4年生がリオデジャネイロで研究発表を行う/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

4年生がリオデジャネイロで研究発表を行う/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

4年生がリオデジャネイロで研究発表を行う

2013年8月19日

テーマ別グループ研究「数理モデルとインターフェイス」ゼミの数理グループに所属する最高学部4年河上雄太、長左絵は、8月7日から9日にリオデジャネイロで開催されたIATUR2013(第35回国際生活時間学会)にて発表を行った。8月4日の夜に日本を出発し、ドバイ経由で5日の昼過ぎにリオデジャネイロに到着、帰りは学会が終わった翌日の10日夜にリオデジャネイロを出発し、行きと同じドバイ経由で12日夕方に帰国した。この学会は毎年世界各地で開催されている。今年はリオデジャネイロで開かれ、30以上の国・人種の生活時間の研究者が200人程度集まっていた。私たちは”Statistical modeling based on the time use survey of Zenkoku Tomonokai in Japan”という共通のテーマのもと、学会初日の7日は河上による”Unpaid Work, Leisure, and Personal Care of Japanese Elderly Women”のポスター発表、8日は長による”Paid work, Childcare, Housework, and Free Time of Japanese Women”の口頭発表を行った。

私たちの研究は、全国友の会が1959年から5年に1度実施している「生活時間しらべ」のデータを用いて、河上が高齢期会員の社会活動と健康との関わりについて、長が子ども・仕事をもつ30代から50代の会員の年齢による生活時間の違いについて、調査をしている。今回の解析では、1999年、2004年、2009年の10年間の3回分のデータを用いた。今回の発表では、大きく2つのことをアピールした。ひとつは時間データを解析する統計モデルを構築したこと、もうひとつは、全国友の会が50年以上の長期にわたり生活研究をしていることである。生活時間の研究は社会学や経済学からアプローチされることが多く、統計的な扱いとしては平均値などの代表値による考察が一般的であるが、本研究ではデータを丸めることなく考慮する統計モデルを用いて考察した。河上は健康の自己認識を社会活動、余暇活動の時間の長さで表す多項ロジットモデルを構築した。先行研究では社会活動と健康のポジティブな関係が報告されていたが、このことを時間の長さも加味して考察し、あわせて余暇活動も健康とポジティブな関係があることを示した。長は30代から50代の女性が1日1440分をどのように時間配分しているかを表すディリクレ分布モデルを構築した。モデルから、女性の年齢による仕事・子育て・家事・自由時間の配分の違いが明確になった。また他のデータとの比較から、友の会が年齢によらず家事の時間を一定量とっていることも明らかになった。

IATUR2013

河上の発表の様子

IATUR2013

IATUR2013

長の発表の様子

日本で有名な生活時間調査としては、総務省統計局による社会生活基本調査とNHKによる国民生活時間調査の2つがある。しかし、全国友の会の「生活時間しらべ」はその2つよりも歴史が長い。友の会のように自ら長年にわたり生活研究を励み、女性のライフスタイルの変化のデータを残していることは大変貴重なことである。今回の学会において、学会の日本人理事と総務省統計局の方が、全国友の会の「生活時間しらべ」のデータについて大変興味をもっておられ、研究や仕事のお話を伺う貴重な機会も得られた。

1日目の午後に行われた河上のポスター発表は、ひとつの部屋に20枚ほどのポスターが並び、参加者同士が自由に対話し意見交換できる形式となっていた。河上のポスターの前で立ち止まる人も多く、関心を引いているようであった。あるブラジル人女性研究者は、同じセルフケアに着目して研究しており、日本人女性セルフケアの時間の量に興味をもっておられ、研究に関するコメントをくださった。

2日目の午前に行われた長の口頭発表は、持ち時間が質疑も含めて30分であった。発表は4〜5カ所の小部屋に分かれて同時に行われているため、10〜20人ほどの前で話をすることとなった。初めての英語での発表や質疑応答に緊張したが、発表後にモデルについての質問や、日本女性の労働力率の変化に関心があるというコメントもいただき、日本女性の労働力率について外国の方の意見も伺うことができた。

発表は英語、ポルトガル語、スペイン語のいずれかの言語で行うことになっており、会場内では3つの言語の同時通訳が行われていた。私たちが理解できる言語は英語のみであり、また私たちを含めて日本人は4名のみであったため戸惑うことも多かった。しかし、私たち自身の発表だけではなく、他の参加者の発表を聴くことは大変勉強になった。活発な議論を目の当たりにし、学びを深めることのおもしろさを身近に感じる貴重な機会であった。「生活時間」という共通のキーワードにもさまざまな研究が存在し、また文化の違いによるさまざまな価値観が存在することを感じた。

私たちは卒業研究として全国友の会「生活時間しらべ」をとりあげており、友の会の方々から友の会の活動についてお話を伺ったり、研究の進捗状況を聴いていただいたりと学会の準備以前から多くのお力添えを頂いていた。また、今回の滞在は、リオデジャネイロ友の会の方々がお世話をしてくださり、2名の会員のお宅にそれぞれホームステイをさせていただいたが、このホームステイは友の会中央部の方々のご尽力によって実現したことである。到着した翌日にはリオデジャネイロ友の会の方々に昼食会を開いていただき、友の会の全国大会で自由学園を訪れたときの思い出や、日系2世の方からは日本の文化とブラジルの文化とのかかわり合いについてなど、興味深いお話を伺った。また、到着時も出発時もご自宅から1時間ほどかかる空港まで車で送迎もしていただいたり、現地で有名なハバーダというウシの尻尾の煮込み料理や、シュラスコという肉の炭火焼をごちそうしてくださったりと、とてももてなしていただいた。リオデジャネイロ友の会、全国友の会中央部の皆様のお心遣いに、この場を借りてお礼申し上げたい。

リオデジャネイロ友の会

リオデジャネイロ友の会の皆様と記念写真

また、滞在は短期間であったが、現地友の会の方々のご配慮もあり、リオデジャネイロの観光名所とされているコルコバードのキリスト像、ポン・ヂ・アスーカル、イパネマビーチ、コパカバーナビーチなどを訪れることができた。リオデジャネイロの季節は現在冬だが、日本の初夏のような心地よい気候であった。滞在期間中は天気にも恵まれ、高所のコルコバード、ポン・ヂ・アスーカルからはリオデジャネイロ市を一望でき、高層ビルが立ち並ぶ街や遠くまで続く海岸がよくわかった。

この学会への渡航費は、自由学園国際交流基金、自由学園父母会・教職員からの寄付金により、ほぼ全額をまかなうことができた。多くの方々のご支援をいただくことができ、大変感謝している。金銭面だけでなく、発表準備にご協力くださった先生方にもこの場を借りて感謝申し上げたい。夏休み明けからは、卒業に向けて論文執筆を行う。この学会に参加して感じた研究に取り組む姿勢や、知識を得る楽しさを今後の勉強や生活に活かしていきたい。

文:長左絵(学部4年)

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