自由学園の校内には荒川水系落合川支流に当たる立野川と呼ばれる小川が流れています。校内区間のうち、およそ100mはコンクリート等の護岸が設置されていない「自然河岸」の状態を維持しています。この自然河岸の維持管理は、これまで男子部高等科の「川管理グループ」が、水路の管理者である東久留米市との協議のもと20数年にわたり草刈り等を行って来ています。
立野川全体で見ても校内と最上流付近にしか残されていない自然河岸を、環境の多様性や動植物の保護の点から、今後も維持していきたいと考える一方、最近10年余りの間に蛇行が急になり、断面が大きくなっていることが日常の観察からも分かっていました。川が流れることで時間とともに流路や形状が変化することは一見すると自然なことですが、長年維持されていた地形が急速に発達してきたことは、上流からの土砂供給量の減少、降雨時の流出量の増加など、物理的要因が考えられます。また蛇行が急になると治水上の問題が生じやすくなることから、「多自然川づくり」の理念のもと、できるだけ自然な状態を維持しつつ適切な水路の管理方法を検討する必要がありあます。そこでまずは定量的にその変化を把握することにし、2021年から水文・気象観測室の学生を中心に同区間の河道横断測量を開始しました。
3年目の調査となる2023年は、昨年3月に最高学部を卒業した卒業生の宮代安希子さんに、水文・気象観測室の学生5人(1~4年)が測量の基礎に関する指導を受けました。宮代さんは学部生の時に、立野川の老朽化した橋の架け替えのプロジェクトを推進し、そのために立野川の測量を行ったのがこの測量調査のはじまりです。卒業後は測量調査会社へ就職し、現場技術者としてお仕事をされています。1月28日(土)午後、集まった学生たちに、まず日ごろの仕事の様子などの話をしていただき、その後水準測量についての解説(原理など)、実際に立野川にて測量調査を実施しました。測量機材であるレベルの据え方やスタッフの扱いなどを、てきぱきと指導する姿から、いろいろな経験を積んでいる様子が感じられました。なお測量調査に要する機材は校内の発掘調査に用いるために用意されている備品を活用しています。
一連のプロジェクト全体としては未だ検討段階にありますが、今回の測量と過去2年の結果との比較からの考察、ならびに自然河岸が校内にある意義やその保全について、日ごろの川管理の様子と共に、2月26日(日)に行なわれる国土交通省・荒川下流河川事務所主催の「第18回川でつながる発表会」にて紹介の予定です。この発表会への参加申し込みは17日(金)まで可能です。是非ふるってご参加ください。
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(1/3)【お知らせ】第18回川でつながる発表会に自由学園が参加します
文・小田幸子(最高学部教員・環境文化創造センター次長)
写真・吉川慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)