自由学園内の3つの慰霊碑にはアジア太平洋戦争のさなかに戦争によってお亡くなりになった卒業生、生徒17人のお名前が刻まれています。男子部慰霊碑には、12人のお名前と共に、沖縄、中国、フィリピン、ミャンマー、ベトナム、グアムなどの戦没地名が、女子部の慰霊碑には、広島での被爆と学徒動員中という状況が、短く記されています。またこれと共に3つの聖句が記されています。
「地には平和 ルカ伝福音書 二ノ十四」
「ヱホバは我が霊魂を活かし 御名の故をもて我を義しき路にみちびきたまふ 我は永遠にヱホバの宮に住まん」
(羽仁吉一先生の筆により詩篇23篇3節、6節から)
「ヱホバはもろもろの國のあひだを鞫き おほくの民をせめたまはん
斯てかれらはその劍をうちかへて鋤となし その鎗をうちかへて鎌となし 國は國にむかひて劍をあげず 戰鬪のことを再びまなばざるべし イザヤ書二章四節」
これらの慰霊碑は私自身にとって平和や教育を考えるうえでの大切な土台となっています。歴史を学ぶと、過去は不変で明らかな事実としてではなく、多くの複雑さと未知の部分を含んでいることが分かります。そして今をよりよく生き、未来をよりよく作るためには、複雑な歴史に深く真摯に向き合うことが不可欠であることを痛感します。過去からの問いかけに耳を傾け続けたいと思います。
2023年8月15日 高橋和也(自由学園学園長)