本年度最終回の「地球市民教育フォーラム」/教養・専門 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

本年度最終回の「地球市民教育フォーラム」/教養・専門 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

教養・専門

本年度最終回の「地球市民教育フォーラム」

2018年3月4日

「地球とそこに住むすべてのいのちの持続可能性」を共通テーマに昨年4月に始まった「地球市民教育フォーラム」であるが,2月16日が今年度の最終回であった.講師は東京大学名誉教授で解剖学者の養老孟司先生,演題は「子どもたちを自然の中に.脳化社会のその先へ」であった.

養老先生は,現代社会を効率化や都市化で作られた「脳化社会」であると名付けて,そこから考えられる様々な問題点を語られた.そして脳化社会の変えていくには,置き去りにされた「からだ」や「自然」への信頼をとりもどすことが必要で,将来の世界をしょって立つのは,泥だらけで遊びどっぷり自然体験を積んでいる子どもたちなのですとまとめられた.

本年度最終回の「地球市民教育フォーラム」

養老先生に講演のお礼を述べる高橋学園長

本年度最終回の「地球市民教育フォーラム」

養老先生へ質問する生徒

講演から学生はさまざまな示唆を得たと思う.どこにピンときたかは学生ぞれぞれであったようだが,ミニットペーパーからいくつか抽出して紹介する.

・秩序と無秩序が表裏一体というお話があった.秩序を生み出すと,どこかで無秩序が起こることは事実だと思う.どうせ元に戻るにしても,ずっと0ではなく,1と-1を足して0になるような人生を歩みたい.
・生まれた意味なんてないとおっしゃりながら,明日の楽しみだけで生きていられるのは楽しいとおっしゃったことは,感情の薄い私から見たらすごいと感じた.
・「常識は常に覆される」とおっしゃられた先生は,敗戦直後の小学校時代にある日突然教科書の半分が墨で黒塗りされ,それまだ真実だったことが急に嘘となる経験をされた.現代もまた憲法改正に関して今出回っている情報が嘘でもおかしくない時代となっていないか.何が真実かを自分の判断で分かるようになれるか.
・「人生の意味」を尋ねた生徒に対して,道端の石ころをたとえ話にして,「この世には意味のない者がたくさんあるから,意味のあるなしを考えても仕方がない」と答えておられたことを,その後ずっと考えている.先生は「意味があるとかないというのは人間のモノサシに過ぎない」ということも言っておられ,同意している.このことが本当に理解できれば,「秩序が保たれる」と思った.
・普段から自分について考えていた.自分って何だろう,自分がいる意味は何だろうと.これらは小さい頃からどうしても解決できない悩みで,だから今回の養老先生の講演はとても印象的であり,強烈で,新たな発見がいくつもあった.何だか嬉しい気持ちになった.
・普段何気なく使っている「自分」「環境」「意識」「無意識」という言葉の根本的な意味を探る,とても考えさせられる講演であった.

自由学園最高学部は,開学以来50年以上にわたって,最高学部生のための特別講義を開催し,これまでにも遺伝学の木原均先生,国文学の折口信夫先生,詩人の Edmund Blunden 先生、ソニー(株)の創業者井深大先生ほか枚挙に暇がないくらい多くの著名人のお話を伺ってきた.地球市民教育フォーラムもまた,学生のこれからの人生を変えるような出会いとなると信じてやまない.

文:遠藤敏喜(学部教員)
写真:田中悠貴(学部2年)

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