第71回 「ふるあめりかに袖はぬらさじ」/最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

第71回 「ふるあめりかに袖はぬらさじ」/最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」

第71回 「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

7月7日から8月6日まで、明治座で有吉佐和子原作の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」が上演されます。 主演は大地真央、監督は宝塚歌劇団気鋭の演出家原田諒です。

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は、幕末に開港した横浜の遊郭「岩亀楼」を舞台に展開される遊女の物語です。尊王攘夷派と開国派がしのぎを削る日々、アメリカ人の客イルウスの身請けに応じず、自殺した亀遊は、攘夷派の人々から又瓦版などで彼女が作ったとされる辞世の歌「露をだにいとふ倭(やまと)の女郎花(おみなえし)ふるあめりかに袖はぬらさじ」が評判になり、攘夷思想の中でもてはやされます。
異国人に肌を許さぬ「大和なでしこ」の典型だという評判です。
まさに印象操作とも云うべきです。無筆だった亀遊、病の中にあった亀遊、通訳として羽ばたこうとする恋人との別れが彼女の決断を促していたのです。異人を嫌ったのではありません。
「愛国遊女」捏造に手を貸す芸者お園の苦悩を置き去りにしながら、真実は時代に翻弄され歪められていきます。
杉村春子における新劇公演、水谷八重子主演の新派、又歌舞伎では坂東玉三郎が好演して評判になりました。今回は、音楽劇の要素を盛り込んだ大地真央の主演です。

7月15日の土曜日には、渡辺が15時45分から1時間ほど劇場内の食堂で、講座をもうけます。観劇は17時から。
「横浜の遊郭について学ぶ講座つき観劇プラン」「作品の舞台となる歴者文化背景を学んでから観劇してみませんか」といううたい文句です。

作品の舞台となった港崎遊郭は、安政6年(1859年)に開業しました。現在の横浜スタジアムのある横浜公園にありました。今、公園には、遊郭の中心となった岩亀楼の記念の灯篭があります。遊女たちが病に倒れた時に静養する寮があった縁で西区の戸部には「岩亀横丁」もあります。
「港崎遊郭」や「岩亀楼」については、横浜地方史研究で語りつくされた感がありますが、少し異なった視点から、横浜遊郭の歴史を見てみたいと思っています。

中心にするテキストは、デンマークの若き海軍士官エドゥアルド・スエンソンが見た『江戸幕末滞在記』(講談社学術文庫)です。
スエンソンは、1842年デンマークで生まれました。フランス海軍に入り、フランス人居留民保護のために1866年(慶応2年)駐留したのです。亀遊が自殺をした3年後です。この時、スエンソンは、24歳でした。訳者の長島要一氏によれば「フランス文化のプリズムを通して異文化の国日本に接した記録」です。その記録の中に岩亀楼が描かれています。
又、箱館の幕末のらしゃめん遊女「お玉」のこと(拙著『江戸遊女紀聞-売女とは呼ばせない』ゆまに書房・2013年で紹介。)などと比較しながら、遊女と攘夷思想又明治初期の国際結婚などにも触れてみたいと思っています。
愛は国境を越えます。
人を愛することは国を愛することよりはるかに気高いことです。

明治座チケットセンター(03-3666-6666)で受け付けています。
電話のはじめに「自由学園の学生です」と云っていただければ、13000円のS席が講座と観劇セットで9000円になります。
45歳以上の自由学園リビングアカデミーの受講生も、もちろん自由学園の学生です。

 

2017年6月26日 渡辺憲司(自由学園最高学部長)

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