学部教員の吉川慎平先生が大同大学から博士(工学)の学位を授与されました/研究・実習 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

学部教員の吉川慎平先生が大同大学から博士(工学)の学位を授与されました/研究・実習 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

研究・実習

学部教員の吉川慎平先生が大同大学から博士(工学)の学位を授与されました

2020年7月24日

去る3月25日,大学院での研究(長期研修)を継続していた最高学部助教の吉川慎平先生が,大同大学で開催された学位記授与式において,博士(工学)の学位を授与されました.審査プロセスは半年間に渡り,2月6日には公開公聴会が開催され,その後の最終選考を経て晴れて合格されました.博士論文の題目は『流域総合管理に資する電気伝導率を指標とした効率的な河川・流域の調査手法に関する研究』です.論文はこの程,国立国会図書館に収蔵されました.また大同大学の学術情報リポジトリでは全文が公開されている他,製本版は自由学園図書館にも収蔵されました.

指導教官の鷲見哲也教授と記念撮影

指導教官の鷲見哲也教授と記念撮影

論文の内容について吉川先生は次のように語ります:研究の背景として「水循環基本法」で謳われている「健全な水循環の維持または回復」,「流域の総合的管理」という理念を実現するためには,「どのような状態が健全な水循環であるか」を客観的な情報を用いて評価することが重要であるという問題意識から,取り分け水位・流量等の情報が不足している中小河川・流域を対象に,低コストで簡便かつ迅速に,流域の水循環を水収支,物質収支という形で「定量化」する調査スキームを開発することとしました.その中心として,水の電気伝導率(EC)という既存の指標の優位性に着目し,これをスケールの異なる中部・関東地方の5つの河川・流域にそれぞれ適用し,実践的に開発・検証している点が特徴です.また調査手法の利便性を高めるため,電気伝導率測定値の相対評価を実現するための全国版データベースの整備を試行し,オープンデータの整理の他,全国各地の河川約1,100地点における独自の調査結果も加えて,環境水における電気伝導率測定値の地域的な傾向の一端を明らかにしました.この手法は研究機関レベルの高度な手法と,簡易な手法のちょうど中間を補完する手法と位置付けられ,「流域水循環計画」の策定をはじめ,水環境の保全に取り組む学校や市民活動での活用を想定したものです.

論文内の調査事例はそれぞれ土木学会の論文集に掲載されており,各種発表賞も受賞しています.取り分け,その成果を希少魚類の生息環境保全を想定した環境把握手法として提案した応用生態工学会の大会では,最優秀ポスター発表賞を受賞するなど,高い評価を受けています.

学位記授与式の様子(鷲見教授提供)

学位記授与式の様子(鷲見教授提供)

公開公聴会の様子(大同大学)

公開公聴会の様子(大同大学)

学位授与を受けて吉川先生は「元々河川や水環境全般に関心があり,男子部高等科1年では校内の立野川の管理を担う「川管理」グループとして活動し,最高学部では那須農場脇を流れる蛇尾川の調査を行いました.ダムや土木などの社会基盤系に関心を広げつつ,卒業研究では学園のキャンパス・マネジメントについて取り上げ,実務としても取り組むことになりました.その後研修の機会をいただき,社会人学生として大同大学の修士課程に入学しました.後半の博士課程は,最高学部の仕事と大学院での研究という「二足の草鞋」状態となり,苦労する場面も多々ありましたが,それ故に最短の3年間で目標を達成することができたと思います.岩手県大槌町での復興支援活動がきっかけとなり,修士課程から一貫してご指導いただいた大同大学の鷲見哲也教授をはじめ,現地調査をはじめ,様々な場面でお力添えいただいた方々,機会を与えていただいた学園に感謝申し上げます.ここを新たなスタートラインに,「自ら教育せんとする気概」を常に持ち,広く社会に働きかけられるよう鍛錬を重ねて参ります」と挨拶されました.

学部教員が学会発表で最優秀賞を受賞
https://www.jiyu.ac.jp/college/blog/kj/63853

大同大学 学術情報リポジトリ
https://daido.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=104&item_no=1&page_id=13&block_id=78

国立国会図書館(NDLオンライン)
https://id.ndl.go.jp/digimeta/11479229

文:遠藤敏喜(学部教員)

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