2年必修の講義「方法論基礎」で、5月25日、渡辺憲司学部長が「文学とは何か」「文学を学ぶとはどういうことか」について、講義をされました。

方法論基礎の講義
方法論基礎という科目は、今年度から始まった学部の新カリキュラムの一つで、1年生のときに履修した領域総観を踏まえ、人文学、社会科学、自然科学、形式科学の基礎的な方法論や論文の書き方を知ることを目的としています。そこで、各分野から先生をお招きし、オムニバス形式で講義を進めています。今回の渡辺学部長の講義は、具体的には芥川龍之介の「羅生門」を取り上げ、この作品の読み方が東日本大震災の前と後とではどう変わってきたか、を論じられるものでした。
「羅生門」といえば、高校の国語の教科書では「定番」と言われるほど、おなじみの作品です。当日は女子部の先生も聴講され、学生たちにはレベルが高く、難しいところもあったかもしれませんが、大変興味深い内容の講義が展開されました。
「羅生門」は、荒廃した都のなかで、ごくふつうの人間が、困窮のあまり盗人に豹変していく過程を描いた作品ですが、それは決して本の中だけのものではない、『方丈記』の世界、東日本大震災の原発事故後の風景と重ねてみると、自分の経験として読めてくるのではないか、というお話でした。
文学は、解釈するのではない、自分の経験としてそれが読めているか? また、経験を同一化することによってしか我々は語り合えない、という渡辺先生のメッセージが聞こえてくるような講義でした。
文・写真:室永優子(学部教員)