12月6日(土)は、緑ヶ丘校舎2階ホールで12月の「みんなの日」が行われ、LA生108名(うちZoom参加3名)が参加した。
はじめに、石川リーダーの司会で礼拝が行われ、讃美歌103番「牧人ひつじを 守れるその宵」を賛美した。
<「忘れられない人々」7期生・田中伊登さん>
「みんなの日」恒例の「忘れられない人々」は、7期生の田中伊登さんが偶然出会った女の子ついてお話しされた。
私はこの自由学園初等部で60年以上前に学んだので、今こうしてLA生となってこの場にいられることが不思議でとても嬉しい。私の忘れられない人は、今はその方がどうされているかわからないが、当時は小さな女の子だった。30歳のころある学校の下校時間にたまたま校門の前にいたときに、正門を出てきた女の子と目があったので、とっさに「さよなら、気を付けてね」と声をかけた。そうしたらその女の子が「おばちゃんもね」と返事をした。それまで小さい子に同じような言葉をかけたときには、たいがい「さよなら」とか「はい」と返事をもらっていたので、その女の子の返事にドキッとした。私はおざなりな言葉かけをしていたのかもしれないが、その女の子の目には私のことを思いやってくれていることが表れていた。その場面の映像が今も私の心に深く残っている。

<教養講座『賢明な寛容~実例と実行』樋野興夫氏>要約
今年度6回目の教養講座は、順天堂大学名誉教授・新渡戸稲造記念センター長の樋野興夫氏に『賢明な寛容~実例と実行』と題して、お話を伺った。
1. 人生哲学と生き方の指針
人生観と行動指針:人生は開いた扇のようであり、ビジョンは人知や思いを超えて進展する。
人生を開く三大法則は「良い先生、良き友、良き読書」である。人生に期待すると失望に終わるが、「人生から期待されている」と考えれば、各自の役割と使命が見えてくる。行動の集約として「賢明な寛容さ」「自制と熟考」が重要である。「果断なき努力は進歩の要件」「自分の力が人の役に立つと思うときは進んでやれ」といった言葉が行動の指針となる。
逆境の捉え方と心の持ちよう:生き方次第で逆境も順境と捉えることができる。そのためにはユーモアと俯瞰的な大局観を持つことが重要である。勝海舟の「やるだけのことはやって、あとのことは心配すればよい。どうせなるようにしかならない」という言葉が、困難な状況における心の持ちようを示す。
代別の役割:30代:人に言われたことをがむしゃらにやる。40代:自分の好きなことに専念する。50代:人の面倒を見る。60代:自分のことしか考えていなかったら恥と思え。
風貌と心:風貌は一夜にして変わるため、毎朝鏡で自分の顔を確認することが推奨される。穏やかな風貌を心がけ、相手が嫌にならない人間になるための訓練が必要。
2. 歴史上の人物からの教訓
原体験:私は島根県出身。3歳の時、病気で母に背負われ診療所へ行く途中の暗いトンネルの中で、医者になることを決意した。小学校の卒業式で聞いたクラーク博士の「Boys, be ambitious」が原点の一つとなった。
新島襄と勝海舟の逸話:新島襄は密航して渡米し、帰国後、学校設立の夢を勝海舟に相談した際、「200年かかる」という長期的なビジョンを語った。勝は「自分が死んでから実現することを語る人物」を評価し、支持した。
内村鑑三の教え:札幌農学校二期生。プロフェッショナルとしての行動規範「プロのなさざること五箇条」を説いた。
新渡戸稲造の教え:札幌農学校二期生。国際連盟事務次長を務め、コモンセンスを持った柔軟な人格者と評された。著書に「新渡戸稲造 壁を破る言葉」がある。
がん哲学の先駆者:山極勝三郎は忍耐強く丁寧に物事を仕上げ、日本の独自性を世界に示した。吉田富三は顕微鏡を考える道具として用い、「がん細胞で起こることは人間社会でも起こる」と述べ、これが講師の「がん哲学」の元となった。
3. がん哲学外来の理念と実践
がん哲学の定義と創設経緯:南原繁の政治哲学と吉田富三の癌学をドッキングさせたもので、「がん哲学 = 生物学の法則 + 人間学の法則」と定義される。勝海舟の屋敷に住んでいたアメリカ人家族の逸話にある「悲しい時には一緒に泣きましょう。幸せな時は一緒に笑いましょう」という精神が、「がん哲学外来」の温かいおもてなしの元となった。
がんとの共存と死生観:「2人に1人ががんになる時代」であり、がんは怖い病気から「がんと共存する時代」へと変化した。天寿を全うしてがんで死ぬ「天寿がんの時代」である。がんは防げないが、「がんで死なない時代」が来ると予測される。人生の良し悪しは「最後の5年」で決まり、穏やかな晩年が重要。人は最後に死ぬという大切な仕事が残っている。
がんの良性化と新しい考え方:がんは真の目標を見失った細胞集団であり、もう一度役割を与えると、おとなしくなる(良性化する)と考えられる。病気もがんも単なる「個性」である社会を目指す。個性が引き出されると、その人の心に花が咲き、「病気であっても病人ではない」状態になる。
がん哲学外来の活動:2008年から開始。毎月「がん哲学カフェ」や、新渡戸稲造『武士道』、内村鑑三『代表的日本人』の読書会を開催。講演活動はロンドン大学、北京大学など海外でも行われ、書籍は多言語に翻訳されている。
4. 人間関係と他者との向き合い方
医療の根本精神と患者への関わり方:出雲大社の「因幡の白兎」の逸話から、「医療は患者の境遇を問うてはならない」という教訓を学ぶ。医師には、病気を診断・治療する「学問的・科学的責任」と、患者に温かく手を差し伸べる「人間的責任」の2つの使命がある。病気で死を意識した人の救いは、頼りになる人がそばにいてくれること。愛にあふれた雰囲気を作り、正直に接し、患者の個性を引き出すことが重要である。
「寄り添う」ことと「支える」ことの違い:「支える」は重い行為だが、「寄り添う」はそっと手を差し伸べること。困っている人と一緒に困ってくれるだけで、悩みは解決できなくても「解消」される。
「会話」と「対話」の違い:会話は心と言葉でなされるが、対話は心と心でなされる。日本には「対話学」が不足している。
人間関係における「楕円形」の法則:人間関係は同心円(仲良しグループ)ではなく、二つの中心を持つ「楕円形」であるべき。相反するものが緊張感の上に共存するのが自然な状態である。
尺取り虫の生き方:正常細胞は持ち場を離れると死ぬが、がん細胞はどこでも生きられる(転移)。このがん細胞のように、自分のオリジナリティを確立し、どこでも生きていける人物になるべきだと説く。

教養講座終了後、LA賛歌を皆で歌った。
<諸報告>
- 催しのご案内
12/11(木)中等部生とおしゃべりをする会
12/18(木)クリスマス礼拝・クリスマス音楽会
12/20(土)自由学園・学園町自治会共済の音楽会
1/10(土)学園町誕生100周年記念講演:秋田浩之氏(日本経済新聞社)
- 南沢キャンパスカード配布について
- 『明日の友』の販売・婦人之友社出版物のご案内
- 来年度の日程(予定)について
- 児童・生徒の見守りご協力のお願い
園庭に出て、生活体操を行った後、昼食のために初等部食堂に移動。
<昼食・自己紹介>
手作りの昼食をいただく。メニューは、コーンライス、ローストチキントマトソース、
白菜サラダ、ブロッコリーふり塩
<昼休み>
午後の集いまでの時間を利用して、「羽仁両先生記念館」を外から見学。
<午後の集い:中高等部演劇部生徒による『レ・ミゼラブル』>
午後2時から高等部講堂にて、中高等部演劇部生徒による『レ・ミゼラブル』を鑑賞する。
2時間の演目は若さ溢れるエネルギーを感じさせてくれました。終演後、エントランス前で出演者全員でのお見送りをうけ、心が温まりました。
午後4時に終了。















