ムラサキケマンの花言葉は「あなたの助けになる」です。
熊本地方を中心とした大地震の報道でこの花を思い出しました。
ケマンには、華鬘と云う字を当てます。日本でも、タンポポの花などを編み首にかけたりしますが、インドでは生け花を編んで大きな花輪にし、仏像の首や腕に掛けるそうです。仏堂などにきらびやかに飾った金属で出来たものも含めて華鬘と言い習わしています。野草のムラサキケマンは、華鬘のかたちをした紫色の野草です。
4月から6月ころまで、山野によく咲いています。
「自由学園でもよく見かけますよ」と先生が一塊りに咲いているところを教えてくれました。
枯れたような茶色っぽい葉を地面に平らに広げて冬を越すそうです。その葉を私は意識したことはありません。きっと何気なしに踏みつけていたに違いありません。
春になると、勢いよく30センチほどに成長します。茎は太くやわらかです。ちょっと強い雨が降ると茎はすぐに倒れます。それでも又太陽がさしはじめるとすぐに元にもどる性格だそうです。
幼い時から、私はよく「お調子者!」と呼ばれました。この花の性格を知った時自分に似ているような気がして、ムラサキケマンのことを気にかける様になりました。
紫ではなく黄色のケマンもあります。キケマンと呼ばれるのは、西日本中心のもので、ミヤマキケマンと呼ばれるのが、東日本中心のものです。ミヤマと付けられていますが、山奥ではなく、崖の土の崩れているようなところに咲いています。瓦礫のようなゴミ捨て場のようなところでも大きくなります。
東日本大震災の後、テレビ画面に最初に映った花はこの花だったように思います。一本では弱い花ですが、仲間がいると立ち上がる花です。熊本の町中で、ムラサキケマンはもう季節が終わっているかもしれません。阿蘇の山ろくではまだ咲いているでしょう。自由学園のムラサキケマンは少し枯れ始めましたが、小さなかわいい芽をつけています。
今日本中のムラサキケマンは叫んでいます。
2016年4月20日 渡辺憲司 (自由学園最高学部長)