木々の記憶を刻む/近況(全学年) - 自由学園 初等部(小学校)/東京の私立小学校

木々の記憶を刻む/近況(全学年) - 東京の私立小学校【自由学園 初等部】 - 人間の土台を創る一貫教育

近況(全学年)

木々の記憶を刻む

2021年6月14日

6年生は4月半ばから5月下旬にかけて美術の授業で樹木を描きました。樹木と書きましたが、正確には、つい最近まで生きていた木、つまり切り落とされた枝や幹です。

これらは初等部のグランド奥の「グリーンベルト」と呼ばれ親しまれている樹木を剪定した際に出たものです。グリーンベルトにはさまざまな種類の樹木が繁っていましたが、諸事情によりこの4月、かなり大々的な剪定が行われました。その結果、新緑の季節にもかかわらず、向かいの住宅街が見通せるほどさっぱりとした風景になってしまいました。

授業では、まず、この剪定作業の際に出た幹や枝をひとり一つ選んでもらうことにしました。枝の形から、木の種類から、木肌の感触から、あるいは直感で……。時間をかけて選んだあと、みんなで協力して体育館前の広場に運び、スケッチをしました。併せてその木の第一印象、感じたこと、グリーンベルトの思い出などを可能な範囲で言葉にしてもらいました。そして、スケッチとその言葉を手がかりに、大きな黄ボール紙にコンテのみで描いたのが「木々の記憶を刻む」の絵です。

スケッチの際に記述してもらった言葉を読むと、このグリーンベルトの木々が子どもたちにとっていかに大きな存在であったか気付かされます。

木登りをした、秘密基地をつくった、ナイショの話をする場所、虫がいて苦手な場所…

1年生から6年生になるまで毎日見続け、共に過ごしてきたグリーンベルトの木々は、彼ら彼女らが卒業した来年度には新しい枝葉が伸び、元の緑を取り戻し始めることでしょう。もしかしたら6年生にとっては木を描きながら少し寂しく感じたかもしれません。

この授業の目的は、グリーンベルトで何十年と生きてきた木々の“枝”や“幹”を描くことを通して、ここで過ごした時間、思い出、経験を刻むことです。

描き終わったあと、題を考える授業を設けましたが、時間をかけて木と対話を重ね描いたからこそ生まれた素敵な言葉がたくさんありました。

明日、6年生が担当する6月のお誕生日会で装飾として使われた後、題のついた作品を食堂で展示する予定です。

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