集中講義「野外生物・農芸演習」(3・4年)は、岐阜県高山市の国立乗鞍青少年交流の家(標高1510m)に宿泊して行われました。
7月19日と20日は、まず乗鞍岳西麓の小八賀川沿いの久手と「五色ヶ原の森」(標高1300~1600メートル)の野外観察、21日は平湯峠から乗鞍岳(標高1600~3000メートル)の野外観察を行いました。最後の22日には交流の家から西に1キロメートルくだり、高山市街で高山陣屋を見学しました。高所の野外観察は上平尚先生(乗鞍岳環境パトロール、CONEコーディネーター、乗鞍山麓救助隊)にご指導いただきました。
■国立乗鞍青少年交流の家 (宿舎)
初日は早朝出発の関係で丹生川町久手に泊まり、2日目以降、国立乗鞍青少年交流の家に宿泊しました。交流の家は、飛騨山脈の乗鞍岳西麓、日本海と太平洋の分水界に位置する日影平山の麓にあります。いろいろな活動をしている団体と朝・夕のつどいなどで交流し、規律ただしく過ごしました。環境学習室では、乗鞍岳周辺地域の立体地図、動植物相などについての展示、動植物の展示標本を参考に勉強しました。

7月21日の朝のつどい 国旗所旗掲揚と自己紹介

環境学習室展示 乗鞍岳の植物 垂直分布

ツキノワグマの「のりくまくん」
■7月19日
まず、「五色ヶ原の森」(乗鞍岳西麓の岩井谷)の案内センターでの今回の野外演習の概要説明を受けました。

五色ヶ原案内センター

センター研修室の展示写真

のりくら郷土の森
説明後、センター周辺で標高1300メートル以上の高所のスギ(丹生川杉)の人工林と、里山として山地帯の落葉広葉樹が萌芽更新されてきたミズナラなどの二次林を比較観察しました。

丹生川杉の常緑針葉樹林

里山林、落葉広葉樹林の二次林
さらに山間部の畑で、この地域特産の久手ダイコンなどの高冷地栽培を見学しました。

久手ダイコン

トウモロコシ
■7月20日
乗鞍岳西麓、岩井谷の「五色ヶ原の森」(3000ha)の「シラビソコース」(標高1350~1640メートル)で野外観察をおこないました。多様な森林や湿地植生と野生動物などの生態系が維持と適切な規模での自然とのふれあいを目的として「五色ヶ原の森」は、地元の旧丹生川村によって2004年に開設されました。現在は高山市が運営し、入山は事前予約制で指定ガイドの案内によって行われています。
この地域は、普通は標高1500メートル辺りまでは山地帯の明るい落葉広葉樹林がみられます。しかし、溶岩由来の岩塊による厳しい立地環境のため、1300メートル付近から亜高山帯の針葉樹が入り込み、常緑針葉樹の暗い林床にはコケが豊富で、その上に多くの草本や樹木の生育がみられます。

五色ヶ原の森入口 林内へ

亜高山帯の針葉樹、コメツガ、シラビソ

溶岩由来の岩塊

「リスの食卓」

倒木更新のあと

オオヤマレンゲ

ヒメウス

シラベ沢源流を下る 少雨のため伏流水の湧出地点が下流側に移動

伏流水の湧出(川のはじまり)

周辺の沢の水を集める

布引の滝
■7月21日 平湯峠(亜高山帯)から乗鞍岳(高山帯)へ

平湯峠(標高1640メートル)から乗鞍スカイラインを上る

畳平(標高2702メートル)ハイマツ帯 乗鞍岳登山口

不消ヶ池(きえずがいけ) 水源として利用

岩礫の多い道を登っていく

ハイマツの中に雪渓と池がみられる

ハイマツ帯を抜けて登る

剣ヶ峰頂上3026メートル

観天望気、風と雲の様子を見ながら下る

権現池

肩の小屋と旧コロナ観測所(山頂)

コマクサ(岩礫に)

キバナシャクナゲ(ハイマツのなかに)

ショウジョウバカマ、ハクサンイチゲ

湿生高山植物のお花畑

クロユリのつぼみ
■7月22日 青年の家から高山市街地へ
最終日には、野外観察の心得のひとつとして、ロープワークの初歩を学び、標高1510メートルの青年の家から高山市街(標高約500メートル)への行程20キロメートル、標高差1000メートルの道を、車窓から谷のひろがりと植生、農作物などのうつりゆきを見ながら下りました。

乗鞍青少年交流の家入口 標高1500メートル
■高山陣屋見学(高山市街地)
高山市街地では、江戸時代に幕府直轄領として郡代・代官が治世を行った陣屋を見学しました。高山陣屋は全国で唯一、当時の主要建物が残り、1929年に国史跡に指定され、さらに修復・復元され、江戸時代の姿がほぼ再現されています。役所の部屋などである座敷のほか、1600年頃の建築で1000平方メートル余の御蔵全体に展示されている多くの資料にふれ、現在につながる飛騨の山地の農林業、鉱業などについても学ぶことができました。

陣屋の式台

座敷
この4日間、好天に恵まれ、乗鞍西麓の飛騨地方ので学びを無事に終えることが出来たことに心から感謝しています。
文:久保木栞奈(学部4年)
写真:履修生一同