第2回 アレクシェービッチ浮上/前最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

第2回 アレクシェービッチ浮上/前最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

前最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」

第2回 アレクシェービッチ浮上

2015年10月9日

村上春樹氏残念。と思っていたら、突然受賞者、スペトラーナ・アレクシェービッチ氏の名前が眼前に。原発事故の時読み返そうと思った「チェルノブイリの祈り」。乱雑を極める書斎を整理しても見つかりません。アマゾンでは到着が二週間後以降ということで、家内が本屋に駆けこみましたが、、、、。

整理の最中、『明治大正露文化受用史―二葉亭四迷・相馬黒光を中心に』(小林実著 春風社)で、触れていた記憶がよみあがりました。著者小林氏は、今年7月に刊行した『標準問題精講 国語特別授業 読んでおきたいとっておきの名作25』(旺文社)共編者です。

『明治大正露文化受用史』は、西郷隆盛、ロシアでの生存風説の裏側に迫るなど、読ませる研究書(博士論文)です。その終章で、アレクシェービッチの『死に魅入られた人びと―ソ連崩壊と自殺者の記録』(2005年群像社)の言葉を引用しながら、著者は云います。

「たとえ国民に貧しさと恐怖をおしつけていた国家であっても、その下ではたしかにリアルな日常生活が営まれていたはずである。その国家を悪であると糾弾することも、あるいは逆に賛美することも、いまとなっては容易に可能である。しかし、そこで営まれていた日常生活のリアリティを保存することの困難さは、だれがひきうけるのであろう。<この思い出はだれにもわたさないわ。共産主義者にも、民主主義者にも>という言葉が、安易に歴史を語りたがる部外者を拒んでいる。」

アレクシェービッチのドキュメンタリーは、まさに日常のリアリティを、かけがえのない証言、命として残したものです。ロシアは隣国です。故郷の函館の少年時代、ロシア人のパン屋さんのアンパンが最高の御馳走でした。大学院の演習で、私のもとに最初にセントペテロブルグからやってきたイリーナメリニコバさん(現同志社大学教授・ロシア語で上田秋成を紹介しています。)の喜びの顔が浮かびます。

**********

10月10日土曜日は、自由学園第68回体操会。メインは園児から大学生までのデンマーク体操。緑の大芝生に青いバルトの風が跳躍します。
夕方から、実行委員長をつとめた「戦後70年企画「戦後池袋―ヤミ市から自由文化都市へ」の成果報告会。池袋西口公園の模擬ヤミ市・東京芸術劇場展示・明日館など活況、満杯でした。御礼申し上げます。
13日(12日から開催)は、名誉顧問をつとめる「江戸を生きる会」の10周年企画、「大江戸両国・伝統祭」が両国シティコアで開かれます。江戸の手妻(水芸)など、江戸の芸を堪能。

2015年10月9日 渡辺憲司(自由学園最高学部長)

カテゴリー

月別アーカイブ