今年度も4年課程2年生を対象(必修)とした半期科目の「フィールド研究基礎(Basic Field Studies)」が始まりました。本講義は後期課程(3・4年生)の2年間をかけて取り組む、自由学園における学びの集大成である「卒業研究」に向けて、各自が「研究とは何か?」「何が研究になるのか?」「自らの関心はどこにあるのか?」という問いを立て学んでいきます。講義は分野を問わず必要とされる具体的な研究手法を知ることに重点をおき、取り分け自由学園が得意とする「本物に触れる」実学的研究に資する技術について紹介していきます。なお、各分野で必要とされる方法論については、ゼミ配属が決まった後、3年次に習得することになり、この方法論は、必要に応じてゼミを超えて受講することも可能になっています。
10月13日の第1回は、ガイダンスとしてキーワードである「フィールド」から連想される言葉を各自が書き出し、発表を通じて共通認識を持つことから始めました。次に、自由学園のフィールドとは?と題して、創立以来100年間に整えられてきた広大な自由学園のキャンパス・農場・植林地等について確認し、その周辺地域も含め自由学園と関わりのあるフィールドがこれだけあるということを確認しました。今年度の2年生は、9月に「飯能・名栗フィールド」に出掛けたことも振り返りました。
本題である10月20日の第2回は、定性的、定量的(調査・分析)手法を理解する演習として、「飲料水」を材料にした体験型の講義としました。手順としては、まず実際に4種類の飲料水について、正体は伏せた状態で飲み比べ、直感的な味等の感想を書き出し、おいしい、おいしくないといった簡単な模擬アンケートにも回答します。配布したワークシート上で各自の回答を集計し、表にまとめてクラス内の傾向を確認しました。用意した水は、①市販のフランス産の中硬水と、同じく②市販の日本を代表する軟水と、同じ水でも味の違いが明確なものに加え、③自由学園構内の井戸を水源とする専用水道水、④東京都水道局から供給されている水道水の4種類です。途中、短い人でも5年、長い人では17年親しんでいる、③の「自由学園の水」はどれかというクイズを出すと、「絶対に当てたい」などと盛り上がりました。また比較のため市販のフランス産の超硬水を希望者は味見しました。
自らの味覚で違い感じ、言語化、そして集計するという体験をした上で、味の違いをもたらす水温や各種溶存イオン等の違いを計測器(センサー)で測定し、水によって値に違いがあることを確認し、数値をワークシートに記録しました。ワークシートには、参考値として、校内を流れる立野川の河川水、名古屋市の水道水、その他、精製水や雨水、海水、温泉水などの様々な水の値も示しました。結果については、水温をほぼ統一(常温に)できていることや、水の電気伝導率とカルシウムイオンの値の高低に関係がありそうなことに気がついた人もいました。こうした点についての解説を加えた後、更に、高価な分析機器がなくても目的によっては簡易的な試薬でも評価できることの確認として、先ほど試飲した水のpHと全硬度を自ら測定する体験をしてもらいました。
以上のように、同じ対象でも定性的、定量的アプローチがあるということのみならず、対象によっては定性的・定量的調査・分析を往復することのおもしろさを感じでもらうことが目的でした。また何気なく飲んでいる水についても関心を持ってもらう機会になったかと思います。今年で5年目となるこのプログラムは、昨年度の初等部4年生向けにも実施しました。
今後も研究に役立つな様々な技術・情報を広く提供していきます。
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(10/5)2年生 飯能・名栗フィールド活動の振り返り
文・写真:吉川 慎平(最高学部教員・環境文化創造センター長)