水俣病公式確認から 70 年。「公害を語り継ぐ~対立を超え未来を創る~」/学部長ブログ - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

水俣病公式確認から 70 年。「公害を語り継ぐ~対立を超え未来を創る~」/学部長ブログ - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学部長ブログ

水俣病公式確認から 70 年。「公害を語り継ぐ~対立を超え未来を創る~」

2026年1月27日

今年は水俣病の公式確認から 70 年に当たる年です。1956年4月、水俣市月浦の幼い姉妹、田中静子さん(5歳)と実子さん(2歳)がチッソ付属病院に入院。5月1日、これまで見たことのない症状の原因不明の神経中枢疾患として水俣保健所に届け出られたのが公式確認の日とされています。しかし厚生省が、病気の原因を「チッソ水俣工場排水に含まれるメチル水銀」と特定する政府見解を示すのは1968年。確認から12年たってようやく水俣病は公害病と認定されました。物質的豊かさが実現されていった高度経済成長期に、これを支える企業は守られ日本各地で公害問題が広がっていきます。

昨年4月、水俣病小児性患者として困難な生涯を歩まれた実子さん(71歳)が、脳梗塞を発症し寝たきりの状態でご家族に支えられ生活する様子が地元のテレビで放送されました。「実子が自分より先に死んでくれれば、私もゆっくり死ねるのに。実子が死なないうちは死ぬことができない」という実子さんの姉・綾子さんのインタビュー映像の言葉が重く響きました。妹を案じていた綾子さんは3年前に79歳でお亡くなりになったそうです。

最高学部では2月18 日(水)、 「公害を語り継ぐ~対立を超え未来を創る~」とのテーマで、水俣病センター相思社職員で学芸員の小泉初恵さんと公害資料館ネットワーク幹事で岡山理科大学准教授の林美帆さんを講師として、また東京学芸大学環境教育研究センターの原子栄一郎さんをコメンテーターとしてお迎えし、第6回共生共創フォーラムを開催します。小泉さんは女子部90回生、林さんは女子部73回生、共に自由学園女子部で学ばれた最高学部の卒業生です。

最高学部の学生たちは今年度も研修旅行で水俣病センター相思社を訪れ、現地で小泉さんからお話を伺いました。林さんは 2021 年に公害の全体像を学ぶことができる『公害スタディーズ』を編集者のお一人として出版され、原子さんも執筆者のお一人です。

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自由学園は「生活即教育」を掲げ、生徒の自治を大切にしてますが、生徒・学生たちは日々の生活の中で生産的な活動だけではなく、事後の整備・片付けの責任も担っています。小さなことでは食事後の食堂掃除や食器洗い。残飯を始末しごみを捨てる。落ち葉は掃き集め堆肥を作る。トイレを掃除するなどなど。手の足りないところを手伝う姿もよく目にします。

大気汚染、水質汚濁、土壌汚染といった高度経済成長期に広がった公害は、経済的生産活動を進める当事者に、周辺環境に対する事後の整備・片付けという責任ある発想がなかったために起こされたものと言えます。原発も同様の問題を抱えています。公害問題に向き合いよりよい未来を創るこの分野にお2人の卒業生が関わっておられることは、私にとっては勇気づけられることであり、自由学園にとっても大変意義深いことと感じます。

ちょうど先週 1 月 22 日夕方の NHK ラジオ「N らじニュースアップ」では、「公害の歴史 継承の課題」と題して林美帆さんへのインタビューが放送されました。

公害資料館ネットワークは、2013 年に新潟県立環境と人間のふれあい館と大阪の公益財団法人公害地域再生センター「あおぞら財団」が呼びかけて結成した組織です。公設と民間という背景の異なる二つの団体は「公害スタディツアー」を通じて交流を深め、日本各地で孤立状態にあった公害資料館のネットワーク化に取り組み、現在 28 団体がつながり活動しているそうです。

初めに、公害は高度経済成長期に水俣病、四日市ぜんそく、イタイイタイ病等を引き起こした歴史的な公害だけではなく、全国各地で大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、悪臭、地盤沈下といった「典型七公害」や「食品公害」として広がり、現在は原発事故や PFAS による環境汚染・健康被害が私たちの生活と密着して起こり続けていることが紹介されました。

続いて 2024 年に行われた 28 団体へのアンケートから、運営費不足が喫緊の共通課題であること、特に 14 の民営団体は個人寄付やボランティアにより運営されており、今後資金的援助がなければ公害の経験が失われてしまうとの懸念が語られました。

「伝えたいと願う民間の資料館が作られないと公立の資料館は作られない」、「公害に関わる立場は多種多様。立場によって伝えることは異なる。公平性をもって伝えるのが難しいのが公害」、「PFAS など同じことが起きている。困難にどう立ち向かっていくか、過去に学ぶことは必要」、「負の出来事である公害を受け止めることが難しいのが地元」等々、公害を抱えた地域に関わり続けた林さんの言葉は洞察に富み説得力があるものでした。

これら難しい継承の課題を抱えつつも、公害のない社会を創るためには、公害や運動についての歴史を学び、異なる立場の人が対話する場が必要であると結ばれました。公害資料館の現状と役割が良くわかり、その必要性が感じられる内容でした。1 月 29 日(木)午後 6:45まで「NHK らじるらじる」で「聴き逃し配信」が行われています。プレーヤー | NHKラジオ らじる★らじる

第6回共生共創フォーラム「公害を語り継ぐ~対立を超え未来を創る~」は どなたでもオンラインでご参加いただけます。Peatix よりお申し込みください。https://college20260218.peatix.com/

小泉初恵さんjiyu.ac.jp/jgs100/koizumi.html、林美帆さんjiyu.ac.jp/jgs100/hayashi.htmlには「自由学園 100 人の卒業生+」でのインタビューに応じていただきました。ぜひご覧ください。

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