多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり/研究・実習 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり/研究・実習 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

研究・実習

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

2017年12月12日

11月5日(日),1週間おいて11月19日(日)に自由学園(環境文化創造センター・ユニット)がかかわる2つのシンポジウム,講演会が行われた.19日の環境シンポジウムは,東久留米市環境審議会関係(杉原は審議会会長)で,5日の講演は,ひばりが丘PARCOの文化祭関係である.

1.多世代環境シンポジウム「みんながこのまちの生きもの係Part 2~小さな観察が大きな地球につながっている~」

市役所のホールを会場に行われたもので,立ち見状態の100名をはるかに超える大盛会となった.現在,審議会・検討部会で取り組まれている東久留米市第2次緑の基本計画の中間見直しに,「生物多様性地域戦略」をいかに包摂して,市民・事業者・行政が皆でいかに取り組んでいくかということを地域で考える機会とするものである.

なお,下記のポスターは,自由学園最高学部 環境と経済・社会ゼミの大塚萌さんによるイラストが小学生低学年にも好評で,最高学部講師のお子さんがこれをみて参加したいといい,実際に来てくださった.

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

市役所前の大塚萌さんのイラストを用いたポスター

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

市役所のホール

プログラムは,子どもの部,お兄さんお姉さんの部(自由学園の部),大人の部の3部構成で,以下の内容であった.自然に関する調査・研究というものは、ある結論に達するまで大変時間がかかるのだが,今回の発表は自由学園の体操会の教育発表のように,多世代の取り組みをひと時で示す3時間となった.すなわち,(1) 子どもの部では,観察・学習を中心.(2) 自由学園の部は,さらにどのようにどのようにして観察・調査を行っているか,それを毎年後輩に引き継ぎながら行っているか,研究をつなげるにはというところが中心.(3) 大人の部では,各分野で長年観察・調査を続けてこられた市民(団体)からの得られている知見の発表.

<子どもの部> 市内小学校児童発表 東久留米市立第十小学校(4年生),本村小学校(5年生)による黒目川を中心とした生きもの観察・学習・調査発表.

<お兄さんお姉さんの部> 自由学園男子部と最高学部による観察・学習・調査研究の発表.

男子部川管理グループ(指導:矢野淳子)からは,「学園内のエビ類等調査の報告」(高等科2年)の紹介で,立野川で見つかった本来川にはいないはずの外来種の植物や魚の水槽展示(高等科1年)も行って,皆の関心を集めていた.(エビ類調査には,埼玉南部漁業協同組合の指導をいただいた.)

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

男子部生による発表

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

男子部生による展示と外来種,このほかにヌマエビの水槽展示もあった

最高学部「庭園・自然環境:草本・潅木」生活経営研究実習グループ(指導:柏木めぐみ,南雲八恵)からは,「自由学園内の野生草本を中心とする生物調査」の発表と「向山緑地の保全活動の報告」(最高学部と向山緑地・立野川勉強会)の展示紹介が行われた.もうひとつ紹介されたのが,最高学部自然の理解と創造ゼミの卒業研究の「向山緑地を中心とする生物相の調査研究および生物多様性について」で,その折の標本類はこの地域の自然史博物館の役割を担っている多摩六都科学館(学園と相互協力協定)に収められているだけではなく,4枚のパネル展示物となっており,この日も貸し出しを受けて展示した(多摩六都館の統括マネージャーからの挨拶もあった).

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

最高学部生による発表

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

向山緑地の研究と多摩六都館の展示(左手奥)

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

草本・潅木グループの展示

<大人の部> 自由学園が日頃からお世話になっている方々(現・緑の基本計画検討部会委員)からの発表.「東久留米の緑と野草」「東久留米の名木百選」「東久留米の魚たちと」「東久留米で見られた野鳥」.最後に,「東久留米市生物多様性戦略について」の説明が環境安全部計画調整係長よりあった.大人の部の長年の観察で得られた知見は貴重なもので,これだけでシンポジウムが十分行える内容であった.

自由学園の部以降の総合司会を務めた私からは,サブタイトルのこのような「小さな観察が大きな地球につながっている」ということを東久留米の歴史ということで次のように紹介した.観察で,野火止用水周辺に関東山地の植物の種子等が流れに乗ってきて見られるということがわかってきた.このことは,現在の武蔵野台地に生きている植物の先祖が,数万年前に古多摩川が武蔵野台地を形成する際に,関東山地からやってきた可能性があるのではという研究につながる.次回のシンポジウムは,多摩六都の近隣市や武州一揆でのつながりもある関東山地の名栗の植生などをテーマとしたいものである.

私たちは、自由学園の位置する湧水と緑に恵まれた東久留米を誇らしく,それが当たり前,放っておいても存続するように思いがちだが,それは縄文時代から地域で湧水と緑と生き物を守り育ててきたもので,自然の持続的な循環・再生・再生産を考えずに,消費するばかりとなっては荒廃をもたらしかねない.農産物をはじめ自然の恵みに対して謙虚に向き合う必要があると.

ちなみに,以前の環境基本計画では,環境保全等に取り組む3者,市民・事業者・行政(環境基本条例)のうち,自由学園は私学ということで事業者の中に入っていたが,第2次基本計画からは,行政(教育委員会や学校を含む)ということになり,公的な責任がアップしていることを付記したい.

2.ひばりが丘PARCOの文化祭(10月20日~11月5日)での「まちの歴史」講演

ひばりが丘PARCOでは,2013年の開店20周年では学園出身のJUN SKY WALKER(S)がライブを行ったことがあった.今回の「この街でしかできない特別なひばり文化祭」では,11月3日に学園パン工房パン即売会(従来の種類にはないパン・アイテムも含んで午後3時には完売!),最終日トリのイベントとして,最高学部・資料室連携による講演(講演者: 杉原,大塚ちか子先生)を行った.こちらも学園長をはじめ多数の学園関係者もおいでいただき,立ち見の状態で盛況で,知らなかった地元の歴史を知ることができ,大変おもしろかったとの感想が多く寄せられた.

これまでの地域に関する講演は,地元東久留米を中心とするものが多いが,今回は,学園そして東久留米市,西東京市,新座市にまたがる地域の歴史について展開してみた.

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

講演スライド

「変わるもの・かわらないもの-まちの歴史」をサブタイトルに,杉原がまず以下の内容で講演を行った.

・パルコのまちづくり(なぜ池袋から渋谷を拠点にしたのか?)
・自由学園のまちづくり(東急電鉄,西武鉄道の沿線まちづくり比較や学園町の紹介.宮崎駿氏の理想のまちは昔の学園町によく似る)
・豊かな田園のTown and Country(戦前・終戦直後,高度成長前・後,近年の学園及び周辺地区の変遷を航空写真とGISを使って紹介)
・古代~江戸の武蔵野開発とムラづくり(氷川神社等と水利開発、湧水・小河川と先進的縄文ムラづくりなど)

続いて,大塚先生が「武蔵野今昔 1961年,2017年」の講演題目の下,武蔵野の農村が3市にわたって連続していた1961年頃と,緑の島のようになってきた現在とを比較し,東久留米・西東京・新座3市における農業と農産物に焦点を合わせて講演された.

東久留米では,これまでも現在も最高学部の学生が参加して,市民により農業と環境の子どもの学習につながる「みのり塾」にかかわってきている.公的なプレゼンス・アップとともに,地域とのつながりを一層深めていきたいものである.

多世代環境シンポジウムとPARCO「まちの歴史」講演と地域とのつながり

当日配布の学園関係資料と3つの市の散策と農に関するパンフレット

文責:杉原弘恭(最高学部教員)
写真:新井真吾(学部3年),吉川慎平・杉原弘恭(最高学部教員)

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