ゼミナール - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

ゼミナール - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

カリキュラム

ゼミナール

研究・実習カリキュラム

データサイエンス

見えないものを見えるように、見えるものをより見やすく

データサイエンスは今や大学での学びの注目のキーワードとなっていますが、自由学園では世間でまだ統計学と呼ばれていた2007年度からデータサイエンスの講義を開講していました。そして2018年度から、以下に述べるように、他大学とは一線を画すデータサイエンスとしてゼミの研究活動を展開しています。基本路線は、周囲に満ち溢れる事実をつぶさに観察し、分析・解析しつくし,自分なりの知を作り上げることです。レベルの高さが重要ではなく、未知なる発想をすることが大切です。

ゼミ主任遠藤敏喜
教授・博士(理学)
専門分野:離散数学・トポロジー・データサイエンスほか

身につけたい力は三つあります。一つは数学・統計・プログラミングなどの「データサイエンス力」で、一つはデータを収集し、意味のある形に編集し、表現したり、運用したりする「データエンジニアリング力」で、これには美術のアーティスト力やデザイン力も含まれます。最後の一つは、人類が創出してきた文化の蓄積にスポットをあて、データベース化したり運用したりする「価値の創造力」です。ゼミ生には、必要なデータを集め、考察することを繰り返すことで課題解決に肉薄する体験をしてもらいます。その過程には、知識と技術を身に付ける「学ぶ」と、成果を形にしてメンバーで共有する「やってみる」の循環があり、これらの根底には一人一人が「楽しむ」ことがあります。場・道具・メンバーの連携・それぞれの実践を生かしたゼミです。ゼミ担当教員の専門分野も多岐にわたります。また学外のリソースも総動員して、皆さんの研究を達成へと導きます。

 

ゼミの先生をおふたり紹介

奈良忠寿
教授
専門分野:日本考古学

ゼミで研究している分野にデジタルアーカイブがあります。以前は書類やプリント写真をスキャンして保管・公開することが中心でしたが、最近はフォトグラメトリの技術が進み、土器などの立体物も手軽にデジタル化できます。コロナ禍の外出制限をきっかけに、博物館資料をどこでも見学できるデジタル博物館、特に資料の3D化とその利活用は進みました。また、博物館収蔵庫はどこも一杯で社会問題となっており、解決策として資料の3D化とデジタルアーカイブも注目されていますが、課題もあります。ゼミの卒業研究でも縄文土器の3D化と公開に取り組みました。学園にあるすべての土器を3D公開できる日を夢見ています。

 

河原弘太郎
非常勤講師
専門分野:コミュニケーションデザイン

研究内容は、アプリ開発、アーカイブの構築、新素材の開発提案、芸術がもたらす効果の分析など、実に多様です。それらに共通しているのは、単に文献を追うだけではなく、自らが実践(実験)を通してデータを収集し、研究へと発展させていることです。 自身の興味を研究として育てるには、考えを整理し、伝え、実行するための表現力やデザイン力が必要です。美術は、しばしば感覚的なものと捉えられがちですが、むしろ様々な経験によって養われた感性やアイデアをどのように表出・実現させるかという具体的な思考と技術を含みます。自分らしい研究をするためにも、ぜひ表現力やデザイン力も磨いてほしいと思います。

ゼミの学生紹介

K.Cさん
2024年度3年生
記録資料を調べる

「1928年の女子部『食事記録帳』のデータを科学する」というテーマで研究をしています。学部1・2年次に記録資料について学び、アーカイブズに興味を持ちました。資料室にある資料が学内に周知されておらず、貴重な資料を教育的に使用することで問題が解決されるのではないかと考え、これらを利用・分析し現代の情報と比較し、考察を行いたいと考えています。また教育的利用、具体的には中・高等部での授業での利用も同時に検討したいです。

 

N.Sさん
2024年度4年生
焚き火台の試運転

私は二次燃焼を利用した焚き火台の研究をしています。ゼミの先輩が行っていた焚き火台の研究に興味を持ち、引き継いで研究することにしました。 二次燃焼は焚き火台に適用すると通常の炎よりも暖かく、煙が少なくなる反面、薪の消費が早くなるという特性があります。今回は、空気の吸引量に着目し、実験を繰り返し、燃焼時間を伸ばしつつ二次燃焼の発生する条件を探求します。 今後は実際にキャンプ場での使用を見据え、改良したいと考えています。

 

ゼミ出身の卒業生紹介

2023年度卒O.Yさん
IT企業勤務
美術の授業で織った作品

最高学部での卒業研究では、音楽が味覚に与える影響を探求し、「ソニック・シーズニング」をテーマとしました。この研究は、聞いている音楽が食べ物の味にどのように影響を与えるかを検証するものでした。自由学園の教育には「栽培し、調理し、ともに食卓を囲み、片付ける」という食の循環を体験する学びがあります。また、音楽も礼拝や音楽会を通じて身近な存在でした。この研究は、食教育と音楽教育を結びつけるものであり、食と音楽の関連性を科学的に検証しました。さらに研究の中で解析を行いましたが、その解析手法を習得することは大変困難なことでした。しかし新しい知識を得る楽しさを実感し、さらに私の中の大切な財産となりました。 この研究は、最高学部のリベラルアーツ教育によって達成することができ、さらに様々な分野の学問に出会うことができました。 現在はIT業界にて、データの管理や活用に関する業務に携わっています。システムの開発などのプロジェクトに関わる中で、最高学部で培った多角的な視野と柔軟な問題解決力が、日々の業務において非常に役立っていると感じています。

 

2009年度卒S.Mさん
大学助教・博士(理学)
国際学会での発表

高等科3年生の頃に数学の研究に興味を持ち、最高学部では数学の勉強を独自に進めました。データサイエンスゼミでは、指導教員である遠藤敏喜先生の提案で、グラフ理論の研究を行いました。その後、同分野で博士号を取得し、東京理科大学の助教への就任に至ります。 データサイエンスゼミでは、まずグラフ理論に関連する専門書や論文を読み、既存の研究手法などを学びました。次に「バルネット予想」と呼ばれるグラフ理論の問題について考察を行い、いくつかの知見を得ました。また、学部4年生の頃にグラフ理論に関連する研究集会に参加し、自身の研究発表を行ないました。総括すると、データサイエンスゼミを通じて,数学の研究をどのように進めていくのかを会得できたと思います。 データサイエンスゼミでは数学だけでなく、情報(コンピュータ関連)の研究やアプリケーションの開発なども行われています。数学一辺倒ではなく多種多様な卒業研究に関われたことで、研究そのものに対する普遍的な姿勢を学びました。現在は助教として学生の研究に関わる立場ですが、最高学部時代の経験が根底となって今に繋がるのだと思います。

 

2019年度卒N.Iさん
データサイエンティスト
卒業研究を学会発表(右から2人目)

私は「大学ポータルアプリの構築 」として、デジタルの力で学生のQOL向上を目指す研究を行いました。学生生活での実体験に基づいた課題をモチベーションとして、プログラミング未経験の状態からアプリ構築に取り組みました。結果として、当時の学生に利用されるアプリを構築することができ、日本教育工学会の研究会で発表も行いました。 現在、私は通信会社にて、データサイエンティストとしてデータ分析や機械学習モデル構築を通じた業務DXに従事しています。商材レコメンドシステムや、解約予兆モデルなどに取り組んでおり、データの力で業務を改善していくのは難しくも面白い仕事だと感じています。 卒業研究を通して、プログラミング未経験からアプリ構築に挑戦した経験や、卒業研究報告や学会発表の経験から、未知の業務に挑戦する勇気や、堂々とプレゼンするスキルを得ました。また、実体験に基づいた課題を取り上げて解決策まで研究した工程は、仕事で課題を見極めて解決していく取り組みに通じていると感じます。 この経験は、知識や技術的なスキルだけに留まらず、問題を発見し、解決策を実践する力を育ててくれたと感じています。

 

2013年度卒S.Mさん
データサイエンティスト
最近は子育てに没頭中

ゼミでは「那須の蛇尾川の出水予測」をテーマに研究を行いました。この研究は農場での気象観測データを基にしており、日常生活と密接に結びついたものでした。振り返ると、この経験は「生活即教育」の理念を体現していたと感じます。 卒業後は電機メーカーに就職、その後「統計をもっと深く理解したい」という思いから慶応義塾大学大学院に進学をしました。数理統計の研究室に進み、修士課程で再び「那須の蛇尾川の出水予測」をテーマに研究を行いました。 現在、私は新聞社でデータサイエンティストとして勤務し、「データを軸に日経電子版を始めとする事業成長に貢献すること」をミッションとして取り組んでいます。データ解析では、データを適切に扱うことだけでなく、その背景にあるメカニズムを考察することも大切です。これは、卒業研究において紙の資料からデータを書き起こし、日々の記録を丁寧に見つめて分析に没頭した経験から学んだことでした。 ゼミでの研究は、学園での学びの集大成であると同時に、その後の私の生き方・働き方の軸を育んでくれた貴重な経験でもありました。

 

卒業研究のテーマから一部紹介

  • プログラミング言語「Python」を用いた音声特徴量の算出(2023年度)
  • 最高学部生と卒業生をつなぐwebアプリケーション「Relinko」の開発(2023年度)
  • 竹繊維束を用いた繊維強化プラスチックの作製とその応用(2023年度)
  • 歴史資料のデジタル化と活用―自由学園南遺跡出土縄文土器を事例として―(2022年度)
  • 二次燃焼構造による最適な焚き火台の燃焼の探求(2022年度)
  • 音楽のチョコレート味覚体験への多感覚的影響に関する研究(2022年度)
  • リアルタイムのオンライン講義における字幕の利用(2021年度)
  • 食品ロスへの意識を促す食事注文システムの開発(2020年度)
  • 発表学習におけるフィードバック支援アプリの開発と使用効果の検証(2020年度)
  • 伐採樹木の活用促進を視野に入れた木材乾燥法の研究(2020年度)
  • ベビーマッサージは父親の心理にどのような影響を及ぼすか(2019年度)
  • トランジションから捉えたバスケットボールの試合解析(2019年度)