第163回 2020年秋期対面授業の原則的再開に際しての礼拝と講話 「新たなる信頼関係の構築を…。」/最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

第163回 2020年秋期対面授業の原則的再開に際しての礼拝と講話 「新たなる信頼関係の構築を…。」/最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

最高学部長 渡辺憲司のブログ「時に海を見よ その後」

第163回 2020年秋期対面授業の原則的再開に際しての礼拝と講話 「新たなる信頼関係の構築を…。」

2020年9月16日

最初に聖書を読みます。

 『旧約聖書』伝道の書 4章9節から12節
「ふたりはひとりにまさる。彼らはその労苦によって良い報いを得るからである。すなわち彼らが倒れる時には、そのひとりがその友を助け起す。しかしひとりであって、その倒れる時、これを助け起す者のない者はわざわいである。またふたりが一緒に寝れば暖かである。ひとりだけで、どうして暖かになり得ようか。人がもし、そのひとりを攻め撃ったなら、ふたりで、それに当るであろう。三つよりの綱はたやすくは切れない。」(口語訳旧約聖書・1955年版)

原則として対面授業を再開することになりました。
まず最初に感謝を申し上げます。

再開準備にあたって、掃除、感染対策などが、学生・教職員・保護者で協力して行われました。ありがとうございます。殊にボランティアで清掃に参加された保護者の方々に感謝申し上げます。これら一連の共同作業は多くの大学でおそらく類例を見ない準備作業であったのではないかと思います。自由学園スピリットが結集した授業再開準備であったと思います。

一年生の諸君にとっては、学園登校を伴う実質的とも云ってよい入学式です。私は待ちに待った高まりの中で諸君を迎えています。ようやく前を向き対面授業の原則的再開を果たすことが出来ました。ともに歩んで行きましょう。

自由学園最高学部(大学部)は、少人数でやってきました。我々は互いのことをよく知り合っています。それは、原則的対面授業再開にあたっての、この大学の最大の長所であり、コロナ感染症に立ち向かう最大の武器です。見知らぬ同士が大きな困難に立ち向かうときに、疑心暗鬼が生まれる可能性は高いものです。

我々は不特定多数の集団ではありません。特定少数の集団です。信頼の前提は、知り合っていることです。私たちにその前提があることを確認しておきましょう。

危機的状況にあって、真の友情が生まれることを期待します。教師と学生の間に創造的関係を生み出していきましょう。このことに諸君と共に懸命の努力を傾注したいと思います。

私は教育効果において、対面、すなわち教員と学生が、言語を媒介としてその表情を知りうることは、教育の不可欠要素であると考えます。教育は結果ではありません。結果の評価は、もちろん落第及第を前提としていますが、大事なことはその過程です。答えが問題ではありません。〇か×かをつけるのが教育ではありません。答えを出す悩みや努力の表情こそ私たちが共有すべきものです。仲間がいて互いの短所や長所を認め合うことが教育を成り立たせる必須条件です。教育が孤立を生み出すものであってはならないのです。問題を解決した結果ではなく、問題への答えを教師と学生がともに模索することが教育です。

生活即教育は、自由学園の教育理念です。その基本ベースが対面授業であることを再確認しましょう。

又、原則としてと、付帯したのは、コロナ禍において、この病気がまだワクチンもなく未知の側面が多いことによる教育的配慮です。対面授業の重要性を一方で認識すると同時に、一人一人の学生や教師の状況をくみ取りたいと考えています。学生のニーズを考慮し、オンラインのみならず、各担当教師の組み立てに応じて、授業カリキュラムを展開することにいたしました。教科によってはオンラインでの展開もあります。自由学園最高学部の果たすべき役割である、出来うる限りのきめ細かな授業を行います。春期のオンライン授業の経験を十分生かしていきます。諸君が抱える不安とも向き合っていきます。

今後いかなる状況になるかわかりません。コロナ禍で冬を迎えるという事がいかなることなのか。それは全く未知です。しかし、一方で医療が経験値を得て来ていることも事実です。衛生管理の状況も、互いの注意も個人の認識も高まってきていると考えます。しかし、いかに注意したにせよ、感染が完全に回避できるわけではないことは先刻承知の通りです。検温・マスク・食事方法など学校の指示を必ず守ってください。生活面での注意も言うまでもありません。多人数での飲食を絶対避けることなど、互いの注意喚起が、信頼を生みます。

私たちは自分の行動を忘れがちです。自己責任を明確にするためにも是非生活記録を記してください。おそらく、これから数十年後又パンデミックが起こりうる可能性があります。過去のパンデミックにおいて自分がいかに行動したかを示すことは重要です。現在の危機的状況を忘れてはならないのです。諸君が父になり、母になり、さらに年老いた時にも、諸君が2020年秋、学生の頃にこんな風に正しく危機を乗りきったと話してほしいのです。緊張感をもって悔いのない日々を送りたいと思います。

強い信頼関係の構築は、コロナ対策の最重要課題です。信頼があれば、罹患者が出た場合でも、卑怯な差別意識など生まれるはずはありません。どんな状況になったとしても「よくやった」と相互に思えることこそ、我々がこのコロナ禍から学ぶことです。

大学生は危機意識が低いとか、ずぼらだとか言う人がいます。若さの特権は放埓でも野放図でも軽率でもありません。緊張の集中力こそ若さです。ともに助け合ってこの難局を乗り越えていきましょう。

聖書のみ言葉をもう一度引きましょう。

「人がもし、そのひとりを攻め撃ったなら、ふたりで、それに当るであろう。」

教えの如く、コロナ禍が、もしもその一人を攻撃することがあったなら、私たちは、二人で<仲間で>それに立ち向かっていきます。孤立・孤独・隔絶は、コロナ禍に立ち向かう武器とはなりません。一人ではなく仲間とともに作り出す信頼こそ最強のコロナへの防御です。

「主よ、我らの行く道を愛もて守り給え。」

【追記】
新共同訳『旧約聖書』では、コヘレトの言葉4章9節から12節です。
「一人よりも二人が良い。共に労苦すれば、その報いは良い。倒れれば、一人がその友を助け起こす。倒れても起こしてくれる友のない人は不幸だ。さらに、二人で寝れば暖かいが、一人でどうして暖まれようか。一人が攻められれば、二人でこれに対する。三つよりの糸は切れにくい。」

2020年9月15日 渡辺憲司(自由学園最高学部長)

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