「第2回共生共創フォーラム 元気に繋がる地域づくり」が開催されました/ライフデザイン - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

「第2回共生共創フォーラム 元気に繋がる地域づくり」が開催されました/ライフデザイン - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

ライフデザイン

「第2回共生共創フォーラム 元気に繋がる地域づくり」が開催されました

2024年10月4日

10月1日(火)10時40分~12時20分に、最高学部棟中教室で共生共創プログラムイベントとして「第2回共生共創フォーラム 元気に繋がる地域づくり」が開催され、最高学部学生のほか、オンラインで14名の方が参加されました。
今回は、講師として矢田明子さん(株式会社CNC代表取締役)、今村智之さん(株式会社まめーず代表取締役・最高学部2022年卒)、荒昌史さん(株式会社HITOTOWA代表取締役)をお迎えしました。

矢田明子さん(株式会社CNC代表取締役)のお話〈要約〉
「コミュニティの力で支え合う社会を」

私の父は出雲にある駅前の和菓子屋の16代目で、55歳の時に急激に痩せたことで検査をしたところ癌が全身に転移していて、そのまま入院し帰らぬこととなった。自営業を営む人の多くは、普段から定期的に健診を受けていない人が多く、気が付いた時には手遅れということが多くある。
17年前に突然父を失ったこの苦い経験から、もっと周囲がよい関わりができたはずと思い、その形を模索すべく30を過ぎて大学の看護学科で学びなおしを始めた。入学してすぐ、友人となった一回りも齢の離れた周りの学生に声をかけて、地域の人と関わるサークルを始めた。5月の連休に若い友人たちと共に町内を巡り、お年寄りに「健診行ってますか?」と声掛けを始めた。しかし突然声をかけられた人たちの反応はいまひとつで、「詐欺か宗教勧誘か」、「ちょっとウザい」などと言われる始末。そこで、自分たちの“問題解決をしようという立ち方”が間違っており、相手の立場から見ることの大切さに気づかされた。そして、「毎日の嬉しいや楽しい」、「心と身体の健康と安心」のある元気な地域を作る助けとなる役割を果たす「コミュニティナース」のコンセプトが作られていった。
理想には共感してくれ、共にアクションを起こしてきた友人たちであったが、卒業後は、経済的に自信が持てないということで諦めて活動を継続できなかった。私にとって、持続できる組織の立ち上げという次の課題が生まれた。
創りたい未来の景色が私の動機。その夢を共有できる人が、諦めない仕組みを作ろうと思い、会社を立ち上げることにした。
そしてCNC(コミュニティナース・カンパニー)を立ち上げ、看護師の資格の有無に関わらずなれるコミュニティナースの育成に取り組んだ。すでに約1300人の人たち(平均年齢29歳くらい)が研修を受けて全国で活動をしている。大学時代の友達の何人かも戻ってきて活動をしている。看護師の資格を持っていなくても、医療の知識のある専門家につなげることで、十分に必要な役割を果たすことができる。
今、大学でも私の在学中にはなかったコミュニティナースの学びが看護学科にも採り入れられており、私が書いた『地域・在宅看護の実践』がそのコースのテキストになっている。フロントランナーとして挑戦を続け、社会は変わるということを実感している。
コミュニティナースが大切にしたいカルチャーは、どの土地もそこに住んでいる人たちが地域をよりよくしていく力を持っており、そこに住む人がオーナーシップを持って、コミュニティの力で相互に支え合う社会をつくり上げていくこと。誰かが誰かを助ける仕組み、みんなで喜んで助け助けられる繋がりづくりを目指している。そのためにも日々の取り組み、日々の信頼を大切にしたい。
振り返ってみると、父のことがきっかけになって、身近なテーマから取り組みはじめたことが今は、日本全体の課題につながっている。
皆さんにお伝えしたいことは、深めていけるテーマを見つけてほしいということ。学生時代に自ら学んだことがライフワークになることもある。とはいえ誰もが情熱を傾けられるテーマを見つけられるとは限らない。そういうときには周りの誰かがやっている面白そうなことに繋がってみるのもいい。ちょっと面白そうだと思ったら、動いて体で体験すること。一歩踏み出すことを存分にしてほしい。

今村智之さん(株式会社まめーず代表取締役・最高学部2022年卒)のお話〈要約〉
「身近な人になること」

2022年4月にCNC入社。北海道十勝更別村での2年間の経験を経て独立法人化した。心がけてきたことはまず村民の身近な人になること。この人なら話したいと思われる人になること。それがいつか村の健康向上につながる。CNCの「その土地にいる人たちの力でできること、仲間同士で対処していけることが大切」という方針に基づいて活動している。地域の人たちの身近な存在として認めてもらうために、はじめは温泉のロビーで待ち構えて話しかけたりした。親しくなった方が輪を広げてくれて、1年目に3000人の村民の中の約700人に会い話をすることができた。また地域の社会福祉協議会の方、保健師さんとも関係を築いて、行政からも私たちの活動が評価していただけるようになった。今では村内の人たちの9割以上の人たちに知っていただける活動になっている。
今思うことは、暮らしの中に学び、発見があるということ。学生の皆さんも学校生活だけでなくバイトなどの日常の生活のなかでも、目線を変えて意識を広げ、さまざまなことを感じながら生活するとよいのではないか。

荒 昌史さん(株式会社HITOTOWA代表取締役)のお話〈要約〉
「“ふるさと”をつくり、守る」

2013年ひばりが丘団地の再生計画に関わったことがきっかけで、魅力の詰まったここ学園町に住居を構え、学園町自治会運営委員、東久留米市地域産業推進協議会委員になり、未来を語り合う仲間に恵まれている。
現在、「ネイバーフッドデザイン」として、ハード面だけでなく、人と人のつながり、それぞれの人たちの生き方ややりがいを含めた取り組みを行っている。近所の人たちと関係を築く中でトラブルはつきものであるが、だからこそデザインが必要になる。徒歩15分圏内の関係構築を目指し、お互いの距離感に配慮しつつ「しなければという設計ではなく、~したいという設計」に心がけている。そしていざというときに助け合える地域づくりを目指している。
これまで、赤羽台団地のコミュニティ拠点「Hintmation(ヒントメーション)」、武蔵浦和駅直結のマンションの地域交流拠点「マチノバ」、洋光台の地域コミュニティの形成と街に賑わいを創出する場としてUR都市機構が提供する「まちまど」などの立ち上げを行ってきた。「一つとして同じ町がない・一つとして同じ人はいない」のであり、それぞれの町ごとに大切なことをくみ取ってつくることを心掛けている。
私の原風景は熊本での子供時代のこと。夕方になると見知らぬ大人から「早く帰りなさい」と声を掛けられていた。今思うとそこには関わり合いがあった。
2000年20歳の時に、49歳の父が肺癌であっという間に亡くなった。父の葬儀に1000人の人がきた。仕事で多くの人とのつながりを作った父の生き方を認識する機会となった。そして自分自身初めて本気で、仕事について考えた。
人生を変えようと思い、仲間たちと地球環境を大切にし保全活動を行うNPO法人Good Dayを立ち上げ、12年間活動した。障がい者施設で苗を育ててもらって森づくりをする植樹イベントなどにも取り組んだ。数年前にその地を訪れるとそこは森になっており感慨深かった。
その後不動産会社に就職し、30歳で独立。HITOTOWAを立ち上げた。HITOTOWAは「人と和」。ところが3か月後に東日本大震災が起こる。この活動の中で、被災した方々から自分自身が支えられ、励まされる経験をした。東北の復興支援での関わりの中で「人は一人では生きていけない」という人生の真理を確信した。そこからHITOTOWAのビジョン・ミッションも生まれてきた。
自分と学園町との繋がりは「ひばりテラス118」。たった一人の会社に声がかかり、ひばりが丘団地のコミュニティセンターの立ち上げに関わることになった。最近は住民主導でいろいろなイベントも企画され、自分も一市民としてこの活動に参加している。
緑豊かな学園町は自由学園が作った町。ただ街をつくるだけでなく、学校の思想が街に広がっている貴重な実例。庭や緑があることで住民の繋がりが生まれることがある。そこにふるさとが生まれる。居場所づくりはふるさとづくりという思いを持って、この価値継承に力を尽くしたい。失われつつあるふるさとを守り、東京郊外を森に戻すような住まいづくり(グリーンデベロップメント)を目指したい。

お話をされる矢田明子さん
お話をされる荒 昌史さん
左から矢田明子さん、今村智之さん、荒 昌史さん

文・写真:鈴木康平(最高学部)

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