9月30日(水) 今年度初めての「野鳥」クラスが自由学園図書館中教室で開かれている最中、窓の外に見える電線にモズが挨拶に来た。講師の中村一也先生(日本野鳥の会元幹事・東京代表)ともども歓声を上げる。講義が終わり学園内の観察実習で畑に出ると、先ほどのモズらしき姿が木のてっぺんに陣取り、誇らしげに高鳴きしていた。
一同は野鳥を探しながら大芝生、がけ下、もみじ坂を上がり、学園内を一周。ところが、いつもいるはずの鳥たちの姿がない。一体どうしたのだろうか。
その理由が中村先生のびっくり声で判明した。初等部横の道である。
「こんなの見たことがない! 初めてだ!!」
キャンパス内で初めての大事件が起きていたのである。
猛禽類のひとつ、ツミが清風寮西側の松の木に止っていたのだ。滅多にみることのできない鳥である。
赤い目、オレンジ色の胸、背中の青灰色が美しいオスの成鳥だ。ツミはメスの方が大きいが、それでもキジバトくらい。にもかかわらず気が強く、自分より体の大きいタカやカラス類を攻撃することもある。スズメ、カワラヒラ、ホオジロなどの小鳥類が主食。
このツミは一体何を食べていたのだろう。
哀れな犠牲者は、蝉であることが分かった。地面に蝉の体の一部が落ちていたからだ。
超ラッキーな大事件に、一同興奮したまま、LAに戻っていったのである。(文―飯野順子)(写真―本庄豊)