今週の１冊『わかりあえないことから』／図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】／ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

2023年9月4日
『わかりあえないことから』平田オリザ　講談社現代新書
この本の副題は「コミュニケーション能力とは何か」です。ただ、そのための教育を勧めたり、ノウハウを伝授する本ではなく、著者が考えるコミュニケーションの難しさや楽しさについて書かれています。著者が留学していた韓国では、年齢が少しでも上の人には必ず敬語を使うので、まず相手の年令を聞く、とか、勤務先の大阪大学で、さまざまな学部から集まってきた履修生たちと、演劇を通してコミュニケーションについて考える、など、楽しさや難しさが生まれる場についての描写も興味深いです。著者が考案した授業材料をもって小中高校で授業をしようとすると、先生たちから「教えることがなさすぎて授業といえないのではないか」という質問が出る。そこで著者は「教えない勇気」「待つ勇気」について説きます。この部分はなかなか読み応えがありました。学校の「当たり前」を疑ってみる、とでも言いましょうか。また、この本が出たのは10年以上前ですが、今話題となっているChatGPTにできること・できないことについて考えるきっかけも含まれていました。あるホスピスで、患者の家族に医師がかけたひと言は、これはまだ機械には難しいのではないか、と思いました。それも含めて、人同士のコミュニケーションの可能性について考えるヒントが満載の一冊です。

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