今週の一冊『急に具合が悪くなる』/図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】
図書館 お知らせ・近況
2026年7月27日
『急に具合が悪くなる』 宮野真生子・磯野真穂著、晶文社、2019年
同名の映画「急に具合が悪くなる」(濱口竜介監督、196分、2026年)は、第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主演のビルジニー・エフィラと岡本多緒が女優賞を受賞、日本では6月中旬から全国各地で上映中です。最近、私もこの映画を観てきました。
今回紹介するのは原作の『急に具合が悪くなる』です。哲学者・宮野真生子さんと人類学者の磯野真穂さんによる、2019年4月29日から7月1日までに交わされた20通の往復書簡から構成されています。宮野さんが末期の乳ガンで、医者から「急に具合が悪くなるかもしれない」と言われていることを磯野さんが知ったことから、このやりとりが始まっています。
「急に具合が悪くなるかもしれない」――その先にあるのは死です。書簡が行き交う間に「ほんとうに、急に具合が悪くなる」状況に立たされた二人が、「出会いと別れの急降下」のなかで言葉を紡いでいくことになります。
濱口監督は映画製作に対するインタビューで、この往復書簡集から受けた衝撃を「何とか映画に移し変えようとした」と語っています。「移し変える」という言葉は控えめで、ひょっとしたら簡単に聞こえてしまうかもしれない、でも違う。一つの作品から受け取ったものをもうひとつの作品に「移し変える」という仕事の飛翔に、読者/観客は身体ごと吹っ飛ばされてしまいます。どこに吹っ飛ばされるって?それはぜひ、自分で吹っ飛ばされてみてくださいな。
『急に具合が悪くなる』を最初に私が読んだのは、今から6年前でした。「コロナ禍」で「リスク回避」が一気に「正論」となっていく中で、磯野真穂の発言に関心をもち、それが本書を手に取ったという経緯があります。
映画を観たあと、6年ぶりにこの書簡集を開きました。あらためて、磯野・宮野が互いに賭けていく「信」の切実さに打たれました。同時に、あの映画のいくつものシーンが想起されます。二人の往復書簡が次の読者へとひらかれ、次の出会いへと移しかえられていった軌跡を、虹を見るように見ることができた気がします。
「関係性を作り上げるとは、握手をして立ち止まることでも、受け止めることでもなく、運動のなかでラインを描き続けながら、共に世界を通り抜け、その動きの中で、互いにとって心地よい言葉や身振りを見つけ出し、それを踏み跡として、次の一歩を踏み出していく。そういう知覚の伴った運動なのではないでしょうか」(磯野、188頁) (村)
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