今週の一冊『自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2026年4月6日
2026年4月6日『自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う』 吉見俊哉著 集英社新書(2025年)
AIに関する本はそれなりに読んできたつもりですが、この本ほどに自分が考えていたもやもやを言語化してくれた内容に出合うのは初めてでした。著者の吉見俊哉氏は社会学者。自分の論文や著作をすべて読み込ませたAI、通称「AI吉見くん」を設定し、そのAI相手に議論をたたかわせる、という内容です。テーマは人口減少や東京一極集中、トランプ問題など、社会学者らしいセレクション。本物の吉見さんが発する問いに、AI吉見くんは瞬時に回答していきます。が、吉見さんはその答えに満足することは殆どなく、鋭い突っ込みを入れていくのです。AIはたびたびその論戦に敗れます。そうした受け答えを読んでいくと、読者は徐々にAI吉見くんのふるまいに、ある傾向を見出していきます。それだけでも読む意味はあると思うのですが、この本の真骨頂は最終章「AIをたたきのめす知性を!」にあります。吉見さんは、産業革命の際に数々の人間の技術や感性が失われたことを振り返り、今のAIの発達と利用によって人間の「何が」失われているか、を論じています。「考えることそのものの疎外」はその一つで、人間の思考がAIの思考に置き換えられていく中で、思考力や想像力のなし崩し的な劣化が進む、と書いています。AIを使うことで、余計なことに時間を使わなくてすむ、その代わりに人間にしかできない思考の部分に時間を使えるとはよく聞く話ですが、そもそも人間にしかできない思考の部分を鍛えるためには、AIに代替させている部分を人が省略することはできないのでは・・・。そんな自分のもやもやに、少しだけ答えをくれた本です。是非皆さんも読んで議論してみてください。
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