日本文学研究者の関根英二先生をお招きして―自由学園明日館特別講演「海外から日本現代文学を問う」/教養・専門 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

日本文学研究者の関根英二先生をお招きして―自由学園明日館特別講演「海外から日本現代文学を問う」/教養・専門 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

教養・専門

日本文学研究者の関根英二先生をお招きして―自由学園明日館特別講演「海外から日本現代文学を問う」

2019年2月15日

アメリカ・インディアナ州のパデュー大学(Purdue University)教授の関根英二先生(ご専門は日本文学・文学理論)の講演が、2月13日(水)18時30分より池袋・明日館講堂で行われた(一般公開)。講演の主題は、「カズオ・イシグロと村上春樹―人生の検証・その現在」。カズオ・イシグロ氏(1954-)は、長崎県にルーツをもつイギリスの作家として活躍、1989年にイギリス文学賞の権威ある「ブッカー賞(Booker Prize)」を、2017年にはノーベル文学賞を受賞されたことは記憶に新しい。村上春樹氏(1949-)は、国内では誰もが知っているベストセラー作家の一人であり、いまやその作品の多くが英語、スペイン語、フランス語などの各国の言語で読まれ世界的なムーブメントとなっている。講演では、二人の作家の主要な作品のあらまし、作品中に登場する人物の生い立ちや人間関係などを紹介しながら、イシグロ氏と村上氏がそれぞれ問い続けている「人生」の本質を、関根先生独自の視点で丁寧に解説された。

日本文学研究者の関根英二先生をお招きして―自由学園明日館特別講演「海外から日本現代文学を問う」

講演会の様子

日本文学研究者の関根英二先生をお招きして―自由学園明日館特別講演「海外から日本現代文学を問う」

関根英二先生

日本文学研究者の関根英二先生をお招きして―自由学園明日館特別講演「海外から日本現代文学を問う」

会場の様子

講演参加者の中には、イシグロ氏と村上氏の作品をすでに読まれた方だけでなく、これから読もうと思われている方や関心をお持ちの方もおられたであろう。関根先生の明快な分析と、それでいて誰にでもわかりやすく語られるその言葉を道標(みちしるべ)に、事前の予備知識の有無にかかわらず、参加者の多くは、二人の作家が、文学者として、否、一人の生身の人間として繰り返し問うてきた問題が何であったのかを、深く感じ取ることができたのではないかと思われる。

講演終盤に司会を務めた渡辺最高学部長は、「今後もし“平成の文学”を語るような時代が来るとき、川端康成や三島由紀夫などに代表される「昭和の文学」の世界とは異なる新しい世界がそこにあるとすれば、その代表に名を連ねるのは間違いなくイシグロ氏と村上氏であろう」とコメントした。「平成」の終焉を迎えようとしているいま、いずれ時が熟し私たち自身が生きた「平成」を問う瞬間に、私たちは何を考えるだろうか。関根先生のお話を通して感じ取ることのできた「人生」のリアリティは、その時に再び甦るかもしれない。多くの発見と問いを参加者の心の奥底に残しつつ、盛会のうちに講演会は終了した。

文・写真:田口玄一郎(学部教員)

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