2018年度秋期に「マネジメント講座F」が開講しました。この科目は、最高学部3年生に適用される新カリキュラムに基づいた新科目で、経営者の講話をお聴きするこれまでにない全く新しい講座で統一テーマを「人を大事にする経営」にしています。
この講座は、次世代企業経営者および起業する人、社会貢献団体(NPO)を経営できる人など将来の経営者を育成することを目的にしています。自由学園が、一人ひとりがみんなの中で大切にされる学校で、社会に出たときに様々な問題を解決する土台をつくる学校で、ここで育まれる人間力と独創性を備えた「人を大事にする経営者」の育成を目標にしています。
講座は、2018年10月から2019年2月に6人の経営者を招聘して行いました。このうち2回の講座では、企業訪問して工場見学や社内見学し、社長の講話をお聞きするプログラムで行いました。
第1回
株式会社日経BPで代表取締役社長をされていた長田公平様は、「社長の仕事」についてどのようなことを考えなければならないか、どのようにして全社員を動かしていくかを自らの経験談からお話されました。学生には、社長に求められている「会社を変えること」の大切さや「使命感」が伝わったようです。
第2回
佐藤祐一 様(株式会社羽根田商会 代表取締役)は、卒業生経営者として、事業承継のためのキャリアや変わりゆく社会の中での企業の在り方ついてお話され、学生に強いメッセージを送っていただきました。卒業生の経営者の講話は、学生にとって卒業後の自らの将来を考えるよい機会になったと思われます。
第3回
勘定奉行という会計ソフトで知られる株式会社オービックビジネスコンサルタント(略称OBC)は和田 成史 様が起業した会社です。和田様は、「夢を追いかけて」と題して、起業のきっかけやその時のご苦労や時代と変化への対応、今後の事業戦略について丁寧にお話されました。
学生の感想は、「CMで名前を知っている会社の社長のお話を少人数で聞くことができることが、どれほど贅沢なことかを改めて感じました。」、「勘定奉行という大有名な商材がありながら、人の持つ価値を信じておられる姿勢が非常に印象的で、社員一人ひとりの成長を信じている姿が心に残りました。」など、人を大事にする経営姿勢が伝わったようです。
第4回
石坂産業株式会社は、今までマイナスのイメージが強かった産業廃棄物処理業の印象を資源エネルギー供給産業へと変える挑戦をしている。社会に必要な仕事という使命感から人と自然と技術の共生を求めて、資源のリサイクル率98%を誇る企業である。社員が誇りを持てる仕事の環境をつくるだけでなく、里山や農園と共生する工場をつくり、環境活動に取り組んでいる。当日は、工場見学、里山見学と石坂社長の講話という半日のプログラムで行いました。
学生の反応は、「実際に足を運んで体験しお話を聞くことが楽しく印象にも強く残るということを実感しました。」、「石坂さんが大事にされている“人”とは、まぎれもなく地球規模の人類であるが、ご自身の会社における社員の方々のことも同様に大切にお考えなのだと感じた。」などで、体験してより理解が深まりました。
第5回
荒井聖輝様(株式会社ここくらす 代表取締役)は、横浜で「しぇあひるずよこはま」をしました。「しぇあひるずよこはま」は、ラウンジやバスルームなどを共用する“ソーシャルアパート”で、ここに生涯住み続けるための新しい家族のカタチを創る「住宅型複合施設」です。企業に至った経緯から地域を巻き込んだコミュニティづくりまでさまざまな活動についてご紹介いただきました。
学生は、「新しいタイプの経営者という印象でリアリティを持って語られていた。」、「自分のやりたいことと社会に対して自分ができることをマッチさせそれを仕事にしているということが印象的でした。」という感想で、学生の印象に残る講話になりました。
第6回
タニタ食堂で知られている株式会社タニタは、ヘルスメーターのトップ企業です。最近では、タニタ食堂に始まりさまざまな活動を通して、健康をはかるから健康をつくる企業へと発展してきています。当日は、株式会社タニタを学生が訪問し、タニタ食堂体験、社内見学、谷田社長の講話という半日のプログラムで開催されました。タニタ食堂の体験から講話まですべて谷田社長が案内し、細かく説明してくださいました。
学生には、「変革する経営者」として社員の方々を信頼され、経営に関する責任はしっかりと負われている姿勢が伝わったようです。
自由学園最高学部での教育においては、少人数制が特徴の一つになっています。このため、他の大学ではできない方法で授業を進めることができます。マネジメント講座Fでは、講師に来ていただく授業だけでなく、企業訪問するという手法も取り入れています。企業を訪問し、実際に見学し、体験することで学生の学びを深めることができます。これからも自由学園ならではの特徴を活かして、学生に刺激を与え、よりよい授業にしていきたいと考えています。
ご協力くださった社長の皆さまには貴重なお時間をいただき、心より感謝申し上げます。
文・写真:水嶋 敦(ゼミ主任)