これまで最高学部生が取り組んできた勇気米の栽培は、今年「那須農場の学びと持続可能な農業・地域づくり」と講義名を新たにスタートしました。去年までと大きく異なったのは、単なる稲作だけでなく栽培実験と実践を行ったこと、那須地域全体の歴史、自然、産業などに目を向けた学びを行ったことです。それぞれの活動の詳細は活動ごとに報告記事が上がっていますので、下記リンクからご覧ください。
2024年度:那須農場の学びと持続可能な農業・地域づくり活動記録

⚫︎ 那須農場水田での活動概要
4月29日、履修学生7人、教員4人で田植えを行いました。例年通り手植えで行い、生育過程の調査のための観測装置(カメラと水温・水位計)を設置しました。野外観察用無人カメラで稲が生育する様子を一定時間毎に撮影することにより、連続的に生育過程を追うことができます。また、水田内の水温・水位観測のための計測機器も設置しました。今回植えたコシヒカリの苗を観察、スケッチすることも行いました。水田の四隅と中央の計5ヶ所でそれぞれ9株ずつを決めて草丈を計測し、継続して観察していくことにしました。
その後5月は連続して二週間、6月以降は一か月ごとに除草を行いました。除草では、最適な除草頻度を明らかにするため畑を区切り、田植え一週間後に除草をしない範囲、田植え二週目に除草をしない範囲、一度も除草をしない範囲を作りました。除草をしなかったことによる次回以降への負担、最終的な収量や稲の状態から判断します。継続した水田5か所のイネの草丈と分げつ数の計測のほか、一株をスケッチし成長を細かく観察することもしました。また、水田の雑草も数種を採取しスケッチと図鑑を使った同定も行いました。
稲刈りは9月29日に行ないました。悪天候により一周間遅らせたため、中心部は倒れ、水に漬かっている状態での稲刈りでした。除草実験をしていた区画のイネの一部は学園に持ち帰り粒数や重量などを調査することとし、残りは手刈りで刈り取ったのちコンバインで脱穀、お世話になっている近隣農家さんの乾燥機などの機械をお借りして乾燥・籾摺り・選別などを行いました。農場内の稲架周辺に蜂の巣があったことなど様々な要因から今回天日干しはできませんでしたが、今年も何とか収穫まで終えることができました。今年の収量はおよそ135㎏です。
⚫︎ 那須農場と那須農場周辺地域についての学び
今年度の那須農場での活動は、稲作と平行して農場内の気象観測露場の整備、地域の水質調査も行いました。水質調査では農場近くを流れる蛇尾川、那珂川、農業用水として引かれた蟇沼用水、扇状地の下流部に多数ある湧水地の各所を巡ることで、那須地方の地形や特徴を掴みました。また、夏休み中の8月末には那須野が原博物館を見学して学芸員の方の解説を受け、更に学びを深めることができました。
その他農場周辺を探索したり、『自由学園一〇〇年史』を読み農場の歴史を学んだり、那須野が原博物館を見学したりと今年度は稲作にとどまらず、那須地域全体にも視野を広げ、那須農場について広い学びを得ることができました。
⚫︎ 南沢での実験・分析の学びの展開
また、今回は南沢キャンパスでも稲作を行いました。プラ船に那須農場の水田から持ってきた土を入れ、同じ間隔で苗を植え、成長の観察をします。こちらでは水管理を、IoT機器を用いて行うことを試みました。スマートフォンのアプリで水位の確認をし、水の注入操作も行えるものです。那須の水田は農家さんに任せているため水管理を学生が行うことは今までありませんでしたが、今回初めて実践することができました。プラ船から排出した水でクレソンや空心菜を育てたり、発生したボウフラを抑制するためにメダカを投入したりと発展的な実践学習の場にもなりました。
今回除草条件を変えて生育させて収量の差を比較するという実験的な学びの結果は、これから分析・考察を深めていく予定です。現段階では除草を減らした場所ほど穂につく実の数は多いものの、除草をした場所とは分げつ数に大きな差があることが分かりました。やはり総量としては除草をするほど収量が上がる、という結果が見られています。
⚫︎ 収穫したお米の頒布会の開催
また、今年も収穫したお米を販売します。通信販売は行わず、11月23日に南沢キャンパスで行われるJIYU1123にて白米、玄米をそれぞれ2合、4合で対面販売することとしました。ちょっとした贈り物にも丁度いいサイズになっておりますので、多くの方に手に取っていただければ幸いです。

⚫︎ 最後に
今年度も、2003年より私たちの活動を支えてくださった那須塩原の農家、八月朔日(ほづみ)さんにお世話になりました。稲作作業の指導、水管理、稲刈りから田植えまでの管理を担っていただき、学園にいながらも稲作を経験することができたのは八月朔日さんのご協力あってのことでした。この場をお借りして感謝申し上げます。また、今年度講義を履修した学生一同、今年の活動のまとめにしっかりと取り組んでいきたいと思います。なお、12月4日(水)〜6日(金)に東京ビッグサイトで開催されるエコプロ2024の自由学園ブースでもIoT水田を中心に展示する予定です。是非ご来場ください。
文・伊藤 碧菜(リーダー・最高学部3年)