学部生2名が日本教育工学会で発表/学生生活・学外活動 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

学部生2名が日本教育工学会で発表/学生生活・学外活動 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

学生生活・学外活動

学部生2名が日本教育工学会で発表

2009年9月24日

日本教育工学会で発表9月19日から21日に東京大学で日本教育工学会第25回全国大会が開催された。この大会は年1回開催される大規模な論文発表の場である。今年も発表件数は473件あった。
この大会に、テーマ別グループ研究「数理モデルとインターフェイス」(旧:総合演習「数理情報」)所属の4年生、塚平尚史くんと赤木玲奈さんが、一般研究「高等教育における教育方法」の部で、それぞれ発表した。
学部生が学会で研究成果を発表するということはあまりないことである。至らぬところも多いが、「数理モデルとインターフェイス」では今後も積極的に学会を通して知見を社会に発信していきたい。


塚平尚史
日本教育工学会で発表(塚平)今回、初めての学会発表を行うことが決定し、7月から準備を進めてきた。昨年の4年生の国際学会発表へ向けた準備を同じゼミで見てきたこともあり、私は大きな緊張と不安を感じていた。特に今回参加することとなった教育工学会は、教育工学の分野において非常に格式が高く、規模の大きい学会であるためだ。
私は「触れる」ということに着目して開発された心理ケア「タッピング・タッチ」を、教育現場で活用する可能性について研究してきた。このケアは、ホリスティック心理教育研究所所長などを務める中川一郎氏が開発したもので、男子部教員の更科幸一先生に紹介していただいてから、一緒にその効果の測定を行ってきた。
自由学園や他大学の学生にこのタッピング・タッチを体験してもらい、その前後の心理アセスメントを行った結果、ネガティブな気分状態が有意に改善されることが明らかになったことなどから、現代の情報テクノロジー発達の中で減少しつつある身体的コミュニケーションが、タッピング・タッチという形で生徒の心身の健康増進、コミュニケーションや授業の円滑化に寄与できるのではないかと提案した。教育工学の観点からは異色な報告であることも不安ではあったかが、テクノロジーの発達と身体的なふれあいの増減は密接な関わりがあるということを理解してもらえればと思っていた。
何度もリハーサルをしては調整を重ね、本番に向けて準備してきた。ゼミのメンバーや、ゼミ以外の先生方、同級生にリハーサルを聞いていただき、自分の視点だけでは気がつかないアドバイスをいただくことで、本番までにかなり報告がブラッシュアップされた。
発表当日はもちろん非常に緊張しながらではあったが何度もリハーサルを重ねたこともあり、なるべく伝わりやすい報告を意識しながら発表できたのではないかと感じる。発表終了後には、2人の方から質問をいただき興味関心を持っていただけたという手ごたえも得ることができた。
今回私は自由学園から離れた場所で発表を行い、他大学や企業の研究を聞くことで大いに啓発された。自由学園で学んできたプレゼンテーションや研究の、課題と強みの双方を感じることができた。また、このための準備期間が自分の研究と深く向き合う機会ともなり、まだまだ研究を深める余地があることにも気づかされた。この経験を糧に、より深みのある卒業研究を進めていきたい。
当日も会場に足を運んでくださる方や、アドバイスをくださる方などの、多くのご協力があって今回の学会発表が実現した。それらすべての方々に心から感謝したい。
赤木玲奈
日本教育工学会で発表(赤木)私は、幼児生活団から自由学園に入学し、今年で在籍19年目になるが、一昨年、卒業研究とそれを行う所属ゼミを考えていたとき、一番強く思ったのが「自分の人格を形成してくれたこの自由学園の教育について深く考え、そして何か恩返しになるような卒業研究がしたい」ということであった。
教育について深めたいと思う中で、ベイジアンネットワークに出会った。ベイジアンネットワークは、人間の認知や評価を確率現象として捉え、対象間の関係をベイズの定理を用いて有向グラフで表現する手法であるが、それが教育の分野でも有効であると感じた。結果、最高学部生の「大学生活の満足度」をベイジアンネットワークを用いて調査し、それが「教育理念」と関わりのあることを示した。他大学における因子分析・共分散構造分析を用いた先行研究では、「大学生活の満足度」は「教員とのコミュニケーション」と関係があると報告されており、この結果を含む主張を学会では報告した。
質疑応答の時間は、座長を含めて2人の方から質問をいただいた。そのうちのひとつは、今後研究を進める上で私が課題としていたことであり、本当に驚いた。と同時に、自分の発表が理解してもらえたことに嬉しさも感じた。
学会発表を通して、長年生活してきた自由学園の説明を客観的にすることの難しさや、論点をずらさずに発表を構成することなど、学んだことは多かった。また、他の発表者の発表を聞くことで、どういう研究があり、その背景にはどのような問題があるのかを知ることもできた。それと同時に最高学部の卒業研究が個性的で面白いものであることにも気づいた。
今回は幸いにも私が研究していることを学外で発表する機会が得られたが、そのことで自分が研究を始めたときの気持ちを再確認することができた。今後卒業までの間、自由学園に恩返しができるような研究になるようにしっかり力を注いでいきたい。今回の学会発表を通して、いろいろな形で多くの方々に協力していただいた。本当に感謝している。
日本教育工学会 第25回全国大会 プログラム
昨夏の学部生による国際学会発表

文・写真:遠藤敏喜(学部教師)

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