第80回 今夜、星空に「きぼう」を見よう/学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

第80回 今夜、星空に「きぼう」を見よう/学園長ブログ - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

学園長ブログ

第80回 今夜、星空に「きぼう」を見よう

2020年8月5日

「コロナによる自粛生活は宇宙船の中の生活に似ている。これはまるで宇宙飛行士になるための練習とも思える。子どもたちが我慢だけではなく、わくわくする感覚が持てるとうれしい。いつもと違う視点を持ち、子どもたちの好奇心を刺激したい。」

最近「日本教育新聞」で宇宙飛行士の山崎直子さんのこのような趣旨の言葉に出会いました。今の不便な生活を、宇宙飛行士の訓練と考える、そしてこのような状況を視点を変える機会と捉える。ポジティブで面白い発想だなあと思いました。またご自身が2週間滞在した国際宇宙ステーション(ISS)での体験に触れつつ、ぜひ夜空を見上げ、子どもたちと肉眼でISSの実物を見てほしいと書かれていました。

7月31日、初等部の終業式で子どもたちに山崎さんの考えを紹介し、では宇宙飛行士になるための練習として、今どんな力がつくのだろうと投げかけました。また8月2日、3日、5日は東京でISSが見頃。是非見てみようと紹介しました。

うれしいことにさっそく今日、「2日も3日も見たよ。すごかった!」と感想を聞かせてくれる子どもがいました。私も3日夜、久しぶりに晴れた夜空を見上げ、雲の合間の星空を移動する国際宇宙ステーションISSを眺めました。ひときわ明るく輝きながら北西から北東へ、弧を描きながら移動する数分間。感動の天体ショーでした。

国際的な技術協力のもと、地球や宇宙の観測、宇宙を利用した実験などを行うISS。全長はサッカーのグラウンドほどもある大きなもので、地上400kmの上空を、秒速約7.7km、時速27700kmというものすごい速さで移動しているそうです。1秒で池袋から練馬まで進んでしまうというから驚きです。

ちょうどこの間、初の民間宇宙船Crew Dragonがミッションを終えISSから無事に帰還したとのニュースがありました。また9月には古川聡さん、来春4月には星出彰彦さんがCrew DragonでISSに向かうことが決まっており、目下訓練の真最中とのことです。星出さんは船長として長期滞在するとのことで、お2人の活躍が楽しみです。現在の搭乗員はアメリカ人飛行士クリストファー、ロシア人飛行士アナトーリとイヴァンの3名です。

光を放ち宇宙空間を移動している星のような物体が、世界各国の宇宙船モジュールからなる巨大な宇宙ステーションであり、3人の宇宙飛行士を乗せて秒速7.7kmで飛行していると思うと、人類のたどり着いた科学技術への驚きと共に、不思議な親近感もわき、何とも言えない感動を覚えました。

宇宙飛行士について語る山崎さんの言葉から、国語の授業で生徒たちと授業で読んできた1つの文章を思い出し、久しぶりに読み返してみました。龍村仁さんの「〝私〟から〝我々〟へ」(『地球〈ガイア〉のささやき』)です。

龍村さんは宇宙飛行士たちへのインタビューを通じて、宇宙飛行士たちが皆、宇宙で〝私〟という個の意識が取り払われるような共有体験をしていることに気付いたそうです。

アポロ9号の乗組員ラッセル・シュワイカートはこの体験を次のように表現しています。

「今、ここにいるのは、〝私〟であって〝私〟でなく、すべての生きとし生ける者としての〝我々〟なんだ。それも、今、この瞬間に、眼下に拡がる、青い地球に生きるすべての生命、過去に生きたすべての生命、そして、これから生まれてくるであろうすべての生命を含んだ〝我々〟なんだ。」

科学技術の進歩によって、全地球的な規模でネットワーク化されている私たちの生活。一方、〝私〟の「個体意識」は私たちの身体が触れることのできる狭い範囲に閉じ込められている。このズレが今様々な地球の危機を生み出しています。

しかし〝私〟たちの身体の記憶の中には〝我々〟という「地球意識」が眠っており、宇宙飛行士たちは、科学技術の進歩の最先端でこの意識を思い出し始めている。地球の危機を前に、今、私たちに、〝私〟から〝我々〟へという意識への変容が求められている。

このような内容です。今コロナの影響により身体的にはますます孤立・分断を余儀なくされる状況ですが、同時に私たちは地球規模で危機意識を共有する体験をしています。これを「地球意識」の目覚めのチャンスにしたいと思います。

今こそが、「21世紀最大の課題である『国家を超えた連帯』を実現させるチャンス。」

社会学者の大沢真幸さんは最近繰り返しこのように語っています。石炭の共同管理組織がEUを生み出したように、今後も続く感染症対策の組織を、世界の連帯組織の核とするという考えです。一国では解決できない課題に世界が直面する今がそのチャンスであり、「最終的な目標は、世界共和国」というスケールの大きな発想です。「2020年は世界共和国への最初の一歩が踏み出された年として記憶されなくてはなりません」と述べています。勇気づけられる言葉です。

「宇宙飛行士になるための練習」と言われるこのような閉塞的な状況の中に、〝私〟から〝我々〟へという意識が生まれることを願わずにはいられません。まずは子どもたちの中にあるわくわくや喜び、希望を共にすることから始めたいと思います。

今日8月5日は、九州から関東にかけて広範囲で国際宇宙ステーションISSをよく見ることができる日です。今夜、ご一緒に星空に「ISSきぼう」を見ましょう。流れ星ではありませんが、世界中の人々の平和、幸せを祈りつつ。医療現場をはじめコロナと戦ってくださる方々や私たちの日常を支えてくださっている方々への感謝を込めて。「きぼう」はISSの日本の実験棟につけられた名前です。所要時間5分の宇宙旅行です。

各地で目視できるISSの飛行経路や時間は異なりますが、宇宙航空研究開発機構JAXAのホームページ『「きぼう」を見よう』で確認することができます。kibo.tksc.jaxa.jp/sp/#page2

東京では「19時46分00秒、方位角298度(西北西)、仰角13度」という低い位置から見え始めて、最も見やすく天頂に一番近づくのが、「19時49分00秒、方位角215度(南西)、仰角45度」。そして「19時50分30秒、方位角165度(南南東)、仰角23度」で見えなくなるという情報です。見え始めは水平線近くの建物などで見えないことが予想されますが、45度となるとかなりの確率で見ることができます。iPhoneなどのコンパスを使い、「方位角215度(南西)」の方向を向き、「仰角45度」を見上げてみましょう。

好天を祈りつつ。

2020年8月5日 高橋和也(自由学園学園長)

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