「自由学園100人の卒業生+」プロジェクトによせて

「自由学園100人の卒業生+」
プロジェクトによせて

学園長 高橋 和也

自分は何のために世に来たったか
自分のなすべきことは何であるか

羽仁吉一(自由学園創立者)

 

 自由学園は、2021年に創立100周年を迎えます。その100周年に向けたプロジェクトの一つとして、「自由学園100人の卒業生+」シリーズが動き始めました。

 

 独自の人間教育に取り組む自由学園の教育の価値が、一体どのような実を結んでいるのか。卒業生の生き方を通じて確認し、学園内外で広く共有することを目指したもので、私自身もインタビューに加わり、最初の10人の卒業生の話を聞き終えたところです。

 

 今回の10人の平均年齢は35歳。在学中に私が担任をした人も含めて声をかけ、インタビューに応じていただきました。

 

 中学高校時代に関わらせてもらった「生徒たち」にこのような形で再会できたことは、本当に懐かしく、うれしいことでした。当時はわからなかった新しい発見もありました。

 

 何より印象的だったのは、一人ひとりがそれぞれ心の軸ともいうべき信念を持っていたこと。それぞれの仕事を通じて、日々自分自身を磨き続けているということでした。

 

「自分は何のために世に来たったか、自分のなすべきことは何であるか、天は小さき自分の存在を保証するために何を自分に求めているかと考えることが、すなわち品性修養の基礎となる」
(羽仁吉一『品性とは何ぞや』)

 

 これは、人間教育の目指すところを示した創立者、羽仁吉一先生の言葉です。

 

 私たちは神様によって、地球上にたった一人しかいない存在として創られたかけがえのない存在です。すべての人にその人だけの個性、その人にしか果たせない使命が与えられています。

 

 自分が何を大切にして生きていきたいのか、どうやって自分を活かしていけばよいのか。この答えを得る方法は、一人ひとり異なっており、そこにマニュアルや教科書はありません。他の人の真似をするわけにもいきません。毎日の生活の中で、自分自身の課題や関心に精いっぱい向き合い、試行錯誤しつつ心の声に耳を傾けながら、次第に明らかにされていくものだと思います。

 

 このような意味で自由学園は、4歳から22歳までの一貫教育を通じて幼児、児童、生徒、学生たちが、さまざまな経験によって自分自身を知り、自分自身を磨く場として創られた学校ということができます。そしてその学びは、生涯を通じて続く探究の入口であると、インタビューを通じて感じています。

 

 自由学園は小さなスケールによる手づくりの教育を大切にしていますが、卒業生の活躍の場は非常に多様です。また、既成の枠にとらわれず、自分らしく創造的に生きる道を選択していく人も多いのではないかと思います。この企画を通じてそのような「独自性」「多様性」「創造性」も伝えていきたいと思っています。