8月3日、自由学園を会場に、現在の教育に疑問を感じる高校生を中心に150人ほどが日本中から集まり、学校教育の意味を考えるイベント「U18教育サミット#違和感を超えろ」が開催されました。

「U18教育サミット#違和感を超えろ」の主催は現役高三生の曽田柑さんを中心とする高校生運営委員。このようなイベント運営は誰もが初めてだったと思いますが、ものすごい熱量で成し遂げたことに大きな拍手を送ります!
会場提供のきっかけは、5月に湘南のオルタナティブスクールホクレア学園を訪問した際に、教育サミットの会場探しをしている柑さんお会いしたことにさかのぼります。
進学校に通っていた柑さんは、あるとき、違和感なく競争路線のレールに乗って学び、進路決定している自分自身の高校生活に疑問を感じたとのこと。その疑問から、何よりもまず自分自身の生きる意味を問い、その問いに向き合う学びこそが必要なのではないかと考えたそうです。
SNSでその疑問や違和感を発信したところ多くの高校生から共感の声が上がり、教育を問い直すサミットを開催することになりました。私がお会いしたのは開催日程は決まっているものの、会場が見つからず困っているというときでした。
私は高校生がこのような本質的な問いを持ち行動することに心底驚き、うれしく思いました。
100年以上前に羽仁夫妻は、「Education」の訳語が「教育」であることに違和感を感じ、「Education」の真意はうわべを飾ることではなく、種子が内部から芽を出し育つことを支えることであると述べました。そして型にはまった人材を作る競争と詰め込みの既成の教育に異を唱え、自ら学び、協力してよい社会をつくる人が育つ学校作りに乗り出しました。そのような学校こそが、新しいよりよい社会の母体となりうるというのが自由学園の考えです。
柑さんが抱き、多くの高校生が共感する教育への違和感は、私たち自由学園の思いに通じるものであると感じ、今回会場提供という形で応援させていただくことにしました。
サミットは6時間を超える盛りだくさんの内容でしたが、最後に自由学園の実践紹介の時間もいただきました。高等部の2人の生徒が自治についてのプレゼンを行い、私もこの企画への応援の思いをお話させていただきました。
この企画に関わった皆さん、お疲れ様でした。柑さんをはじめ素敵に輝く眼を持った高校生の皆さん、皆さんの歩みが、それぞれが自分自身になる、心ある歩みとなることをお祈りしています。

またこの「U18教育サミット」でとてもうれしい再会がありました。この会場で私に声をかけてくれた高校生の1人が、かつて自由学園を会場に行われた「福島サマースクール」に参加していたというTくんでした。今回の企画を知って、会場が自由学園だったので福島から来たとのことでした。
「福島サマースクール」は2012年から2019年までの8年間、「全国友の会」が開催したもので、現地の子どもたちとご家族が夏休みのしばらくの間でも放射線被害を避け、伸び伸びとよい体験ができるようにと考え、自由学園がキャンパスや寮の提供、生徒スタッフの参加という形で協力して行ったものです。
震災のあった2011年に2歳だったTくんは、友の会会員のお母様に連れられてこのサマースクールに何度も参加したそうです。「あの経験は自分にとって本当に大きなものだったんです」と繰り返し、朝早く起きてカブトムシを採りに行ったこと、川遊びをしたこと、水族館に行ったことなど、うれしそうに話してくれました。

放射線被曝という目に見えない被害を受け、不安の中におられる皆さんに安心して過ごしていただくにはどうしたらよいか、お迎えする私たちも試行錯誤したことを思い出します。回を重ねつつ次第に、参加する子どもたちにも食事の用意や片付けなどに力を出してもらい、共に作る形になっていきました。12年経って高校生になったTくんが、あの時のことを大切に思っていると知ったことは本当にうれしいことでした。

(サマースクールの写真は12年前、2013年のホームページ掲載のものです。写真の中に、お母さまと共に初めて参加した4歳のTを見つけました。)