【気象観測室】高温と地下水低下傾向の那須農場周辺/研究・実習 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

【気象観測室】高温と地下水低下傾向の那須農場周辺/研究・実習 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

研究・実習

【気象観測室】高温と地下水低下傾向の那須農場周辺

2023年7月30日

気象庁は7月22日に関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表しましたが、各地で記録的な高温状態となっています。栃木県北部の自由学園那須農場は、標高約290〜320mに位置し、例年東京に比べれば幾分か涼しい傾向にありますが、梅雨明け以降35度を超える猛暑日が連日記録されています。今シーズンの最高気温は7月16日に36.7度の日最高気温(起時:15時00分)を記録し、17日に35.5度(14時00分)、その後一旦低下しますが25日に36.2度(14時30分)、26日に36.4度(12時30分)、28日に35.9度(12時30分)、29日に35.7度(14時00分)という状況です。

那須農場の様子は公式Facebookページでも紹介されていますのでご覧ください。こちら

 

那須農場露場(7月28日)

 

那須農場脇の蛇尾川は通常通り枯れ川状態(7月28日)

 

一方、地面の下の地下水(農場脇を流れる蛇尾川等の伏流水)の水位も例年に比べ非常に低い状態にあります。この状態は春先から継続しており、通常秋から冬にかけての降水量の減少で低下した地下水位は、春以降の降水とそれによる蛇尾川上流の流量の復帰(伏流水の起源となる)で回復しますが、今シーズンは大幅に遅れている状態です。地元の方によると蛇尾川上流の山域の雪不足も影響しているのではないかという話です。那須農場の水田は蛇尾川上流で取水した蟇沼用水から水を供給しているため影響はほとんどありませんが、農場周辺の新田では井戸から揚水した地下水を供給しており、井戸に水が少ない状態が続き困っているということでした。またこれに関係して農場より下流にある2ヶ所の湧水池では、通常この時期にはこんこんと水が湧いていますが、7月28日現在、未だ枯れた状態が続いています。まもなく8月に入りますが、適度な降水による回復が期待されます。

こうした雨や雪の量、それらが基となる川の流量と地下水(井戸)の水位、湧水の状態などは全て連動しており、その一部を生活用水や農業用水等として人々が利用しています。那須農場とその周辺にはこうした「水の循環」と人々の暮らしをダイナミックに学ぶことが出来うる環境があります。最高学部の水文・気象観測室では、那須農場を中心に複数の観測機器を設置し、那須農場周辺環境の実態解明に向けたデータを蓄積しつつあります。

 

那須農場上流の蛇尾川も枯れ川状態(7月28日)

 

那須農場下流の出釜湧水地も枯れた状態(7月28日)

 

那須農場下流の津室川湧水地も枯れた状態(7月28日)

 

文・写真:吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)

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