあったはずです。その中で人が生きるために本当に必要なことは何かと問われたイエス様は、パンや権力や奇跡をはっきりと退け、聖書の言葉によって、ただ神を信じ、神のみに従う信仰こそが大切であるとお示しになりました。

新型コロナウィルスの感染拡大という大きな困難の中にあって、私たちの生き方や社会の在り方が変わりつつあります。イエス様が荒れ野で直面した「人は何によって生きるか」という本質的な問いに、今、私たちも直面しているように思います。

私たちが本当に大切にしたいものは何でしょう。
私たちが作りたい社会はどんな社会でしょう。

自由学園で学ぶ私たちが向き合っていきたい大きな問いです。一人ひとりよく考えてみてください。

私たちの自由学園はどのような学校でしょうか。
キリストをただ一人の先生とする学校
愛を学ぶ愛の学校
平和で持続可能な社会づくりを目指す学校
神の国の実現を目指す学校です。

この1か月、学校という社会で共に生活することはできませんが、ぜひ皆さんが生活する家庭という小さな社会において考えたことを行動に移してください。

創立100年目の歩みを共に
自由学園はこの4月15日に創立100年目の歩みを始めます。この100年の間に人類は様々な困難に直面しました。大きな戦争もありました。しかし自由学園という小さな学校は発展しつつ100年目を迎えることができました。神様の導きとお守りに感謝の思いは尽きません。
今回の新型コロナウィルス感染症との戦いは長期戦になりそうですが、やがて必ず終息し、私たちの穏やかな日常生活が回復するときがやってきます。世界が直面するこの困難の中、私たちは私たちにできることを考え、力を合わせて最善の道を祈り求めつつ、この前例のない事態に対応していきましょう。 
皆さんの新しい生活が素晴らしいものとなるように、私たち教職員一同心から応援します。

2020年4月9日 高橋和也(自由学園学園長)

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