「フランク・ロイド・ライト展に寄せて ②ライトと新しい教育運動、エレン・ケイとの深い繋がり」/前学園長ブログ - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

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前学園長ブログ

「フランク・ロイド・ライト展に寄せて ②ライトと新しい教育運動、エレン・ケイとの深い繋がり」

2023年12月2日

名古屋での保護者会参加に合わせて、自由学園も資料提供をしている豊田市美術館で開催中のフランク・ロイド・ライト展に。

とってもありがたくうれしいことに、豊田市にお住まいの卒業生井上真由美さんご家族がお付き合いくださり、短時間で美術館ほか、中央図書館やトヨタ館も案内していただきました。

ライト展は、7つの柱から構成。
1)モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観
2)「輝ける眉」 からの眺望
3)進歩主義教育の環境をつくる
4) 交差する世界に建つ帝国ホテル
5)ミクロ/マクロのダイナミックな振幅
6)上昇する建築と環境の向上
7)多様な文化との邂逅

このうちもっとも興味深かったのは「3)進歩主義教育の環境をつくる」でした。これまでの知識がまったく覆される驚きの内容でした。

ライトが自由学園の校舎建築を引き受けたことについては、羽仁もと子が 「ライトさんの叔母君 が、かつてその広い邸宅の一部に、名もホームスクールという、家庭そのもののような学校を持っておいでに なったということが、 特に自由学園の建築に興味をおもちになる動機になった」 と記していることから理解はしていました。

しかしこの展示で、自由学園設計以前に、ライトが新教育運動と女性解放運動に深く関わり、知識と関心を持っていたことをはじめて知りました。

特に『児童の世紀』を著し世界の新教育運動に指針を与えたスウェーデンの教育学者エレン・ケイと、手紙のやり取りをする間柄だったことは驚きでした。

このきっかけを作ったのはこれまでライトの不倫スキャンダルとして扱われていたメイマーです。2人でヨーロッパ旅行をし非難を浴び、帰国後新居タリアセンを設計。しかしこの自邸でメイマーが殺害されるという悲劇的事件に至るストーリーがこれまでの扱われ方でした。

しかし今回の展示では、メイマーはミシガン大学で修士号を取得した進歩的なフェミニストであり、ライトとともにエレン・ケイの思想をアメリカに伝える役割を果たしたことが紹介されていました。

またメイマーの死を嘆くライトがエレン・ケイに宛てた手紙が展示されていました。

このほか、共に仕事をしていた女性が進歩主義教育や女性解放の活動に関わっていたことも明らかにされていました。

遠藤新が羽仁夫妻にライトを引き合わせたのは、単に世界的な建築家ということではなく、このようなライトの交友や活動についてよく知っていたからではないかと思いました。

逆にライトからすれば、日本にも進歩主義教育を理解する教育者がいたのか、という驚きだったかもしれません。

なお自由学園が資料提供した、羽仁もと子逝去に際してライトから送られた追悼メッセージも展示されていました。2人の間の深い信頼関係が感じられる文面です。

今回の展示を通じて、ライトの建築世界全体の中に、自由学園の建築という仕事を位置付けることができ、理解が深まりました。

設計図や都市計画図、家具や建築模型など、400点を超えるという展示は見応えがあり、東京での開催時にはもう一度見に来たいと思いました。

展示されていた美しい窓ガラスは豊田市美術館所蔵。邸宅の注文主クーンリーがシカゴ郊外に幼稚園を設立。1911年、ライトがクーンリー・プレイハウス幼稚園を建てた際のものです。

この豊田市美術館、幾何学的な人工的構造物でありながら自然への畏敬、自然と人間との接続の仕組みが埋め込まれているように感じられる素晴らしい建物でした。帰宅後、葛西臨海水族園やGINZA SIXなども手掛けた谷口吉生氏による設計と知りました。

井上さん、ご夫妻での案内、ありがとうございました。乗せていただいた燃料電池車MIRAIの静かで滑らかな走り、貴重な経験でした。

高橋和也Facebook 2023年11月20日

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