第77回 創立100周年目の新入生の皆さんへ/学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

第77回 創立100周年目の新入生の皆さんへ/学園長ブログ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

学園長ブログ

第77回 創立100周年目の新入生の皆さんへ

2020年4月11日

2020411日(土)、創立100年目を迎える自由学園の男子部・女子部(中等科・高等科)入学式を行いました。 
新型コロナウィルス感染予防のため、自由学園に集うことが出来なかったため、新入生の皆さんや保護者の皆さま、また在校生に向けてインターネットを通じて自由学園からライブ配信をして、ご一緒に入学式を迎えました。私は全校生徒、保護者の皆様、教職員を代表して以下のお祝いの言葉を述べました。 

 
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「創立100年目の新入生の皆さんへ」

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。保護者の皆様、お子さまのご入学おめでとうございます。自由学園の創立100年目の年に皆さんを新しい仲間としてお迎えできることをうれしく思います。在校生、教職員一同皆さんのご入学を心から歓迎します。


新入生に向けてインターネットを通じて入学式を行う

皆さんは入学が決まってから新しく始まる自由学園での生活についていろいろと想像し、おうちの方と一緒に新学期の準備を進めてくださっていたことと思います。

40年以上前になりますが、私も中学から自由学園に入学しました。入学前の春休みには、これからどんな新しい生活がはじまるのだろうという、期待や不安が入り混じった複雑な気持ちで、母と一緒に寮で使う洗面器や布団などを準備したことを思い出します。

今、新型コロナウィルスの感染が広がり、世界中が先が見えない不安な状況にあります。そのことを思うと、皆さんは、私が入学するときに感じていた不安とは違う種類の大きな不安も感じているのではないかと思います。

このような状況の中で入学する皆さんの新しい生活が素晴らしいものとなるように、私たち在校生、教職員一同、全力で応援していきます。共に学び共に新しい生活を作り出していきましょう。困ったこと、悩んでいることがあればどんなことでも遠慮なく、先生方に相談してください。

今日は皆さんに3つのことをお話しします。
学校とは何かということについて
今だからこそ行うべき学びについて
家族としての学校ということについて

学校とは何かということについて
今皆さんは、学校に集まることができずに、自由学園の生徒になるということに、実感を持つことが難しいかもしれません。

しかし考えてみましょう。学校とはいったい何でしょう。学校にとって一番大切なものとは何でしょう。校舎でしょうか。教室でしょうか。様々な設備でしょうか。

もちろんそれも大切です。よい教育にはよい設備が必要です。しかしそれらは一番大切なことではありません。

学校にとってまず一番大切なものは学校の持つ志です。志とは心がさす方向であり、学校の目指す教育の目標です。その教育を通じてどのような人を育てたいという学校の考え、願いです。

自由学園は、このような人を育てたいという強い志、強い願いを持っています。それは、「よく生き、よい社会を創る、真の自由人」を育てるという志です。

自由学園は、どんな時代、どんな社会であっても、何がよいことであるかを常に自分の頭で考え、自分に与えられた命と自由を精一杯に生かして、よいと信じたことを心を込めて実行できる人が育つ学校でありたいと願っています。

自分でよく考え自由に行動する人は、誰かに言われたことを忠実に守るだけの、性能がいいロボットのような人ではありません。ロボットには何が本当によいことかを考え自分で選ぶ、本当の自由はありません。

自由学園の「自由」という校名は聖書のヨハネによる福音書8章の「真理はあなたたちを自由にする」という言葉からとられています。私たちは神様から自分の判断で自分の人生を歩む、本当の自由を与えられています。この自由を大切に使える人になりましょう。私たち大人も皆さんと一緒に共に自由を学び続けていきたいと思います。これが自由学園の志です。

次に学校にどうしても必要なもの、それは志をもって教育したいと願う先生方です。自由学園には高い志を持った先生方がいて、皆さんを待っています。

学校が、こういう教育をしたいという考えを持ち、先生がいるだけでは、学校は成り立ちません。もう一つ欠かせないものがあります。もちろんそれはこの学校で学び成長したいと願う、生徒である皆さんであり、共に学ぶ仲間です。

今、私は「皆さんのお一人おひとりを同志、同学、同行の友としてこの学校に迎え入れます」と宣言をしました。

「同志、同学、同行の友」とは、同じ志を持って、共に学び共に生活する友ということです。今日から皆さんは、自由学園の生徒であり「同志、同学、同行の友」です。 これから始まる友だちや先生方との交わりを楽しみにしていてください。

皆さんは東京都東久留米市にある自由学園に集まって学ぶことにはなりませんが、日本中で皆さんが過ごすその場が皆さんと私たちの学校です。

■今だからこそ行うべき学びについて

自由学園では生活即教育という言葉を大切にしています。学びは教室や教科書の中だけにあるのではなく、生活それ自体が、そして目の前の社会や自然環境そのものが学びの場であるという考えです。 今この考え方はとても重要な意味を持っています。

自由学園は創立以来の100年の歴史の中で、様々な困難に直面してきました。戦争中には自由という名前はけしからん、学校名を変えるようにという圧力もかかりました。しかし自由を認めなければ本当の人間の教育はできないと考え、校名を変えることはしませんでした。

創立者のおひとり羽仁吉一先生は、戦争に向かう困難な時代の中で、「時勢は教育する」と語っておられます。 時勢とは変化していく時代の流れということです。明治維新のときに吉田松陰や、西郷隆盛、福沢諭吉が活躍したように、激しく変化する時代の流れこそが、新しい人を生み出す教科書であり、先生であるという考えです。

私たちの社会は、今大きな困難の中にありますが、今この社会の課題にどのように向き合うかということこそが、私たちが考えるべき生きた教育であり、生きた学びなのです。

今週7日、新型コロナウイルスの感染が広がり緊急事態宣言が出されましたが、その翌日8日は、月が地球に最も近づいて普段より大きく見える、いわゆる「スーパームーン」でした。皆さんもご覧になったでしょうか。私もきれいな月を見ることができました。

ところで皆さん、空に浮かぶ月はなぜ落ちてこないのでしょう。 昔の人は、空の上の天の世界には人間が住む地上とはまったく違った不思議な法則が働いているに違いないと考えていたそうです。ところが今から350年ほど前、ある科学者がまったく新しい説を出しました。

その科学者の考えは「庭のリンゴに対して働いている力は、月に対しても働いている」というものでした。 この科学者が誰であるか、皆さんもお気づきでしょう。この人はアイザック・ニュートンです。「近代科学の父」と言われています。

ニュートンは、重さを持ったものは互いに引っ張り合う関係にあること、引く力は重いものほど大きいこと、そして月も地球に引っ張られ、落ち続けながら前に進むので地球の周りを回っているということを明らかにしました。ニュートンが発見したこの法則は「万有引力の法則law of universal gravitation」と呼ばれます。 Universalとは「普遍的な」、「宇宙の」、「全自然界の」という意味、gravitationは「引く力」「引力」です。

なぜこんなお話をしているかというと、ニュートンが万有引力を発見したのは、1665年、ロンドンにペストという感染症が広がり、大学で学ぶことができなくなり、2年間、郊外の自宅で過ごしていた時期のことだからです。 万有引力だけではありません。数学や物理学、光学という分野でのニュートンの優れた発見の基礎はこの時期に集中しているのです。24歳という若さです。

そのときのことを書いたニュートンの研究ノートがイギリスのケンブリッジ大学図書館にあり、デジタル版が一般公開されています。

ニュートンはこの時期に行った自分の発見を並べて、次のように書いています。 (ちょうど紙の真ん中くらいのところです。)
https://cudl.lib.cam.ac.uk/view/MS-ADD-03968/1349

All this was in the two plague years of 1665 and 1666, for in those days I was in the prime of my age for invention, and minded mathematics and philosophy more then at any time since.

「これらの発見はすべて、1665年と1666年のペストが流行した2年間のことだった。当時、私は人生における発見の最盛期にあり、その後のどの時期よりも数学と哲学に熱中していた。 」

“the prime of my age for invention”。私の人生における発見の最盛期。 Inventionには創意、創案という意味もあります。人生において最も創造的であった時期ということができると思います。

新型コロナウィルスにより、今世界中で多くの人が自宅にいることを求められています。皆さんと同じように自宅学習をしている人もたくさんいます。残念なことではありますが、しかし今このときが、大きく時代を変えるような新しい考えが生み出されるときになるかもしれません。

この10日間ほど、自由学園の先生たちは、皆さんとの学びやクラス作りを充実したものにするために、インターネットも活用し、これまでにない方法での学びの準備を進めています。先生方も日々学んでいます。皆さんも今この時代の課題に向き合い、自分から問題を見つけて学ぶ姿勢を大切にしていきましょう。 「時勢は教育する」精神をもって。

家族としての学校ということについて

新型コロナウイルスの感染が拡大していく中で、私たちは新入生の皆さんをどのように温かく、安心感をもってお迎えできるかと、様々な可能性を検討してきました。最終的に今日のような形でインターネットを通じて行うことにしましたが、皆さんにもお知らせしていたように、日本の各地で皆さんにお集まりいただくという、もう一つの形も検討していました。

北海道、東北、北関東、北陸、中部、関西、中国、四国、九州には、自由学園の窓口になってくださる卒業生や保護者の方々がいます。キャプテンと呼んでいます。今回、自由学園に集まって入学式が行えない場合に、日本の各地で小さな入学式を学校の時間に合わせて行えないかと、キャプテンの皆さんにご相談したところ、すぐに皆さんから、とても温かいお返事が届きました。

「この地区からの新入生が一人いらっしゃり、嬉しく思っておりました。小学校を出たばかりのお子さまを、予想のつかない状況で寮生として、送り出そうとしていらっしゃるご両親に少しでも安心していただけるよう協力させていただきたいと思います。」

「私も東北大震災の年に娘の入学を経験し、入学前の不安な中、在学生や父母の方々、先生方が集まってくださり、お話しした時の安堵感を思い出します。友の家の協力も得られると思います。ネット環境もあります。ぜひお力になりたいと思います」といった声です。

友の会は、自由学園の創立者羽仁先生が創刊した『婦人之友』の愛読者の集まりで、日本中でよい社会を作るための活動をしています。今回も日本各地の友の家が快く会場を提供してくださっていました。

大きな自由学園の家族として、新入生の皆さんを応援したいと思う卒業生や保護者、友の会の会員の方々が日本中にいます。

また学校では保護者会の皆さんも、皆さんと皆さんのご家庭を温かくお迎えするために何ができるかと心を配ってくださっている家族です。今日からは先生方も在校生も皆さんの新しい生活を励まし支えてくれることでしょう。

皆さんは、私たちの新しい家族であり、私たちの兄弟姉妹です。力を合わせてこの困難な状況に向き合い、自由に、創造的に、愛を持ってご一緒に充実した学校生活を創っていきましょう。よりよい学校を、よりよい社会を創っていきましょう。ご入学おめでとうございます。

2020年4月11日 高橋和也(自由学園学園長)

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