今週の一冊『私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2026年7月13日
2026年7月13日『私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない 韓国、女性たちの労働生活史』 京郷新聞ジェンダー企画班著、すんみ・尹怡景訳 大和書房2025年
韓国に暮らす韓国人女性に、京郷新聞ジェンダー企画班が取材し、まとめた一冊です。対象となっている女性たちは、何か特別な役職についているとか、有名人であるという人たちではなく、一般人。ですが、一人ひとりのこれまでの人生には豊かな物語があります。
儒教思想の根強い韓国では、つい最近まで封建制が当たり前のように社会にあり、女性はある年齢になったら結婚して夫の家に嫁ぎ、そこで義父母や義きょうだい、そして自分の夫や子どもの面倒もみる、一日家事に追われる人生を送ってきました。
彼女たちは、家事労働を主にしており、時には夫の事業に参画することもありますが、表に出るのは男性なので、名刺は持っていません。「もし今、名刺を持つとしたら、肩書は何にしますか?」そんな問いに、冒頭に登場するソン・ジョンエさんは、現在経営する食堂の代表であることを載せますが、その横には「製糸工場勤務、韓国料理食堂のオーナーシェフ、婦人服ファッションデザイナー、フンファッション代表」という、これまで就いてきた仕事の肩書も加わります。複数の肩書がつくのは、どの女性も同じです。
登場する多くの女性は家族の中で、娘であることから勉強を続けることを止められ(男兄弟の学費を確保するために)、小学校卒で働き始め、若くして結婚している人が少なくありません。頑強なイエ制度の中で、義父を頂点とした家庭内ヒエラルキーの最下位に置かれながら生きるのです。ですが、皆、苦労の中にありながらも、その時どきにできることを精一杯して、生き続けてきている、という部分は共通しています。そして自身の子どもたちには同じ思いはさせたくないと、女子であっても十分な教育を受けさせていました。
韓国は隣の国ですが、まだまだ知らない歴史がたくさんあることを実感させられます。最近日本でも市井の人たちの物語を紡ぐ社会学が盛んになってきていますが、隣国のこの本もおすすめです。
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