2年生対象講義「フィールド研究基礎」の紹介 「よく聞く」編/研究・実習 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

2年生対象講義「フィールド研究基礎」の紹介 「よく聞く」編/研究・実習 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

研究・実習

2年生対象講義「フィールド研究基礎」の紹介 「よく聞く」編

2019年1月4日

学園では,材料(木材,食材)を料理する「川下」教育と,木や野菜などのいのちを継承して,その材料を作る「川上」教育の両方をやってきています.「川下」の料理するところでは,既存のデータ(材料)の分析技術が中心になりますが,「川上」ではリアルなフィールドに参与して,観察・計測して定量・定性データを作るところも重視していたのです.昭和16年には羽仁吉一先生は「臨床講義」という表現をされていました.

2016年度からの新カリキュラムでは,卒業研究も視野に入れた2年生(四年課程)の必修講義として,それらの「川上」「川下」のデータ処理技術を学ぶ方法論基礎(春期)とフィールド研究基礎(秋期)を設けました.特にフィールド研究基礎では,「川上」が中心で,多様な時間空間を扱います.「よく見る」ところでは,吉川助教の現場での写真撮影法やドローンの指導などがありますが,今回ご紹介するのは,「よく聞く」ところで,2名の講師にお願いいたしました.

11月26日は,東京藝術大学で研究されてきた田中直子さんの「サウンドスケープ」講義でした.フィールドとしての音環境が,視覚情報でいかに省略されて認識しているかということを,2人1組となって1人がアイマスクをつけて音に神経を研ぎ澄ましながらキャンパスを動いて把握するという体験や,過去に鳴っていて今は鳴らなくなっている教会の鐘が,住民には今も定刻に聞こえているという記憶の音など,音環境に対する人間の参与の特性などを学びました.いかに人は音を聞き流してしまっているのかということから,フィールド(対象)に対してもっと謙虚でなければということに思いを致しました.

2年生対象講義「フィールド研究基礎」の紹介 「よく聞く」編

アイマスクをつけてキャンパスを歩く2年生

12月10日は,4月に地球市民教育フォーラムで「里山から見える未来社会」というタイトルで大好評のご講演をいただいた澁澤寿一さんの「聞き書き」講義でした.高校生が森川海の名人に聞き書きする「聞き書き甲子園」は17年目を迎えています.「聞き書き」は,話し手の人生や生業を,聞き手が聞きだし,話し手の言葉だけでまとめて読者に紹介するものです.実はそこで,孫世代の聞き手に,その人の歴史,生きてきた意味,自分の技のエッセンスの伝承が行われるのです.そのような「いのちの連続の向こうに、未来の自分を考える」ことの礎にもなるのです.冒頭に述べた学園の「川上」教育の意義がみえてきた気がしました.

2年生対象講義「フィールド研究基礎」の紹介 「よく聞く」編

「聞き書き」について解説する澁澤寿一さん

文:杉原弘恭(学部教員)
写真:吉川慎平(学部教員)

カテゴリー

月別アーカイブ