この世のただ中でキリストに従って生きる

この世のただ中で
キリストに従って生きる

三浦 ふみ
Fumi MIURA

援助修道会シスター

女子部 79 回生

2021年1月28日談:オンライン

フランス・セルジーのEglise Sainte Marie des Peuples(人々の聖マリア教会)にて。(写真:本人提供)

いただいた命を十全にお返ししたい

 現在、パリから北西に電車で1時間ほどのセルジーという町で、援助修道会のシスターとして暮らしています。援助修道会の正式名称は「煉獄援助修道会」。教会は地上も天上もひとつ。煉獄は亡くなった後、神と出会うために通る過程と考えられています。苦しみの教会とも言われ、和解できないことに苦しんだり、罪からの清めを求めていたりする。その魂に寄り添い、地上での奉仕を通して助けたいと、フランスで1856年に創立されました。

 

日本に援助修道会のシスターが来たのは、1935年。戦争に突入していく大変な時代でしたが、広島イエズス会の司教から「ぜひ来てくれないか」との呼びかけに応えて来日。そして、シスターたちは被ばくしました。男子修道会のイエズス会とは今も様々な分野で共に活動しています。

 

私は高等科1年の夏に、カトリック教会で洗礼を受けました。その後ずっと、自分はどのように生きていきたいかを考えてきました。同時に、いただいた命を十全にお返ししたいという望みもありました。学部2年卒業後、予備校に通って信州大学理学部へ。本当は医学部に行きたかったけれど叶わず、生物を学びました。その後大学院に進学し、修士課程で自由学園の非常勤講師に。専任教師として働かせてもらいました。

 

大学時代から教会の黙想会に参加し、祈りながら自分の道を尋ねていくようになりました。そこで、「人間が創造されたのは神を賛美し、敬い、奉仕するため。魂を救うためである」という聖イグナチオ・デ・ロヨラの言葉に出合います。全ての人が創造された目的に達するよう、自分自身を余すところなく差し出したい。そう思った時、迷わず修道会の扉をノックしていました。

2018年の終生誓願式。カトリック麹町・聖イグナチオ教会で行われた。(写真:本人提供)

忘れられた人はどこにいるのか

 修道会は、共同体で生活します。志願期が2年、修練期が2年あり、私が初誓願をしたのは2011年でした。その後は修道会のミッションを受け、各地に派遣されます。使徒職ともいいますが、学校で働くシスターや病院で働くシスターなど、さまざまな使徒職があり、その役目はすべて神と人とを繋ぐことにあります。

 

共同体生活もミッションのひとつ。この地上で、自分が選んだ人ではない姉妹同士、イエス・キリストの愛によって修道会に呼ばれ、共に生きていく。それが神の国の希望の印となるからです。

 

私は最初、市ヶ谷の共同体で3年、その後フランスに2年、日本に戻って再びフランスへ派遣され3年目になります。今はイエズス会のパリ大学神学部博士課程で神学を学びながら、文献を読んだり、オンラインセミナーを受けたり、共同体での掃除や食事作りをする日々です。今の共同体は7人で、食事はいつも7人一緒。祈る時間を大切にしていますが、早起きに関しては学園の寮生活のほうが厳しいかもしれません(笑)。

 

この10年間、さまざまなことをしてきました。日本では、牛久の入国管理センターで、不法滞在で収容された人たちの傾聴。この経験は強く心に残っています。また、青年たちの黙想会の企画や祈りの同伴。フランス・リヨンの共同体では、切迫した状況にある難民の女性を受け入れ一緒に暮らしました。いつでも神様の呼びかけに応えられるように。今どこで何が必要とされているのか、今もっとも忘れられている人はどこにいるのか、注意深くありたいと思います。

フランスの青年との日本巡礼。広島のカトリック三篠教会で。(写真:本人提供)

キリストが私たちを自由にする

 2017年の夏には、フランスのシスターと企画して、フランス人青年15人と日本巡礼をしました。日本のキリスト者の歴史と今を発見する2週間のプログラムで、長崎、広島、東京をめぐる旅です。彼らにとって日本は未知の国。カルチャーショックもあったでしょうが、各地で温かい歓迎を受けました。人は受け入れられた経験を通して、受け入れる者へと変わっていく。私自身もオーガナイザーとして、人にゆだねる経験ができました。

 

私の信仰は、カトリック信者だった母の影響が大きいです。母は私が修道会に入ることを喜んで受け入れてくれましたが、父に決心を伝えるのは勇気が必要でした。父は「社会から自分を切り離すためでないのなら」と言いました。社会を否定し出家するイメージがあったようです。でも、「修道生活はこの世のただ中で、キリストに従って生きることなのよ」と話すと「それなら応援する」と言ってくれました。その父も6年前に洗礼を受け、今は家族全員がクリスチャンです。

 

自由学園では毎朝礼拝があり、寮でも聖書にふれたことが、自分をつくってくれたと思います。在学中はできることに精一杯取り組みましたが、一方で自分が望んでも叶えられない経験があり、現実を受け入れ、神さまの計画の内に希望を置くことを学びました。

 

自由学園の自由は、聖書の「真理はあなた方を自由にする」から来ていますが、今はっきり思うのは、キリストが私たちを自由にするということ。この社会の中で、家庭の中で、学校の中で、ありのままの自分が神の前で祈り、一つ一つ決断していく。それが自由なのだと思います。

「いつでも神様の呼びかけに応えられるように」(写真:本人提供)

三浦 ふみ(みうら ふみ)

自由学園女子部卒業後、信州大学理学部生物学科卒業。東京大学理学研究科生物学専攻修了。上智大学神学部卒業。自由学園女子部で専任教師を務めた後、2011年煉獄援助修道会初誓願。18年終生誓願宣立。現在はフランスに派遣中。パリのイエズス会大学(Centre Sèvres - Paris. Facultés jésuites)神学研究科で神学を専攻しつつ、青年司牧などに関わる。