4年生が形の科学会シンポジウムで学会発表を行う/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

4年生が形の科学会シンポジウムで学会発表を行う/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

4年生が形の科学会シンポジウムで学会発表を行う

2012年11月19日

数理モデルとインターフェイスゼミ4年生の矢野真知子さんが,11月18日に東京農工大学で開催された第74回形の科学シンポジウムで研究成果を「個体差と気象条件を考慮した搾乳量と乳成分率のモデリング」という題目で口頭発表した.形の科学会は,研究対象で分類される従来の科学の枠組みを越えて,「形」という概念を中心とした学際的な科学の確立を目指し,毎年2回シンポジウムを開催している.今回は約50件の発表が行われ,多くの研究者が参加する中,学部生で発表したのは矢野さんのみであった.

矢野真知子さんの感想
私は,自由学園那須場で得られた気象観測データ,牛群検定データを基に数理モデルを構築し,気象条件と牛の年齢や分娩後日数などの個体条件が乳量・乳成分率に与える影響を検討している.モデルは,柔軟性の高い非線形のモデルを使用することで,個体条件の乳量・乳成分率への影響を詳細に捉えることができるほか,遺伝により異なる「個体差」を考慮するよう構築している.

そもそも,自由学園那須農場の気象観測資料を用いた研究は,ゼミの4年生6人全員で行っているものである.気象観測データは,故・山口泉氏によって57年もの間,毎日観測された大変貴重なものであり,このデータを用いて研究をしようと,6人それぞれがテーマを持ち,統計解析を行っている.私は,観測場所の特性を活かしたいという思い,また初等部在学時から体験してきた牛の世話の経験を通して,乳量や乳成分率の増減の要因に興味を持ち,本研究に取り組んでいる.

今回の学会発表では,「データのなす形」をテーマとし,研究成果とともにモデルの改良によるデータの見え方の変化など,モデル構築の過程についても詳しく述べた.その際にはできるだけ沢山の図を見せること,普段の発表の勉強を活かし,できるだけすっきりとしたスライドを作ることを心掛けた.学校行事もあり,思うように研究や準備が進まず,最終的な報告が完成したのは発表の前日であった.しかし当日自分が発表する番になるとそれまで抱えていた緊張も和らぎ,落ち着いて話しをすることができた.

ゼミでは「可視化・発信」を大切にしており,私自身も結果を出して学会発表をすることを目標に研究に取り組んできたので,今回このように学会発表の機会をいただけたことを大変ありがたく思っている.また学会では,沢山の質問をいただき,研究や酪農について多くの方に興味を持っていただけたことを嬉しく思う.ご指導いただいている先生方やアドバイスをくれる学生,そしてデータを提供し,ご相談に乗っていただいている那須農場の山口曜氏にこの場を借りて感謝申し上げたい.

第74回形の科学会シンポジウム 第74回形の科学会シンポジウム
学会発表の様子

矢野さんの発表は好評であった.発表後の質問が3件あったが,落ち着いて的確に答えることができていた.貴重なご意見をいただき,今後の研究に活きるはずである.矢野さんの感想でも述べられているが,ゼミの数理チーム6人は,那須農場の貴重な気象データを使わせていただき,解析を行っている.57年分のデータは膨大な紙資料であったが,3年生の終わり頃から6人で分担してパソコンに入力し,入力チェックと関係者への確認を経由して,5月下旬から解析を行っている.成果は着々と出ていて,今後もいくつかの学会で発表が許可されている.次回は12月に応用数学合同研究集会で酒井優行くんと高山大樹くんが「栃木県那須塩原市蛇尾川の出水と地下水位変動モデルについて」という題目で口頭発表を行う.

文末であるが,解析にあたっては,St.Andrews大学の島津秀康先生(男子部58回生)に毎週Skypeを通じてご指導をいただいている.この場を借りて感謝の意を申し上げる.

文・写真:遠藤敏喜(学部教師)

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