フィールドサイエンスゼミの4年生が土木学会全国大会で口頭発表をしました/研究・実習 - 自由学園 最高学部(大学部)/ 最先端の大学教育

フィールドサイエンスゼミの4年生が土木学会全国大会で口頭発表をしました/研究・実習 - 最先端の大学教育【自由学園 最高学部(大学部)】

研究・実習

フィールドサイエンスゼミの4年生が土木学会全国大会で口頭発表をしました

2021年9月10日

2021年9月9日から10日に開催された土木学会全国大会第76回年次学術講演会で,フィールドサイエンスゼミ所属の鈴木祐太郎さん(4年生)が卒業研究の一環として取り組んでいる研究の一部について,オンライン形式で10分間の口頭発表をしました.発表題目は「複数の水道水源が混在する施設における給水栓の効率的な配水系統判定手法の実践的開発」です.

 

鈴木さんの発表スライド

 

鈴木さんはフィールドサイエンスゼミで過去3年に渡り継続されている「自由学園を取り巻く地下水環境」というテーマを引き継ぎ,研究を進めています.また今年度は卒業研究に打ち込むことを目的に最高学部のギャップイヤー制度を利用して,大同大学工学部に科目等履修生として在籍し,専門科目を履修して単位を取得しました.

今回の発表では,昨年度の卒業研究として取り組まれた自由学園校内の水道供給システムに関する研究を一部引き継ぎ,具体的には電気伝導率という水質の指標(溶存イオンの多寡を示す)を用いて,水道水栓(蛇口)に供給されている水源の別を判定する手法を,実践的に開発・提案しました.この手法は,工場,学校等の大規模事業所において,一般の水道水に加えて井戸水や工業用水,中水(雨水・再生水)など複数の水源を併用している場合を想定し,時間的経過などから複雑化,不明化した配水系統の識別(再確認)を効率的に実施できるようにするもので,予め測定した各水源の水質と,水道水栓から出る水の水質を比較し,どの水源の値に近いかで判定するという試みです(水質に差異があることが前提条件).

校内も東京都の水道水と,深井戸を水源とする専用水道水の大きく2つがあり,今回は屋外の水道水栓100箇所以上を調査し,それぞれ「2種類の水道水源のどちらであるか」を実際に識別し,仮説を検証しました(図-1).手法としては非常にシンプルであるものの,実際に調査を実施する際は様々な留意事項があることが分かり,その結果も含めて発表しました.

 

図-1 水道水栓を調査する鈴木さん

 

発表を終えた鈴木さんは「今年5月末の日本地下水学会に続いて2度目の学会発表だったが,過度に緊張することもなく終えることができた.開発・提案した手法の詳細や,手法適用の背景など,より詳細な点について質問をいただくことができた.今後,他方面の学会でも発表し,異なる分野からの意見をもらって研究を高めていきたい」と話していました.

一方,校内の水道水栓における水源の識別結果は,教育・管理(学校運営)への還元を開始しており,教育面では今年度の初等部4年生の「総合・私と水」の導入として行われた,学内に供給されている東京都の水道水と,専用水道水の「飲み比べ(利き水)」を実施する上での基礎データとして供しました.授業では実際に水道水の電気伝導率を測定し,水源の違いを味覚に加え数値でも確認しました.管理面では水道水栓の識別(再確認)のために有効な情報として供しました.校内の専用水道水は東京都の水道水と同じく水道法に基づく水質基準をクリアしており,使用上区別をする必要はありませんが,水道料金の単価が異なるといった点から識別(使用者が認識)できるようにすることは有効と考え,一部エリアで識別札を試験的に取り付けました(図-2).

 

図-2 「市水(東京都の水道水)」を示す識別札の取り付け例

 

これらの研究は全学の環境に関わる学びを支援している環境文化創造センターとしても,資機材の点で支援しています.今後も最高学部生の生活に根ざした研究の成果の発信と還元を進めていきます.

なお,同学会では学部教員の吉川も土木史部門で「養老鉄道養老線における歴史的土木構造物の残存状況に関する網羅的調査」と題して発表しました.

 

吉川の発表スライド

 

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文・写真:吉川慎平(最高学部教員・環境文化創造センター研究員)

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