第84回 「いのちと性の学び」の3年間/学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

第84回 「いのちと性の学び」の3年間/学園長ブログ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

学園長ブログ

第84回 「いのちと性の学び」の3年間

2021年3月16日

自由学園での性に関する授業は、これまで中高では保健体育の授業の中で保健体育教員や養護教諭が行い、これに加え各部で特別講義として講師を招き、性の多様性、性被害・加害などについて学ぶ機会を設けてきました。しかし幼稚園児から最高学部生に至るまでの一貫教育のつながりの中でのカリキュラムとしては計画されておらず、人間教育の土台になるような包括的ないのちと性の学びが必要であると考えていました。

そんな中、2018年2月、保護者の方からの提案でアフタースクールのプログラムとして麻の実助産所の土屋麻由美さんによる性教育の親子講座(3〜6年生対象)が開かれました。そしてこの講座に参加していた保護者で卒業生でもある助産師の齋藤綾乃さんから、土屋さんの学内での授業実現にむけて、初等部の佐藤有子部長と養護教諭に相談と提案がされ、このことが学内でのいのちの学びのきっかけとなりました。

土屋さんは妊娠に関わる困難や葛藤を受け付ける相談窓口「特定活動非営利法人ピッコラーレ」(旧「にんしんSOS東京」)の相談支援員もしておられ、若年層の妊娠・出産、性被害などの問題についても取り組んでおり、各方面での講演経験も豊富な方です。

そして翌2018年度、初等部4年生、6年生を対象に「私たちの大切なからだ」のテーマで、土屋さんに授業をしていただく運びとなりました。授業は対話形式で行われ、生徒たちが自分たちの意見や疑問をもとに考えるグループワークも取り入れ、保護者の方にも公開しました。

私も授業に参加しましたが、初等部4年生の授業でのことは忘れられないものとなりました。

土屋さんはまず男の子と女の子の裸の絵を見せながら、「男の子のおしっこはどこからでるのかな?うんちは?では女の子は?」と子どもたちと確認。ワイワイ騒ぎながら子どもたちは答えていました。

続けて土屋さんは女の子の絵を示しながら「男の人の体にはおちんちんとおしりの穴があるよね。女の人にはお尻の穴とおしっこをするところのあいだにもう一つ、赤ちゃんのときから男の子にはない穴があるんだよ。それはね、子どもが生まれてくる命が通るところだよ」と説明しました。

すると目の前で聞いていた男の子が間髪挟まず心底驚いた様子で、「えー!女子すげー」と感嘆の声を上げたのです。本心からのリスペクトといった様子でした。

土屋さんは続いて「みんなは男の人、女の人って体の違いで決まっているって思っているかな。でもね、体は男の人なのに自分は心では女の人だと思っている人もいるよ。それはおかしいことではないんだよ」と性自認の多様性を説明。すると子どもたちの中から「それじゃあトイレはどっちに行くの。困るよね」という応答。私はこれにも感心しました。この率直で素晴らしい反応に、私は性を正しく伝えることがどれほど大切で必要なことであるかを確信しました。

2019年5月には、土屋さんと齋藤さんを包括的な性教育のアドバイザーにお迎えし、全学的な取り組みとして「いのちの学び」が始まり、初等部に加え、最高学部、男子部、女子部での授業が実施されました。また教職員対象として『0歳から始まるオランダの性教育』の著者リヒテルズ直子さんによる研修会を行い、市民教育の土台としての性教育の意義について学びました。

2020年度は通学可能となった2学期以降、初等部から最高学部まで、そして初めて幼児生活団幼稚園の5、6歳組の園児を対象としたお話しも行われ、一貫教育を通じた各段階での取り組みとなりました。

初等部5年生の授業は、性自認の多様性に加え、性的指向も多様であるというお話から始まり、続いて、月経(生理)と精通について。男子は精子を作り子宮に送り届ける仕組み、女子は卵子を成長させて、精子と受精することで子宮で子どもを育てる仕組みを持っていると説明。受精が起こらないと生理があるというお話しのときには、「男の子だったらパンツに突然血がついていたらどうする。ギャーどこから出たーってびっくりするよね。お尻が切れたって思うかなあ」との一言に子どもたちは爆笑。続けて「女の子もはじめはびっくりするんだよ」という説明に納得の様子でした。

さらに子宮の中に精子を届けるためにおちんちんが固くなることが必要なこと、固くなると精子を出すことができることについて、自然なこととして説明がありました。後半は、性暴力やトラブルを題材とするロールプレイを行い、意見の共有もしました。

幼児生活団では子どもたちの学びの前に、保護者対象の『親子で話す性と生の話 ~生まれてきてくれてありがとう~』と題する講座を行いました。土屋さんの具体的でわかりやすい内容は、多くの保護者の方からの感動と賛同の言葉をいただきました。

2020年8月、折よく国連教育科学文化機関(ユネスコ)が世界標準の「包括的性教育」のガイドとして作成した改訂版『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』の日本語翻訳版が出版されました。自由学園もこれを参考に授業計画を作成しています。

また2020度、最高学部においては校医の森清先生により、いのちの終焉について学ぶ「生命の看取り」の講義も行われました。

自由学園の「いのちと性の学び」は、心身の成長にふさわしく、性に関する知識を正しく学び、ありのままの自分と他者を大切に思う心、自分を守り自己決定する力が育っていくことを目指すものです。このような意味で「いのちと性の学び」は、人間の尊厳を大切にすることを学ぶ人権教育あり、また多様な他者と共に生きることを学ぶ共生教育です。4歳から22歳までの一貫教育の取り組みとして、今後さらによい内容に充実させていきたいと思います。

今年度も土屋麻由美さん、サポーターの助産師の齋藤綾乃さん、波間舞さんには大変お世話になりました。ありがとうございました。

2021年3月16日 高橋和也(自由学園学園長)

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