10月の「みんなの日」は、秋晴れの良い天気の下、24日午前9時半から自由学園記念講堂で開かれた。
発熱の有無の確認、ソーシャルディタンスをとった着席など、いつもながら細心のコロナ対策がとられ、98人の出席者はお互いに笑顔で挨拶を交わしたあと、開会となった。
いつものように賛美歌を聴いた後、「忘れられない人々」は、一期生の和田美恵子さん。二期生で、LA在学中に亡くなった種田佳枝(70)さんを偲ぶスピーチとなった。
自由活動のひとつだった「花鳥の会」で一緒になり、その優しい人柄に惹きつけられたとしんみり語った。LA学生が「忘れられない人々」に登場したのは、これが初めて。
教養講座は、國學院大學名誉教授の長谷川政春氏による「日本における芸術の発生」。長谷川氏は古典文学と折口信夫氏の研究が専門。折口氏は日本全国を歩き回ったフィールドワークに裏付けられた民俗学を打ち立てた巨人である。釈迢空(しゃく ちょうくう)と号した歌人でもあり、昭和二十三年、最初に自由学園を訪問して以来、数回、キャンパスを訪れ、学園を詠った詩も残している。
長谷川氏は、「折口信夫全集」(全40巻)刊行の中心的な役割も果たした関係から、折口氏の足跡に沿い、日本で芸術・芸能がどのような土壌から生まれたかを丁寧に語った。
その土壌は、全国各地で執り行われてきた神事にあるとし、さまざまな神々を招き送り出す、神がかりの人間の唄や踊りを普通の正気の人間が真似し、変形し、ときには逆のことをやることによって、芸術・芸能が発生したと語った。折口氏の言葉を借りるなら、「神事は堕落することによって、芸能となり、解放された」のである。
長谷川氏のお話の後、「LA賛歌」を聞き、次回午後はLA協力委員会主催の『AED(心臓が正常に動かなくなった場合の応急処置装置)講習』があるとのお知らせが、小西昌雄委員長からあった。
教養講座修了後は、2班に分かれ、昼食を兼ねた家族会議がさまざまな場所に分れて和気藹々の会話が交わされる一方、キャンパスツアーで秋の学園内を見学する班と交互に行われた後、来月の「みんなの日」を楽しみにキャンパスを後にした。(市岡揚一郎)